環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和6年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第6章>第2節 グリーンな経済システムの構築

第2節 グリーンな経済システムの構築

1 企業戦略における環境ビジネスの拡大・環境配慮の主流化

(1)環境配慮型製品の普及等
ア グリーン購入

国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)(平成12年法律第100号)に基づく基本方針に即して、国及び独立行政法人等の各機関は、環境物品等の調達の推進を図るための方針の策定・公表を行い、これに基づいて環境物品等の調達を推進しました。

基本方針の見直しを行い、ヒートポンプ式電気給湯器を始めとした7品目においてカーボンフットプリントの算定・開示を配慮事項に設定しました。また、電気便座、ヒートポンプ式電気給湯器、ガス温水機器、石油温水機器において、エネルギー消費効率基準を強化、乗用車、小型貨物車において、燃費基準値を引き上げました。さらに、プロジェクタにおいて、5,000ルーメン以上の製品を対象に追加するとともに、ガス温水機器において、ハイブリッド給湯器を対象に追加しました。

グリーン購入の取組を更に促進するため、最新の基本方針について、国の地方支分部局、地方公共団体、事業者等を対象とした全国説明会及びオンライン説明会を開催しました。

そのほか、地方公共団体等でのグリーン購入を推進するため、実務支援等による普及・啓発活動を行いました。

国際的なグリーン購入の取組を推進するため、グリーン購入に関する世界各国の制度・基準について情報を収集し、環境省ウェブサイトで公開しました。

イ 環境配慮契約

国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(環境配慮契約法)(平成19年法律第56号)に基づく基本方針に従い、国及び独立行政法人等の各機関は、温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約(以下「環境配慮契約」という。)を推進しました。

環境配慮契約の取組を更に促進するため、最新の基本方針について、国の地方支分部局、地方公共団体、事業者等を対象とした全国説明会及びオンライン説明会を開催しました。

地方公共団体等での環境配慮契約の推進のため、実務支援等による普及・啓発活動を行いました。

ウ 環境ラベリング

消費者が環境負荷の少ない製品を選択する際に適切な情報を入手できるように、環境ラベル等環境表示の情報の整理を進めました。我が国で唯一のタイプI環境ラベル(ISO14024準拠)であるエコマーク制度では、ライフサイクルを考慮した指標に基づく商品類型を継続して整備しており、2024年3月31日時点でエコマーク対象商品類型数は74、認定商品数は5万3,556となっています。

事業者の自己宣言による環境主張であるタイプII環境ラベルや民間団体が行う環境ラベル等については、各ラベリング制度の情報を整理・分類して提供する「環境ラベル等データベース」を引き続き運用しました。

なお、製品の環境負荷を定量的に表示する環境ラベルとしてはSuMPO環境ラベルプログラムがあり、複数影響領域を表すタイプIII環境ラベル(ISO14025準拠)のエコリーフと、地球温暖化の単一影響領域を表すカーボンフットプリント(CFP、ISO/TS14067準拠)の2通りの宣言方法があります。

(2)事業活動への環境配慮の組込みの推進
ア 環境マネジメントシステム

ISO14001を参考に環境省が策定した、中堅・中小事業者向け環境マネジメントシステム「エコアクション21」を通じて、環境マネジメントシステムの認知向上と普及・促進を行いました。2024年3月時点でエコアクション21の認証登録件数は7,521件となりました。

イ 環境報告

環境情報の提供の促進等による特定事業者等の環境に配慮した事業活動の促進に関する法律(平成16年法律第77号。以下「環境配慮促進法」という。)では、環境報告書の普及促進と信頼性向上のための制度的枠組みの整備や一定の公的法人に対する環境報告書の作成・公表の義務付け等について規定しています。環境報告書の作成・公表及び利活用の促進を図るため、環境配慮促進法に基づく特定事業者の環境報告書を一覧できるウェブサイトとして「もっと知りたい環境報告書」を運用しました。また、バリューチェーンマネジメントの取組促進のために、2020年8月に公表した「バリューチェーンにおける環境デュー・ディリジェンス入門~OECDガイダンスを参考に~」や2023年5月に公表した「バリューチェーンにおける環境デュー・ディリジェンス入門~環境マネジメントシステム(EMS)を活用した環境デュー・ディリジェンスの実践~」を題材に、環境デュー・ディリジェンスや情報開示の普及促進を図りました。

