再生可能エネルギーの中でも今後の導入拡大が期待される風力発電のうち、とりわけ洋上風力発電については、再生可能エネルギーの主力電源化の切り札として推進していくことが期待され、今後更なる開発の後押しが必要とされています。こうした状況を踏まえ、2022年規制改革実施計画において「環境アセスメント制度について、立地や環境影響等の洋上風力発電の特性を踏まえた最適な在り方を、関係府省、地方公共団体、事業者等の連携の下検討する」とされたことを受け、2022年度に取りまとめた新たな環境影響評価制度の方向性に基づき、2023年5月から「洋上風力発電の環境影響評価制度の最適な在り方に関する検討会」において、最適な制度の在り方について具体的な検討が行われ、2023年8月に報告書が取りまとめられました。その後、当該報告書も踏まえ、2023年9月、環境大臣から中央環境審議会に対し、風力発電に係る環境影響評価の在り方について諮問がなされ、当該諮問に対する一次答申において、洋上風力発電(排他的経済水域で実施されるものも含む。)に係る適正な環境配慮を確保するための新たな制度の在り方が2024年3月に示されました。この結論を踏まえ、「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案」を2024年3月に閣議決定し、第213回国会に提出しました。
また、陸上風力発電については、2021年規制改革実施計画において「立地に応じ地域の環境特性を踏まえた、効果的・効率的なアセスメントに係る制度的対応の在り方について迅速に検討・結論を得る」とされたことを受け、2022年度に「令和4年度再生可能エネルギーの適正な導入に向けた環境影響評価のあり方に関する検討会」において取りまとめた大きな枠組みについて、有識者や関係者へのヒアリングを行うなど、制度の実現に向けた検討を行いました。
環境影響評価法(平成9年法律第81号)では、道路、ダム、鉄道、飛行場、発電所、埋立て・干拓、土地区画整理事業等の開発事業のうち、規模が大きく、環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価の手続の実施を義務付けています。環境影響評価法に基づき、2024年3月末までに計854件の事業について手続が実施されました。このうち、2023年度においては、新たに26件の手続が開始され、また、16件の評価書手続が完了し、環境配慮の確保が図られました(表6-7-1)。
[Excel]
近年、特に審査件数の多い風力発電所については、環境影響の程度は事業規模よりも立地に依拠する特徴があり、陸上の風力発電所に係る立地選定において適正な配慮がなされていないと判断される事業に対しては、事業計画の見直し等の厳しい環境大臣意見を述べました。洋上の風力発電所については、これまで国内における導入実績が少なく、運転開始後の環境影響に係る知見が十分に得られていないことから、最新の知見、専門家の助言等を踏まえ、適切に調査、予測及び評価を実施することなどを求める環境大臣意見を述べました。太陽光発電所については、ゴルフ場跡地等の既に開発済みの土地で行われる事業に対して、水生生物への影響を回避又は低減することや廃棄物等の適正な処理を求めた環境大臣意見を述べました。
火力発電所については、国内外の情勢を踏まえ、温室効果ガスの排出削減に向けた取組の道筋が1.5℃目標と整合する形で描けない場合には、事業の休廃止も含めあらゆる選択肢を勘案して検討するよう求めるなど、厳しい環境大臣意見を述べました。
質の高い環境影響評価を効率的に進めるために、環境省及び経済産業省共同で「洋上風力発電に係る環境評価手法の技術ガイド」を公表しました。また、環境省は、環境影響評価に活用できる地域の環境基礎情報を収録した「環境アセスメントデータベース“EADAS(イーダス)”」において、情報の拡充や更新を行い公開しました。
情報アクセスの利便性を向上させ、国民と事業者の情報交流の拡充及び事業者における環境影響の予測・評価技術の向上を図るため、環境影響評価法に基づき事業者が縦覧・公表する環境影響評価図書について、法定の縦覧・公表期間を過ぎた場合においても図書の閲覧ができるよう、事業者の任意の協力を得て、環境省ホームページにおいて環境影響評価図書を掲載する取組を進めました。