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第2節 

1 公害対策基本法の改正

 政府の公害に取り組む積極的姿勢を明確にし、公害対策をさらに強化するため、政府は、公害対策基本法の改正を行なうこととし、第64回国会に同法の一部改正法案を提出し可決された。改正の要点は次のとおりである。
(1) 目的の改正
 公害対策基本法第1条の目的規定は、従来、「生活環境の保全については、経済の健全な発展との調和が図られるようにするものとする」としていたが、「福祉なくして成長なし」の理念を明らかにし、「国民が健康で文化的な生活を確保するうえにおいて公害の防止がきわめて重要である」旨を明確にするため、この規定を改めた。
(2) 公害の定義の追加
ア 土壌の汚染
 最近各地でカドミウムなど重金属による農作物汚染が国民の健康保護の観点から重大かつ深刻な社会問題となっているが、農作物の汚染は、重金属等で汚染された土壌を媒体として発生している場合が大半であり、重金属等の農作物への移行量を抑制するためには、土壌の汚染を防止することが必要であることから、公害の定義に土壌の汚染を加えた。
イ 「水質の汚濁」の定義の拡大
 「水質の汚濁」の定義に、温排水および有色排水による水産被害等に対処しうるようにするために、「水質以外の水の状態の悪化」を加えるとともに、カドミウム、水銀等の重金属やヘドロなどにより海底が汚染されることによって生ずる悪臭の発生、水産被害、人の健康被害等に対処するために、「水底の底質の悪化」を加えた。
(3) 廃棄物処理対策
 水質の汚濁、土壌の汚染あるいは悪臭等の環境汚染の原因となる廃棄物の処理を適正に行なうため、事業者の責務を明確にし、また、廃棄物を環境衛生上支障のないよう処分するための廃棄物の公共的な処理施設の整備推進を図るため、第3条、第12条の規定を改めた。
(4) 自然環境の保護
 自然環境の保護を図ることが、公害の防止を図るうえできわめて有効なものであることにかんがみ、狭い意味の生活環境の保全のみでなく、広く緑地の保全等自然環境についてその質を高度に保つ必要があることを明らかにした。
(5) 環境基準の「あてはめ」の委任
 環境基準が2以上の類型を定め、地域または水域ごとにそれぞれの類型をあてはめることとしている場合には、地域の実情を最もは握しやすい立場にある都道府県知事にその具体的な「あてはめ」権限を委任しうることとした。
(6) 都道府県公害対策審議会の必置制
 都道府県に、都道府県公害対策審議会を必置の機関として設けることとなったが、これは同じ45年12月に制定された「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」、「公害防止事業費事業者負担法」、「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」において、産業廃棄物に関する処理計画、公害防止事業に係る費用負担計画や農用地土壌汚染対策計画等について調査審議させることとしたこととの関連で必要が生じたためであり、各個別規制法においては、この必置の機関となる公害対策審議会を活用させることとし、都道府県段階における審議会の乱立を回避したものである。

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