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第1節 

2 水質汚濁防止法の制定

(1) 制定の趣旨
 政府においては、昭和33年水質保全法および工場排水規制法を制定して以来、水質基準の設定による工場排水の規制を実施してきたが、水質汚濁問題の近年の傾向からみて、問題水域を個々に指定して排水規制を行なう現行方式は水質汚濁の未然防止に十分対処し得ないことおよび排水規制のしくみを全般的に強化すべきことなどが指摘されるに至り、施策の抜本的強化拡充が必要となってきた。
 このため、現行の水質保全法および工場排水規制法を廃止し、これらの法律に定められた措置を抜本的に改善強化した新法を制定することとし、水質汚濁防止法案を第64回国会に提案したところ、45年12月18日に修正可決されて成立した。同法は、45年12月25日に法律第138号をもって公布された。施行は、公布の日から6か月以内において政令で定める日から施行されることとなっている。
(2) 本法の概要
 水質汚濁防止法は、従来の指定水域制度を廃止し、全水域を対象とする一律の排水基準の設定、都道府県条例による上乗せ排水基準の設定、排水基準違反に対する直罰等をおもな内容として、従来の水質保全法と工場排水規制法とを一体化したものでありその概要は、次のとおりである。
ア この法律は、工場および事業場から公共用水域に排出される水の排出を規制することなどによって公共用水域の水質の汚濁の防止を図り、もって国民の健康を保護するとともに、生活環境を保全することを目的とするものであること。
イ 排水規制は、特定施設を設置する工場または事業場から排出される水を対象として行なうこととし、この特定施設の指定は、製造業関係に限定することなく、広く各業種について行なうことができることとしていること。
ウ 排水規制の基準は、水質汚濁の事前防止の見地からも、全公共用水域を対象として総理府令で定めることとし、さらに、この排水基準によっては水質汚濁の防止が十分でないと認められる水域があるときは、都道府県がその条例でよりきびしい基準を上乗せすることができるよう措置していること。
エ 排水基準を遵守させるため、従来の工場排水規制法に準じて、特定施設の設置等の届出、届出事項の計画変更命令、汚水処理方法の改善命令等につき規定するほか、新たに、排出水の排出の一時停止命令の制度を設けるとともに、排水基準違反行為はただちに処罰し得ることとするよう所要の罰則を設けていること。
 なお、これらの権限は、水質汚濁問題が基本的には地域住民に密接に関連する問題であることにかんがみ、都道府県知事に属せしめ、政令で定める市の長には、政令で定めるところによりこれを委任できることとしていること。
オ 異常な渇水その他の事由により公共用水域の水質の汚濁が著しくなる場合は都道府県知事が工場または事業場に対して、当該水域に排出される水の量の減少等を命令できることとしていること。
カ 公共用水域の水質の汚濁の状況を有効かつ適切に監視するため、都道府県知事に常時監視を義務づけるとともに都道府県知事は、国の関係機関と協力して水質の測定計画を作成するものとし、水質の汚濁の状況を公表しなければならないものとするなど公共用水域の水質の監視測定体制を整備することとしていること。
キ 経済企画庁および都道府県に、それぞれ中央水質審議会、都道府県水質審議会を置くこととしていること。
ク このほか、都道府県知事の工場または事業場に対する立入検査権、本法による規制と地方公共団体の条例による規制との関係等につき所要の規定を設けていること。

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