ウ 公害防止管理者制度

各種公害規制が遵守され、公害の防止に資するよう、特定工場における公害防止組織の整備に関する法律(昭和46年法律第107号)に基づき、特定工場に対し、公害防止管理者等を選任し、公害防止組織を整備すること及びその旨を都道府県知事等に届け出ることを義務付けています。

国家資格である公害防止管理者は、国家試験の合格又は資格認定講習の修了のいずれかにより取得が可能であり、国家試験は1971年度から、資格認定講習は一定の技術資格を有する者又は公害防止に関する実務経験と一定の学歴を有する者を対象として、1972年度から実施されています。

エ その他環境に配慮した事業活動の促進

環境保全に資する製品やサービスを提供する環境ビジネスの振興は、環境と経済の好循環が実現する持続可能な社会を目指す上で、極めて重要な役割を果たすものであると同時に、経済の活性化、国際競争力の強化や雇用の確保を図る上でも大きな役割を果たすものです。

我が国の環境ビジネスの市場・雇用規模については、2022年の市場規模は約118.8兆円、雇用規模は約296.3万人となり、2000年との比較では市場規模は約1.9倍、雇用規模は約1.5倍に成長しました。環境ビジネスの市場規模は、2009年に世界的な金融危機で一時的に落ち込んだものの、それ以降は市場規模、雇用規模共に着実に増加しています。

2 金融を通じたグリーンな経済システムの構築

民間資金を環境分野へ誘引する観点からは、金融機能を活用して、環境負荷低減のための事業への投融資を促進するほか、企業活動に環境配慮を組み込もうとする経済主体を金融面で評価・支援することが重要です。そのため、以下に掲げる取組を行いました。

(1)金融市場を通じた環境配慮の織り込み

我が国におけるESG金融(環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)といった非財務情報を考慮する金融)の主流化のため、金融・投資分野の各業界トップと国が連携し、ESG金融に関する意識と取組を高めていくための議論を行い、行動する場として「ESG金融ハイレベル・パネル」を開催し、GX(グリーン・トランスフォーメーション)に向けた動きを踏まえつつ、生物多様性・自然資本や循環経済との一体的な推進に向けた金融面からの取組について議論を行いました。さらに、ESG金融に関する幅広い関係者を表彰する我が国初の大臣賞である「ESGファイナンス・アワード・ジャパン」を引き続き開催し、積極的にESG金融に取り組む金融機関、諸団体やサステナブル経営に取り組む企業を多数の応募者の中から選定し、2024年2月に開催された表彰式において発表しました。また、気候変動関連情報を開示する枠組みであるTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)フレームワーク、生物多様性・自然資本関連情報を開示する枠組みであるTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)フレームワーク、さらにはISSB(国際サステナビリティ基準審議会)によるサステナビリティ開示基準等にのっとり、気候関連リスクや自然関連リスクとその備えについて金融機関や投資家から情報開示が求められており、我が国ではこれらのフレームワークに基づく情報開示を推進しているところです。具体的には、環境省では、2023年度に地域金融機関3社に対してTCFD開示を踏まえ、投融資先に対する脱炭素に向けた実効的なエンゲージメントを支援するパイロットプログラムを、金融機関4社に対して、ポートフォリオのカーボン分析パイロットプログラムを実施しました。加えて、気候変動が地域社会にとって「機会」となるよう、多様な地域金融機関による脱炭素化事業支援事例を調査し、事例集として公表しました。事業者向けには、情報開示の実施・高度化を促進することを目的に、気候関連財務情報開示に加え、関連する自然関連財務情報開示を拡充した勉強会を全10回開催しました。本勉強会内容や最新動向について調査した結果は「サステナビリティ(気候・自然関連)情報開示を活用した経営戦略立案のススメ(2024年3月)」に反映し、我が国の事業者へ周知しました。経済産業省においても、2019年に世界の産業界や金融界のトップが一堂に会する、世界初の「TCFDサミット」を開催し、2023年10月には国際GX会合(GGX)と統合し「GGX×TCFDサミット」を開催しました。また、経済産業省が2018年12月に策定した「気候関連財務情報開示に関するガイダンス(TCFDガイダンス)」について、民間主導で設立されたTCFDコンソーシアムがその改訂作業を引き継ぎ、2020年7月「TCFDガイダンス2.0」、2022年10月には改訂版として「TCFDガイダンス3.0」として公表しました。こうした取組等を通じて、2023年9月時点で、我が国のTCFD賛同機関数は約1,454となり、世界最多となっています。

