循環経済への移行には、資源確保段階、生産段階、流通段階、使用段階、廃棄・再資源化段階のライフサイクルの各段階を最適化し、ライフサイクル全体での徹底的な資源循環を実施する必要があり、製造業・小売業等の動脈産業における取組と廃棄物処理・リサイクル業などの静脈産業における取組が有機的に連携する動静脈連携が重要です。これを踏まえて国内外の資源循環を加速し、我が国の状況に応じて中長期的にレジリエントな資源循環市場の創出を支援するための施策を進めます。例えば、現下の国際情勢を踏まえ、世界的な鉱物資源等の需給逼迫等に対応し、経済安全保障に貢献する、重要鉱物のサプライチェーンの強靱(じん)化に資する国内におけるレアメタル等の金属資源循環の強化のための施策を進めます。また、質・量両面からの再生材の安定供給を実現するため、再生材供給サプライチェーン強靱化に向けて、課題の洗い出しや解決策の検討を深めることにより、廃棄物処理・リサイクル業と製造業・小売業を繋ぐネットワークの形成やリサイクル拠点の構築を推進します。
製造業・小売業等の動脈側においては、事業者による環境配慮設計の推進、持続可能な調達、リデュース、リユース、バイオマスの活用、再生材利用、自主回収等の取組を強化するための施策を進めます。また、リユースの深掘りとして、製品の適切な長期利用を促進する観点から、シェアリング、サブスクリプション等のサービス化、リペア・メンテナンス、二次流通仲介等の製品の適切な長期利用を促進する「CEコマース」のビジネスを育成するための施策を進めます。
また、廃棄物処理・リサイクル業等の静脈側においては、企業や地域における先進的な事例を踏まえ、動脈産業との連携の取組を全国に広げていくための施策や、静脈産業の資源循環に係る情報を活用し、脱炭素化を促進するための施策など、循環型社会を実現するために必要な静脈産業の脱炭素型資源循環システムを構築するための施策を進めます。動静脈連携により資源循環を促進するに当たっては、製品の安全性の確保、有害物質のリスク管理、不法投棄・不適正処理の防止等の観点にも留意し、各主体による適正な取組を推進します。
そして、循環資源の分別・収集・利用等に関して、消費者や住民との対話等を通じた、またこれらを活かした前向きで主体的な意識変革や環境価値の可視化等を通じた行動変容、具体的取組につなげるための施策を進めます。
環境への負荷や廃棄物の発生量、脱炭素への貢献といった観点から、ライフサイクル全体で徹底的な資源循環を考慮すべきプラスチック・廃油、食品廃棄物等を含むバイオマス、金属、土石・建設材料等の素材や建築物、自動車、小型家電・家電、繊維製品、太陽光発電設備等を含む地球温暖化対策等により普及した製品について、第五次循環型社会形成推進基本計画(2024年8月閣議決定)で今後の方向性等を示しました。「プラスチック再生利用量倍増」、「2030年時点、燃料使用量の10%をSAFに置き換え」、「食品ロス量半減」、「金属リサイクル原料の処理量倍増」、「レアメタルを含むe-scrapのリサイクル処理量を2030年に約50万トン(2020年比5割増)に増加」、「家庭から廃棄される衣類の量を2030年度までに2020年度比25%削減」、「紙おむつの再生利用等の実施・検討を行った自治体の総数を150自治体」等の目標に向けて具体的な施策を進めます。
経済的側面からは、循環産業を始めとする循環経済関連ビジネスを成長のエンジンとし、産業競争力を高めながら、循環経済への移行に向けた取組を持続的なものとし、かつ主流化していくことが不可欠の要素となります。成長戦略フォローアップ工程表(2021年6月閣議決定)や第五次循環型社会形成推進基本計画等も踏まえ、2030年までに循環経済関連ビジネスの市場規模を80兆円以上にするという目標に向け、グリーントランスフォーメーション(GX)への投資を活用した施策も含め、循環経済への移行の推進に関する施策を進めます。
動静脈連携を促進するための資源循環情報の把握や、電子マニフェストなど各種デジタル技術を活用した情報基盤整備に関する施策を進めます。
また、拡大生産者責任の適用、事業者による自主的な行動の促進、経済的インセンティブの活用、情報的措置、公共調達、ビジネスとのパートナーシップ等のポリシーミックスの適用について進めます。