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第3節 

4 地方公共団体等に対して働きかける運動

 地方公共団体は住民の健康と生活環境を公害から守るために種々の権限をもっており、また地方公共団体自身がごみ処理場やし尿処理場などの公害の発生源となる施設をもっていることから、住民の地方公共団体に対する働きかけ、抗議などの運動が強まってきている。
 45年5月11日、東京都は都立北清掃工場のフル操業に伴い、地元住民と公害防止のための協定書に調印した。
 8月11日には、田子の浦のヘドロ公害を巡って、富士市公害対策市民協議会等の18団体の代表が製紙工場大手4社と静岡県知事を港則法違反等で告発し、また、県が私企業の不法行為によるヘドロのしゅんせつのため公金を支出しているのは地方自治法、地方財政法に違反しているとして同県監査委員に対して監査請求を行なった。
 8月25日には、富山県において公害防止条例の強化を要求する黒部市などの有権者2万3,000人が、地方自治法に基づく直接請求により、県議会が開かれた。
 11月6日には富士市公害対策市民協議会などの地元住民21人は、地方自治法に基づき静岡県知事と大手製紙会社を相手とする住民訴訟を起こした。
 また、大分県臼杵市では、セメント工場誘致を巡り、工場誘致を推進する市長のリコール署名運動が行なわれていたが、11月6日、市長は辞表を提出し、企業誘致問題を最大の争点とする市長選挙が行なわれた。
 そのほか、住民の要求を受けて、地方公共団体が公害防止条例の制定、改正強化、企業誘致条例の廃止、企業と公害防止協定の締結を行なうなどの動きが全国的に広がったことが注目される。

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