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第3節 

2 基本法に基づく防止施策の具体化

 公害対策基本法の制定によって総合的な公害対策への道は開かれ、その方向に沿って、各種の具体的施策が実施の緒についた
 第1にあげられるのは、44年2月12日に閣議決定されたいおう酸化物による大気汚染の防止のための環境基準の設定である。環境基準とは、人の健康や生活環境を保護するうえで維持されることが望ましい基準であるが、行政上の達成目標となる点できわめて重要な役割を果たすものである
 今日の公害問題で特徴的な「集積」公害の根本的な解決のためには、環境基準を明らかにしたうえで、これを確保することを目標として、公害防止に関する諸施策を総合的に講ずるということでなければならない
 いおう酸化物による大気汚染に関する環境基準を最初に設定したのは、今日における代表的な公害問題とも言うべきいおいう酸化物による大気汚染に対処するためである。環境基準の設定は、汚染の程度についての客観的な評価の基準が定められたことを意味するものであるが、東京、川崎、大阪、四日市等の一部では、すでに環境基準に示された数値を上回る汚染となっている
 今後、これらに対し、低いいおう化対策の推進、土地利用の適正化等の公害防止対策を総合的に実施することにより、すでに環境基準をこえている地域については、計画的段階的に環境基準の達成維持を図り、環境基準をみたしている地域については、大気汚染の悪化を未然に防止しようとするものである
 第2に、実施法の整備による規制の強化拡充の措置も進展した。まず大気汚染対策については、従来のばい煙規制法を抜本的に改正し、予防的観点から地域指定を行なうとともに、規制基準の強化拡大、自動車排出ガスの許容限度の設定等を折り込んだ大気汚染防止法が、43年6月に制定された。また、騒音対策については、地方公共団体の条例等による規制にゆだねられ、法律に基づく規制が行われていなかつたが、騒音問題の実情にかんがみ、43年6月工場騒音および建設騒音についての規制の態様や基準の統一を図ることにより、全国的に騒音対策を進めるため、騒音規制法が制定された。また、基本法の趣旨に即した目的、水質基準の適用対象事業場の範囲の拡大、国と地方公共団体との協力の緊密化等の内容を盛り込んだ水質保全法の改正案が61回国会に提案された
 第3に、公害に関する紛争処理および被害救済の制度の確立についても、公害問題の特質にかんがみ、公害問題の円滑、迅速な解決に資するため、行政上の制度を創設するための公害紛争処理法案および公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法案が、第61回国会に提案された。
 第4に、地方公共団体においては、地域の特性と実情に応じた公害防止に対する積極的な姿勢がみられるようになつた。すなわち、公害防止条例の整備、公害行政体制の確立および公害防止施設への融資、助成等の措置が拡充されてきた。さらに、地方公共団体が、当該地域への企業との間に、その企業が講ずべき防止措置(低いいおう燃料の使用、高煙突化、汚染濃度のデータの公開、調査への協力等)について個別に協定を締結するいわゆる協定方式による公害防止対策も、新しい動きとして注目される。これは、すでに横浜市等に先例があったが、東京都とあい前後して、兵庫県姫路市、千葉県市原市、大阪府、大分県等において実施されている
 以上のほか、公害防止を総合的に推進するためには適正な土地利用計画の確立を図ることが必要であり、そのため43年6月新都市計画法が制定され、また、建築基準法の改正案が第61回国会に提案された

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