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第1節 

4 航空機騒音

 最近におけるわが国の民間航空の発展は、まことにめざましいものがあり、旅客輸送量については、過去10年間に平均年率30%以上で伸びている。航空需要の増加は、航空機の大型化、高速化を促し、同時に運航回数が著しく増加することとなった。ジェット機は、このような航空需要に応ずべく、昭和34年12月わが国に登場したが、以来その収容力、高速性、安全性、経済性等の見地から、国内線、国際線を問わず急速にジェット化が進められている。
 ジェット化の状況を43年の実績で見ると、東京国際空港では、全運航回数12万6,000回のうち、ジェット機による運航は約8万回で約63%、大阪国際空港では、それぞれ10万7,000回、4万回で37%となっている。
 このようなジェット機を中心とする航空輸送の増加は、反面、両空港周辺に航空機の騒音問題を発生させることとなった。
 航空機の騒音は、飛行場におけるエンジンテストなどの際に発生する地上騒音と、離着陸時における低空飛行中に発生する騒音が主たるものであるが、前者はサイレンサー、防音林、防音壁によってある程度騒音を軽減することは可能であるので、航空機騒音として問題になるのは主として後者であり、そのうち、とくにジェット機の低空飛行騒音が障害となっている。ジェット機の発生する騒音は、高速噴出される燃焼ガスが、空気と摩擦するときに生ずる音と、ジェットエンジン中の空気圧縮タービンの回転音が複合したものであるが、離陸時は噴射ガスと空気との摩擦音が主要な音源となり、着陸時には噴射ガスが減少するので、タービン音が主となることが多い。プロペラ機の場合は、プロペラの回転音が主であり、低音成分が多く、また出力も小さいので、ジェット機の場合に比べて騒音は少ない。
 航空機は前述のとおり、離着陸の際に最も大きな騒音を発生するが、わが国で最も使用ひん度の多い東京および大阪両国際空港について、航空機騒音の現状を見ると、東京国際空港には、A、B、Cの3本の滑走路があり、国際線用ジェット機はAまたはC滑走路を、とくにC滑走路を使用して、北風時においては、着陸は木更津側から離陸は大森側に向かって行なっているが、南風時においては、これと逆の方向に離着陸を行なっている。国内線用ジェット機、ターボプロップ機およびレシプロ機は、離着陸時の風向、風速の状況に応じて3本の滑走路を使い分けている。ただし、AまたはC滑走路から大森側へ離陸する場合は、航行の安全が確保できる範囲内で、できるだけ早く旋回して、海面に出るよう指示している。
 大阪国際空港では、航空機は滑走路の前方に山があるため、周辺都市の上空を旋回して、目的地へのコースに乗る。したがって、騒音コンターは広範囲にわたっており、さらに離陸後、十分高度を取らないうちに旋回するため、騒音強度がやや大きく、継続時間も長い。また、45年2月からは、長さ3,000mのB滑走路の供用が開始されたため、騒音の強度や分布の変化が予想される。

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