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第4節 公害訴訟

 公害に係る司法上の紛争事件は、公害現象の多発多様化とともに増加してきており、最高裁判所民事局の調べによれば、45年6月30日現在、全国の地方裁判所で係争中の損害賠償事件の数は、訴訟212件、調停54件の合せて266件に達している。
 公害に係る司法上の紛争事件のうち、四大公害裁判として社会の耳目をひきつけている阿賀野川有機水銀中毒事件、四日市ぜんそく事件、イタイイタイ病事件および水俣病事件についての訴訟の概要は第2-8-5表のとおりである。
 また、航空機のジェット化と飛行回数の大幅増加に伴ない、空港周辺の騒音が問題化してきたが、44年12月15日、大阪国際空港の周辺住民28人が、国を相手として、損害賠償総額約1,965万円と夜間の航空機離着陸全面禁止を求めた事件は、大阪地方裁判所において46年2月5日、第9回口頭弁論が行なわれた。
 公害訴訟等の増加に伴い、裁判所がその迅速な解決を図ることが要請されているが、最高裁判所においても、このような情勢に対処するため、45年3月に全国民事裁判官会同が開かれ対策が検討されたが、さらに、10月には、公害担当裁判官の化学、医学知識を高めるため、最高裁判所は大学教授を講師として研究会を開いた。
 そのほか、群馬県安中市の東邦亜鉛安中製錬所の鉱山保安法違反事件に対し、群馬地方裁判所は、5月14日、製錬所長ほかに求刑を上回る判決を下したが、公害に関し工場側の責任を認めたものとして社会の注目をひいた。

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