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第2節 

1 国際連合を中心とする環境対策の進展

 国連においては、従来から世界保健機関(WHO)、教育科学文化機構(UNESCO)、食糧農業機構(FAO)、政府間海事協議機関(IMCO)等の専門機関や欧州経済委員会(ECE)等の地域経済委員会において、それぞれの担当分野に関連する環境問題についての各種の調査検討等が進められていた。
 国連の経済社会理事会(ECOSOC)においても1965年頃から環境問題に関する検討が進められ始めていたが、1968年の同理事会第44回会議においてスウェーデンは「技術革新は、否定的な面を含んでおり、とくに無計画、無制限な開発は人間の環境を破壊し、生活の根底を脅かしつつある。この問題をあらゆる角度からとらえ、国連における討議を通じてこの深刻な問題に対する理解を深め、国連機関による調整を図り、国際協調を強化する必要がある」という認識に基づき、環境問題を解決する第一歩として人間環境に関する国際会議の開催を提案した。この提案は、引きつづく第45回の経済社会理事会において本格的に検討された後、1968年12月の第23回国連総会において、1972年における「人間環境に関する国連会議」の開催とその準備に関する決議案が満場一致で採択された。ついで1969年12月の24回国連総会においては、この会議をスウェーデンで開催すること、およびわが国はじめ、アメリカ、イギリス、フランス、ソ連、スウェーデン等の先進国のほか、インド、イラン、ガーナ等の発展途上国を含む計27カ国によって構成される準備委員会を設置することが決議された。
 この準備委員会は、1970年3月にニューヨークにおいて第1回会議を、1971年2月にはジュネーヴにおいて第2回会議を開催し、所要の作業を進めているが、本年9月には第3回会議がニューヨークにおいて開催されることになっている。これまでの準備委員会の活動によって、(ア)国連会議の開催時期および期間を1972年6月5日から2週間とすること、(イ)国連会議の主要な議題を、()人間居住の環境問題、()天然資源の管理の環境的側面、()環境汚染、()環境問題の教育的・社会的・文化的側面、()開発と環境、()国際機構問題の6項目とすることなどの決定をみているほか、72年の会議までに完結することを目途に、今直ちに着手すべき実行計画として、とりあえず、()世界人間環境宣言起草問題、()海洋汚染問題、()環境汚染モニタリングおよび監視問題、()自然保護問題、()土壌問題の5項目を選定し、各項目ごとに政府間ワーキング・グループを設置することについての合意をみている。わが国は、アメリカ、ソ連とともに上記5つのワーキング・グループのすべてに参加し、それらの作業に積極的な協力を行なうこととしている。
 なお、72年の国連会議の目的は、1969年12月の国連総会の決議により、「人間環境を保護し、改善するための政府および国際機関によってとられる措置を奨励し、その指針を与え、また、開発途上国に対しかかる問題の発生を予知させることの特別の重要性に留意して、国際協力によってその被害の除去、防止を図るための具体的手段として寄与すること」と定められている。

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