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第5章 地域開発等における公害対策

 郊外は、無秩序な都市化、工業化に伴って生ずる。したがって地域開発等による都市化、工業化に当たっては、計画的な都市づくりや工業地帯の建設を進める各種の公害防止対策を事前に確立実施することが基本的に重要である。
 公害防止の事前対策の重要性は、すでに三重県四日市市において経験済みであり、同市の工場誘致の計画策定に際し公害防止に対する都市計画上の配慮が十分でなく、かつ、進出企業側も公害防除施設の整備が不十分であったため、実際に工場が操業してから重大な公害問題が発生したことは周知の事実である。
 したがって、新産業都市、工業整備特別地域等、今後工業化、都市化が進展する地域については、大気汚染、水質汚濁、騒音、振動、悪臭、地盤沈下の各種公害を未然に防止する計画を当初から十分に検討し、その対策を確立して人の健康の保護と生活環境の保全を図る必要がある。
 公害対策基本法第十七条において「政府は、都市の開発、企業の誘導等地域の開発および整備に関する施策の策定および実施に当たっては、公害の防止について配慮しなければならない。」と規定したのもまさにこの趣旨に基づくものである。
 かかる見地から、国土総合開発法に基づき作成中の「新全国総合開発計画」、建設省において作成された「国土建設の長期構想」、通商産業省において作成された「工業開発の構想」などにおいて公害防止の観点からする全国的な工業の適正配置に意が用いられている。さらに、首都圏整備法、中部圏開発整備法等の圏域関係法や新産業都市建設促進法および工業整備特別地域整備促進等の拠点開発関係法においては、公害の防止について適切な考慮が払われなければならない旨規定されている。
 これらの規定に基づき、各地域についての整備計画や開発計画においては、合理的な土地利用計画、工業配置の適正化、都市下水路の整備等の方針が定められている。
 また、大規模な臨海工業地帯の造成については、港湾計画の策定において、公害の発生防止と港湾の効率化について十分な検討を行ない、さらに、実際の埋立事業を認可するに際しては、港湾計画、都市計画との関係を考慮して行なうことにより、公害防止に配慮もしているほか、個々の地域についての都市計画の面において開発事業の進展に伴う無秩序な土地利用を避け、工場と住居を合理的に分離するなど合理的な土地利用を行なうよう努めている。さらに、地域開発等に伴うより具体的な公害防止のための措置としては、通商産業省の行なっている産業公害総合事前調査、厚生省の行なっている開発整備地域等事前調査および建設省が行なっている広域公害対策調査とがある。

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