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第4節 

3 水産業被害

(1) 水産被害の概況
 水質汚濁による水産被害は、全国的範囲にわたり、多様な形で発生している。大別すると突発的な原因により発生するものと、長年の継続的な水質汚濁により発生しているものとにわけられ、被害の原因となる水質汚濁の発生源は、工場・事業場からの排水が多いがその他の要因も少なくない。
 最近における突発的被害の態様としては、シアンなど毒物による魚類の大量へい死、油の漂着による沿岸漁業の汚染、のりなどの被害事例が多い。継続的被害の態様としては、水質汚濁の進行およびヘドロのたい積による漁場環境の悪化、カドミウムなどによる魚介類の汚染あるいは異臭魚等の発生による商品価値の低下および販売不能、さらに水質汚濁等に起因する間接的な被害としての赤潮の発生による魚介類の大量へい死等がある。なお、最近では、このような水質汚濁問題のほかに、ビニールなど固形物の浮遊または沈積による漁業操業の障害等も大きな問題となっている。
(2) 水産被害の発生源
 水産被害の発生源としては、工場・事業場等からの排水、船舶排油、都市下水、し尿、畜舎汚水、農薬等がある。汚濁源となる工場・事業場等のおもなものは、パルプ工場、繊維工場、化学工場、石油精製工場、食品加工場、金属メッキ工場、でん粉工場、砂利採取場、土木工事場等があげられる。船舶からの排油およびタンカーの衝突事故等による流出油に起因する水産被害は、44年度において北海道沿岸、伊勢湾、瀬戸内海および東支那海等で発生している。
 また、工場・事業場からの温排水も漁場環境に種々の影響を与えている。なお、最近ではビニール、木皮等の漂泊あるいは沈積が漁業操業に大きな障害を及ぼしている。
(3) 水産被害の態様
 海面においては、各種養殖業をはじめとして沿岸漁業のほとんどの業種に被害がみられる。養殖業では、のりの被害が主体でのり養殖地域の大部分に及んでおり、主として油等の付着による商品価値の低下、死滅、生育阻害、のり網の汚染等の被害が発生している。このほか、かき・はまちのへい死またはわかめの枯死、生産減および商品価値の低下等がみられる。
 養殖業以外においても、水質汚濁等に起因する赤潮の発生による魚類の大量へい死、漁獲減のほか、異臭魚等が各所に発生している。とくに最近、カドミウムなどによる魚介類の汚染が2、3の海域で問題となり、漁獲物の価値低下、販売不能等多大の影響を与えている。
 一方、内水面においては、さけ、ます、あゆ、こい、ふな、うなぎなどの主要魚種に被害がみられ、被害の態様としては、シアンなど毒物による魚類の突発的大量へい死、砂利採取土木工事等に伴う水質汚濁による魚類へい死、操業支障等のほか、産卵場の滅失、魚類の生育阻害、生息不能、稚魚のへい死、さく河性魚類のそ上不能等がある。

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