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第3節 

2 海水油濁防止施設の整備

 船舶からの油の排出の禁止を確保するためには規制対象船舶にビルジ排出防止装置の設置を義務づけるとともに、港湾の廃油処理施設の整備をあわせて行なう必要がある。国際条約においても、各締約国政府に対し、一般港、石油船積港および船舶修理港について廃油処理施設を設けることを促進するために、すべての適当な措置をとるように義務付けている。
 そこで、この法律では、船舶の油による海水の汚濁防止施設として、規制対象船舶のビルジ排出防止装置および排油処理施設の整備について規定を設けている。
(1) ビルジ排出防止装置
 
 船舶内において生ずる廃油としては、ビルジ、油性バラスト水およびタンク洗浄水がある。油性バラスと水およびタンク洗浄水は、大量に生ずるため、船舶内での処理は行なわず、直接港湾の廃油処理施設に引き渡すことになる。しかし、ビルジは少量であるが、各船で必ず生じ船舶の運航に大きな影響を与えるため、船舶内での処理が必要であり、このため、この法律においても、船舶所有者に対し、ビルジ排出防止装置を規制対象船舶内に設置することを義務づけている。またビルジ排出防止装置としては、省令で油水分離装置と漏油防止装置の2種類が規定されており、このほか航路の限定された規制対象船舶についてはビルジ貯蔵装置でもよいこととしている。なお、油水分離装置の中心となっている油水分離器は、現在はなお、世界的にも開発の途上にある商品であり、IMCO(政府間海事協議機関)の海水油濁防止小委員会においても、各国の技術的情報の交換の必要性が強調されている。わが国では、外国との技術援助契約によるものがもっぱら製造されていたが、数年来国産技術による研究開発も船舶技術研究所をはじめ民間各企業で進められ、ようやく実用に耐える油水分離器が市場に見られるようになってきている。
(2) 民間が行なう廃油処理施設の整備
 船舶から生ずる廃油の処理を行なうため、この法律においては、排油処理施設の整備を民間に期待しており、民間の行なう廃油処理施設の整備については、国がそれに必要な資金の確保等の援助に努める旨の規定が設けられている。これについては、日本開発銀行からの融資を行い、その整備を援助していることとしている。昭和42年度においては、横浜(日本タンカーサービス株式会社)および瀬戸内海因島(瀬戸内海タンククリーニング株式会社)の2つの廃油処理施設が日本開発銀行からの融資を受けて整備を完了した。
 なお、現在民間の廃油処理事業者は、川崎、横浜、清水、広島県常石、因島、愛媛県壬生川の6か所に所在している。
(3) 港湾管理者が行なう廃油処理施設の整備
 民間の手に期待する廃油処理施設は、主として外航タンカーのクリーニング水を処理する施設であり、主として内航タンカーのバラスト水を対象とする処理施設は、港湾管理者に整備させることとし42年度から予算処置を行ない実施中である。
 42年度には、6億円の事業費により、千葉、川崎、横浜、和歌山下津、神戸、水島の6港の整備に着手し、43年度には、42年度に着工中の6港の整備を引き続き継続するほか、新規に清水、大分の2港の着工を検討中である。

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