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第3節 

2 企業の立地に反対する動き

 39年に静岡県の三島、沼津コンビナート誘致を阻止することに成功した地元住民の運動は、公害発生のおそれのある企業の立地に反対することによって公害を事前に防止しようとする最初の住民運動であった。公害問題の全国的拡大は、各地に立地反対の住民運動を広げさせることとなり、産業界に複雑困難な問題を投げかけている。とくに電力業界においては、火力発電所等の立地が困難となり、電灯電力需要の大幅な伸びとあいまって深刻な電力不足の事態を迎えている。ちなみに、地元との調整がつかず、着工が遅れた火力発電所については、45年度に約400万kw程度となっている。
 そのほか、住民の強い反対を受けて地方公共団体も企業の立地に慎重に対処しようという動きが強まり、45年8月に昭和電工のアルミ精錬所建設(広島県福山市)、9月に三井、三菱グループの京葉工業地帯富津地区の石油化学コンビナート進出計画、10月には常磐・郡山地区新産業都市の小名浜臨海工業地帯の石油化学コンビナート用地買収交渉などが不調に終わっている。
 自治省の調べによれば、45年7月15日現在、資本金1億円以上の企業で、地方公共団体が公害を理由として立地を拒否し、または保留している例は、電力4、鉄鋼・金属2、アルミ1、鉱業1、ガラス1の計9件である。

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