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第4節 

2 地域暖冷房事業

 都市およびその周辺地域では、ビルや家庭の暖冷房施設から排出されるばい煙等による大気汚染の問題が市民の大きな関心となってきている。地域暖冷房の原理は、従来の個別ビル暖冷房とかわりはないが大気汚染防止上すぐれた効果がある。現在、日本で採用されはじめた方式は、単一の熱供給所から地下埋設のパイプを通じて、高圧蒸気または高温水を媒体として熱を広い地域のビルや家庭の暖冷房用に供給するものである。需要者は、熱交換器をパイプにつなぐことによって、その熱を暖房、冷房あるいは給湯に利用することができる。
 地域暖冷房の公害防止上の効果については、昭和46年1月の通商産業省総合エネルギー調査会熱供給部会の中間報告に次のように述べられている。
 「地域暖冷房方式においては、単一のプラントから暖冷房用の熱が供給され、各ビルごとの重油ボイラーなどが不要となる結果、地域の公害発生源が大幅に減少するほか、スケール・メリットにより、燃料使用量の削減を図ることができる。また、地域の状況に応じた燃料の選択、徹底した燃焼管理、公害防止設備の整備等も単一のプラントであるため実施が容易であり、地域の総合的な大気汚染防止に大きく貢献することができる。」
 わが国の地域暖冷房事業としては、大阪千里中央地区センターおよび新宿副都心地区で実施されているほか、北海道札幌市街地、泉北ニュータウン、成田市等工事中あるいは計画中のものが多くみられる。
 千里ニュータウンは、大阪の都心から北15kmに広がる丘陵地帯に、大阪市がニュータウンの建設を計画したもので、この地区にわが国で初めての試みとして地域暖冷房が導入された。熱源としてはガスが用いられており、大気汚染防止の効果は大きい。
 新宿副都心は、街路、広場、公園等の公共施設を適正に配置し、ビル敷地は16万4,000m
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にのぼる大規模なビジネスセンターの形成を目ざしたものである。この都市造りの一環として、とくに大気汚染の心配のない都市ガスによる地域暖冷房が導入されることになり、46年4月から一部の供給を開始している。これが完成すれば、冷凍規模で3万6,000冷凍トンと世界でも最大級のものとなる。
 札幌市街地については、最近冬の暖房のため、すすやばい煙による大気汚染が甚しくなっている。このため、札幌市、北海道、北海道東北開発公庫等15団体が出資をし、北海道熱供給公社を設立し、札幌市の中心部に暖房用高温水を供給することにしたものである。

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