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第2節 

2 規制の強化

 大気汚染防止法については、最近における大気汚染の広域化、多様化に対処するため、第64回国会で大気汚染防止法の改正を行なった。この内容は、第1に、ばい煙の排出を規制する地域を一定地域に限らず全国に拡大し、従来の指定地域制を廃止すること、第2に、新たに、カドミウムなどの有害物質も常時排出規制の対象とするほか、工場等における物の破砕に伴い発生するふんじん、原料ヤードなどから飛散するふんじんについても規制措置を講ずること、第3に、ばいじん、有害物質の排出基準は、全国一律に定めるが、都道府県は地域の実情に応じて国の排出基準よりきびしい排出基準(上乗せ基準)を定めることができること、第4に、排出基準違反に対してただちに罰則を適用すること、第5に、燃料使用量の季節的増加により著しい大気の汚染を生ずるおそれがある都市中心部等の地域については、いおう酸化物に係るばい煙発生施設の使用する燃料の使用規制を行なうことができること、第6に、急激な大気汚染が発生した場合、都道府県知事は、その事態がばい煙に起因する場合には、ばい煙排出者に対して必要な措置をとるべきことを命じ、その事態が自動車排出ガスに起因する場合には、都道府県公安委員会に対し、道路交通法上の措置をとるよう要請するものとすることなどの規定を設け、大気汚染防止に関する規制措置の強化拡充を図った。
 水質汚濁防止対策については、水質保全対策を推進するため、第63回国会で水質保全法の改正を行ない、規制対象事業場の範囲の拡大等の措置を講じた。さらに、水質汚濁防止の抜本的強化拡充を図るため、45年12月に水質保全法と工場排水規制法を一本化した水質汚濁防止法を制定した。この内容は、第1に、指定水域制を廃止し、全公共用水域を対象として排水規制を行なうこと、第2に、全公共用水域を対象に原則として一律に設定される排水基準では水質汚濁防止上不十分な場合は、都道府県はこの排水基準よりきびしい排水基準を条例で上乗せすることができるようにすること、第3に、規制対象施設の指定にあたっては製造業関係に限定することなく、広く第一次産業から第三次産業までの全業種を対象としうるようにすること、第4に、排水基準を遵守させるため、新たに排出水の排出の停止命令の規定を設けるとともに、排水基準違反にはただちに罰則を適用すること、第5に、異常な渇水等により公共用水域の水質の汚濁が著しくなる場合は、都道府県知事はその水域に排出される水の量の減少等を命ずることができることなど排水規制の強化拡充を図っている。
 海洋汚染防止対策については、海洋の急速かつ広域的な汚染の進行に対処するため、船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律を廃止し、45年12月に海洋汚染防止法を制定した。この内容は、船舶および海洋施設から海洋に油および廃棄物を排出することを原則として禁止するとともに、排出規制の実効性を担保するため、油の排出については廃油処理施設の整備の推進規定、ビルジ排出防止装置の設置義務、油濁防止管理者の選任等の義務規定を設け、また、廃棄物の排出については、廃棄物排出船の登録、港湾における廃棄物処理施設等の整備等所要の措置を講ずるとともに、これらの排水規制の監視、監督体制に関する規定を整備している。

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