2 海水油濁防止施設の整備
船舶からの油の排出を確保するためには、船舶に油性ビルジの排出を防止する装置の設置を義務づけるとともに、港湾に廃油処理施設の整備をあわせて行なう必要がある。国際条約においても、各締約国政府に対し、一般港、石油船積港および船舶修理港について、廃油処理施設を設けることを促進するために、すべての適当な措置をとるよう義務づけている。
そこで、海水油濁防止法では、船舶の油による海水の汚濁防止施設として、規制対象船舶のビルジ排出防止装置および廃油処理施設の整備について規定を設けている。
(1) ビルジ排出防止装置
船舶内において生ずる廃油としては、タンク洗浄水、油性バラスト水およびビルジがある。タンク洗浄水および油性バラスト水は、大量に生ずるため礎止海域内では船舶内での処理は行なわず、直接港湾の廃油処理施設に引き渡すことになる。しかしながら、ビルジは少量であるが各船において必ず生じ、船舶の運航に大きな影響を与えるため、船舶内での処理が必要である。このため、この法律においても船舶所有者に対し、ビルジ排出防止装置を規制対象船舶内に設置することを義務づけている。このビルジ排出防止装置としては、省令で油水分離装置と漏油防止装置の2種類がき規定されており、このほか航路の限定された規制対象船舶については、ビルジ貯蔵装置でもよいこととしているが、一般的には油水分離装置を採用している。
油水分離装置の中心となる油水分離器については、43年以来型式承認の制度をとってきた、船舶での使用に適した高性能のものが開発製造され、型式承認を行なったものは、45年3月現在7社39器種に及んでいる。また、ビルジ排出防止装置の設置に必要な経費については、内航船に対し、船舶整備公団が一部の融資を行なうこととし、貨物船160隻、油送船228隻および旅客船5隻合計393隻に対して、1億4,000万円の融資を実施した。
(2) 廃油処理施設の整備
廃油処理施設の整備については、現在、民間の廃油処理専門業者および石油業者により整備される施設と港湾管理者が国の補助をえて整備する施設がある。現在の計画では、今後47年までに海水油濁防止施設を整備することを予定している港湾は、全国で33港52か所である。そのうち港湾管理者が整備するものは18港19か所であり、民間が整備するものは23港33か所である。
ア 民間が行なう廃油処理施設の整備
船舶から生ずる廃油の処理を行なうため、油濁防止法は民間の整備する廃油処理施設については、国がそれに必要な資金の確保等の援助に努める旨の規定が設けられている。これについては、日本開発銀行および中小企業金融金庫よりの融資を行っており、44年度における開発銀行の融資実績は、約5,000万円である。44年度末において民間の廃油処理専門業者が整備した施設のある港湾は、川崎、横浜、清水、広島県常石、因島、愛媛県壬生川、下関および釧路の8港であり、また石油業者が整備した施設のある港湾は、横浜、宇部および喜入の3港である。
イ 港湾管理者が行なう廃油処理施設の整備
必要に応じ港湾管理者が、主として内航タンカーのビルジ、バラスト水を対象とする廃油処理施設を整備する場合は、国がこれに対して1/2の国庫補助を行なうこととしている。この整備は42年度より開始され、当面、不特定多数の内航タンカーによる石油製品の積出港であって法の規制により廃油処理が多くなる港湾を対象として整備することとしている。43年〜47年までの港湾整備5か年計画によれば、総事業費約37億円をもって、18港を対象として整備することになっており、現在までに42年度6億円、43年度7億7,000万円、44年度7億2,000万円の事業費をもって、8港の整備を行なっている。このうち現在整備を完了し、操業を開始している港湾は、横浜および川崎である。
(3) 廃油処理施設からの排水規制
廃油処理施設からの油性汚水については、海水油濁防止法により、その排出が規制されている。
規制の内容は、全国の廃油処理施設について、日間平均10ppm以上の油性汚水を河川、湖沼、海域その他の公共用水域およびこれに接続する公共溝渠、かんがい用水路その他の公共用水路に排出してはならないものとしている。また、特別の場合を除き、排出する油性汚水を希釈してはならないものとしている。