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第2節 

4 公害防止事業費事業者負担法の制定

(1) 制定の経緯
 国または地方公共団体が実施する公害防止事業の財源の一部を企業の負担に求めることは、わが国における公害防止事業の推進にあたってきわめて重要であり、公害対策基本法においても事業者の事業活動による公害を防止するために国または地方公共団体が公害防止事業を実施する場合、事業者がその費用の全部または一部を負担するものと定めており、そのため必要な事項については別途立法化することとされていた。
 事業者の費用負担制度については、かねてから通商産業省の産業構造審議会産業公害部会や厚生省の公害防止費用研究会で検討されてきていたが、これらの研究を基礎として公害対策本部を中心に検討を進め、成案を得て、先の臨時国会に提出して衆議院で一部修正のうえ、公害関係14法案の1つとして成立するに至ったものである。
(2) 制度の内容
ア 費用負担の性格
 費用負担の性格については、公害対策基本法第3条の事業者の責務に基づき、同法第22条を根拠として事業者に課せられる公法上の負担であり、その性格は、広い意味での原因者負担であると解されている。
イ 公害防止事業の種類
 公害防止事業の種類は次の4種に大別できる。
(ア) 緩衝緑地の設置および管理事業等
(イ) 河川、港湾等の公共用水域において実施されるしゅんせつ事業、導水事業等
(ウ) 公害の原因となる物質によって被害が生じている農用地や農業用施設について実施される客土事業、施設改築事業等
(エ) 特定公共下水道等の特定の事業者の事業活動に主として利用されるものの設置事業
(オ) その他(ア)、(イ)、(ウ)に類する住宅の移転等の事業
 この場合、利用料金については、別途下水道法等の個別事業法にゆだねることとしている。
ウ 費用を負担させる事業者
 費用を負担させる事業者は、公害防止事業を実施する地域で公害の原因となる事業活動を行ない、または行なうことが確実と認められる者で、公害防止事業の施行者が審議会の意見をきいて定めることとしている。
エ 事業者の負担総額
 事業者の負担総額は、施行者が審議会の意見をきいて定めるが、その額は当該公害防止事業に要する費用の額のうち、費用を負担させる全事業者の事業活動が当該公害の原因となると認められる程度に応じた額である。
 ただし、緩衝緑地、しゅんせつ、客土事業等について、おのおの特別の事情により、その事情を勘案して妥当と認められる額を減じた額をもって負担総額とすることができるものとし、その算定が困難な場合のよるべき基準として一定範囲の割合を定めている。

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