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第3節 

1 船舶の油の排出規制

(1) 規制の概要
 船舶からの油の排出については、船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律(海水油濁防止法)および港則法に基づく規制が行なわれている。
 海水油濁防止法による規制の概要は、次のとおりである。
ア 禁止対象油
 排出を禁止される油は、原油、重油および潤滑油ならびにこれらの油の含有量が1万cm
3
につき1cm
3
以上である油性混合物である。
イ 禁止海域
 油の排出が禁止される海域は、本邦の海岸から50海里以内の海域および本邦および外国の沿岸海域で政令に定めるものである。ただし、総トン数2万トン以上の船舶であって昭和42年11月21日以後に建造契約が結ばれたものについては、一定の例外的な場合を除き、すべての海域への排出が禁止されている。
ウ 規制対象船舶
 この法律の適用を受け、禁止対象油の排出について規制を受ける船舶の範囲は、油送船については150総トン以上、油送船以外の船舶については500総トン以上である。
エ 船内の防止体制
 規制対象船舶には、特殊なものを除き一定の基準に適合するビルジ排出防止装置の設置および一定様式の油記録計簿の備付けなどを義務づけている。
 また、港則法第24条は、「何人も、港内又は港の境界外1万メートル以内の水面においては、みだりに、バラスト、廃油……を捨ててはならない。」として、すべての船舶等に対し、港内および港域外1万m以内における油の排出を禁止している。
(2) 規制の強化
 海水油濁の防止法に基づく油の排出規制については、国際条約に基づき、経過規定が働いている。ビルジ以外の油(タンク洗浄水、バラスト水等)については、42年11月21日から油送船および2万総トン以上の新造の船舶に対し、排出が規制されていたが、ビルジについても、43年11月22日から油送船および2万総トン以上の新造の船舶に対し排出が規制された。油送船以外の船舶を含め、すべての規制対象船舶に対し、すべての規制対象油の排出が規制されるのは、45年11月22日からである。
(3) 条約改正問題
 国連の専門機関であるIMCO(政府間海事協議機関)では、油濁防止を国際的レベルで徹底強化し、実効をあげるという見地から1968年1月以降、1954年の油による海水の汚濁の防止のための国際条約(1962年改正分)−海水油濁防止法は、この条約に基づくものである−の改正を検討してきたが、44年10月のIMCO第6回総会で、その改正案が採択された。
 そのおもな改正点は、ア 第1条の油性混合物の定義を油を含有する混合物とする。イ 第3条で油または油性混合物の排出を全海域で禁止する。ただし、油送船については、陸地から50海里以上離れて油の含有量の排出量が60l/mile以下、かつ、排出油の総量が全貨物輸送能力の1/15,000以下等の場合に、また、輸送船以外の船舶については、油の含有量の排出率が60l/mile以下かつ、油含有量が100ppm未満等の場合には排出が許される。ウ 油清浄器の残留物の排出も禁止される。エ 機関区域からの潤滑油を含むビルジの排出も禁止される。オ 以上の改正に関する油記録等の改正等である。
 この改正案は、IMCO事務局より、すべての締約政府に送付され、締約政府の2/3以上が受諾した日の後12か月ですべての締約政府について効力を生ずる。
 わが国は、油濁防止の観点から、IMCOの会議に出席し、本改正案の作成に積極的役割を演じた。

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