環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和7年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策>第2章 生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する取組>第1節 生物多様性の主流化に向けた取組の強化

第2章 生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する取組

第1節 生物多様性の主流化に向けた取組の強化

1 多様な主体の参画

国内のあらゆる主体の参画と連携を促進し、生物多様性の保全とその持続可能な利用の確保に取り組むため、多様な主体で構成される「2030生物多様性枠組実現日本会議」(J-GBF)を通じた各主体間のパートナーシップによる取組を進めます。

生物多様性基本法(平成20年法律第58号)に基づく生物多様性地域戦略について、地域の実情に即した適切な目標や指標や地域の各主体が連携した具体的な施策等を盛り込みつつ、多くの地方公共団体で策定されるよう、技術的支援等の方策を講じます。

2 ネイチャーポジティブ経済の実現

2024年に関係省庁で策定した「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」に基づき、企業活動における生物多様性との接点・影響の把握と、そのリスク・機会への対応に関する情報開示や目標設定が進むよう自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)と連携した開示支援や、TNFDデータファシリティの立ち上げに向けパイロットテストに参画し日本企業の活用の観点から試行、検証を進めます。また、ネイチャーポジティブ経営推進プラットフォームを含むビジネスマッチングの機会の確保・拡充、G7ネイチャーポジティブ経済アライアンスを活用した国内企業の生物多様性の取組の国際発信等を行うとともに、企業のネイチャーポジティブ経営への移行を推進するための方策を検討します。加えて、生物多様性クレジット等の経済的手法が国際的に進みつつあることも受けて、こうした生物多様性の価値の取引を見据えた評価のあり方についても引き続き検討を進めます。さらに、生物多様性に配慮した製品やサービスの選択に関する行動変容に向け、ネイチャーポジティブな消費行動の促進策の検討と情報発信を図ります。

3 自然とのふれあいの推進

こどもの自然体験活動の推進、「みどりの月間」等における自然とのふれあい関連行事の全国的な実施や各種表彰の実施、情報の提供、自然公園指導員及びパークボランティアの人材の活用、由緒ある沿革と都市の貴重な自然環境を有する国民公園等の庭園としての質や施設の利便性を高めるための整備運営、都市公園・海辺等の身近な場所における環境教育・自然体験活動等に取り組みます。

インバウンドの急速な回復を踏まえ、国立公園満喫プロジェクトの取組を全35公園において更に進め、各種受入環境整備(利用拠点の滞在環境の上質化や多言語解説の充実、ビジターセンター等の再整備や機能充実)、質の高いツアー・プログラムの充実やガイド等の人材育成支援、利用者負担の仕組みづくり等の取組を推進します。あわせて、サステナブルツーリズム、アドベンチャーツーリズム、ロングトレイルの推進を図ります。

また、国立公園における滞在体験の魅力向上に向けて、「先端モデル事業」を実施している十和田八幡平国立公園(十和田湖地域)、中部山岳国立公園(南部地域)、大山隠岐国立公園(大山蒜山地域)、やんばる国立公園において、引き続き地域の関係者等と連携し、民間提案を取り入れつつ、事業推進体制の構築や利用拠点におけるマスタープランの策定等の取組を進めます。あわせて、この事業で得た知見を踏まえ、2031年までに全国の国立公園において、地域の理解と環境保全を前提に民間活用による魅力向上の取組を進めます。このほか、「国立公園ならではの宿泊施設ガイドライン(1.0版)」の本格運用に向けて、試行的取組を進めます。

さらに、ビジターセンターや歩道等の整備、多言語解説やツアー・プログラムの充実、その質の確保・向上に向けた検討、ガイド人材等の育成支援、利用者負担による公園管理の仕組みの調査検討、国立公園オフィシャルパートナー等の企業との連携の強化、国内外へのプロモーション等を行います。

このように、国立公園の優れた自然を守ることに加え、適正な利用を推進することにより、地域を活性化し、更なる保全につなげていく「保護と利用の好循環」を実現するため、関係省庁や地方公共団体、観光関係者を始めとする企業、団体など、幅広い関係者との協働の下、取組を進めていきます。

また、貴重な自然資源である温泉の保護管理、適正利用及び温泉地の活性化を図ります。