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第3節 

1 公害対策基本法の制定

 経済社会の発展とともに増大する公害問題に対応して国や地方公共団体による諸種の施策が実施されたが、これらは発生した問題を後から追う形でなされたこともあり、必ずしも十分な対策とは成りえなかった。このため、公害発生源の規制のみにとどまらず、予防措置を中心とした計画的、総合的な行政によって公害問題の根本的な解決を図ることが要請されるようになつた。そのためには公害の範囲、国、地方公共団体および事業者の責務の明確化等施策推進の基本原則を明らかにし、公害対策を総合的統一的に実施していくための公害対策基本法の制定に対する要望が高まっていった
 政府部内においては、検討調整が開始され、国会においても、公害問題に関する特別委員会が設置され、公害問題に本格的に取り組む姿勢が示された。特に、厚生大臣の諮問機関である公害審議会が昭和41年10月に行った「公害に関する基本的施策についいて」の答申は、基本法制定の提案をはじめ、公害対策の基本的方向とあるべき姿を示したものであつた。地方公共団体は産業界をはじめ各方面からも、この間それぞれの立場からの提言がなされ、このようにして公害対策基本法の制定を望む声は支配的な世論となり、42年8月の第55回国会において公害対策基本法の制定をみるに至った。
 基本法は、対象とする公害の範囲、公害防止に関する関係者の責務、公害対策の手法や方策についての基本的指針、公害行政運営の総合化のための方策等について定め、公害対策に関する理念と施策の方向を明らかにしたものであって、公害行政の歴史の上で画期的な意義を有するものである。なお、国や地方公共団体においては、公害行政の推進を図るべく行政機構の整備が行なわれた

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