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第4節 

2 微量重金属による水質汚濁の防止

 無機シアン化合物等の急性劇毒物に関しては、毒物及び劇物取締法に基づきその製造業者等について所要の規制が行なわれているところであるが、水銀、銅等の微量重金属についても、その排出が人の健康がおよび農水産物等に重大な影響を及ぼすことにかんがみ、水質保全法に基づき、工場、事業場から排出される水について所要の水質規制をおこなっている。すなわち
(1) 明治時代から問題とされていた足尾銅山鉱毒事件については、渡良瀬川への銅の排出基準に関し昭和43年3月22日に公表するとともに(第3-3-1表の(1)参照)
(2) 電気メッキ業等から、シアン、クロームなどが排出されるおそれのある水域については、これらが人の健康を害するおそれのないようシアン、クローム等について必要な水質基準を定めている。
(3) さらに、43年9月26日に新潟水銀中毒事件についての「『新潟水銀中毒に関する特別研究』についての技術的見解」および水俣病についての「水俣病に関する見解と今後の措置」として、それぞれ政府見解が発表されたところであるが、今後これら事件と同種の事件の再発を未然に防止するため、経済企画庁においては、その原因物質とされたメチル水銀を排出するおそれのある工場(全国約50工場)について、すでに水質審議会の答申にしたがい、44年2月3日水域に及ぶ指定を行なうとともに、これら指定水域について、大牟田水域の場合と同様にメチル水銀が検出されてはならない旨の水質基準を設定するとともに、工場廃水規正法施行令を改正し、特定施設として水銀電解法か性ソーダ製造業の用に供する施設および塩化ビニールモノマー洗浄施設を追加し、メチル水銀の排出規制を行なうこととなった(第3-3-1表の(2)参照)。
 また、厚生省でも43年8月14日に全国都道府県知事に対し、水銀一般による環境汚染暫定対策要領について通知した。他方、通商産業省においても同年9月25日カーバイト法により塩化ビニール、アセトアルデヒドの生産を行なっている企業に対して、工場内における水銀の取り扱い、排水処理等について万全の措置を講ずるように通達した。
 このほか、カドミウムを排出するおそれのある鉱山および製錬所(全国で55か所)については、鉱山保安法に基づき鉱山保安監視局(部)の鉱務監督官が全鉱山を定期的に巡回検査しており、利水地点におけるカドミウム濃度が世界保健機構の水質基準(0.01ppm以下)を満足するよう必要に応じて中和処理の徹底、沈殿池の設置、たい積物の管理強化等の指示を行なうなど厳重な指導監督を行なっている(第1節の4参照)。
 また、通商産業省および厚生省においてイタイイタイ病防止のための対策について所要の調査研究(河川流域の際のカドミウムの物理的化学的変化の態様に関する研究等)を実施している。

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