(2)環境金融の普及に向けた基礎的な取組

金融機関が自主的に策定した「持続可能な社会の形成に向けた金融行動原則(21世紀金融行動原則)」(約300機関が署名)について、引き続き支援を行いました。経済産業省は2021年5月に金融庁、経済産業省、環境省が共同で「クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針」を策定し、鉄鋼、化学、電力、ガス、石油、紙・パルプ、セメント、自動車分野における技術ロードマップを取りまとめ、公表しました。また、国内におけるトランジション・ファイナンスの促進に資するため、トランジション・ファイナンスの調達に要する費用に対する補助や情報発信も行っています。2023年6月には、資金供給後のトランジション戦略の着実な実行と企業価値向上への貢献を担保するために、金融機関向けのフォローアップガイダンスを策定しました。また、トランジション・ファイナンスを通じて金融機関の投融資先の排出量(ファイナンスド・エミッション)が一時的に増加することを懸念し、投融資を控える行動が生じ得るという課題について、2023年10月に課題解決に向けた考え方を整理し公表しました。

さらに、今後10年間で150兆円超のGX投資を実現する呼び水として、2024年2月には世界初の国によるトランジション・ボンドとしてクライメート・トランジション利付国債を発行しました。

(3)環境関連事業への投融資の促進

民間資金が十分に供給されていない再生可能エネルギー事業等の脱炭素化プロジェクトに対する「地域脱炭素投資促進ファンド」からの出資による支援、中小企業等がリースで脱炭素機器を導入する場合に総リース料の一定割合を補助する事業、地域脱炭素に資するESG融資に対する利子補給事業など、再生可能エネルギー事業創出や省エネ設備導入に向けた支援を引き続き実施したほか、地域資源を活用した金融機関の取組に対する支援の結果を踏まえて「ESG地域金融実践ガイド3.0」を公表しました。

国内におけるグリーンボンド等による調達促進に資するため、グリーンボンド等の調達に要する費用に対する補助や、グリーンボンド等による資金調達の概要やメリット等をテーマとした「グリーンファイナンスセミナー」を実施しました。また、グリーンファイナンスポータルにて、国内におけるグリーンファイナンスの実施状況等、ESG金融に関する情報の一元的な発信を行いました。加えて、2023年8月には、我が国のサステナブルファイナンス市場をさらに健全かつ適切に拡大していくことを目的とした「グリーンファイナンスに関する検討会」の下に「グリーンリストに関するワーキンググループ」を設置し、グリーンな資金使途等を例示したガイドラインの付属書1別表について、内容の拡充に係る検討を進めています。

日本政策金融公庫においては、大気汚染対策や水質汚濁対策、廃棄物の処理・排出抑制・有効利用、温室効果ガス排出削減、省エネ等の環境対策に係る融資施策を引き続き実施しました。

(4)政府関係機関等の助成

政府関係機関等による環境保全事業の助成については、表6-2-1のとおりでした。

表6-2-1 政府関係機関等による環境保全事業の助成

3 グリーンな経済システムの基盤となる税制

(1)税制上の措置等

2023年度税制改正において、[1]地球温暖化対策のための税の着実な実施、[2]車体課税のグリーン化、[3]株式会社脱炭素化支援機構の法人事業税の資本割に係る課税標準特例の創設(法人事業税)、[4]低公害自動車に燃料を充てんするための設備に係る課税標準の特例措置の延長(固定資産税)、[5]試験研究を行った場合の法人税額等の特別控除の延長(所得税、法人税、法人住民税)、[6]福島国際研究教育機構に係る税制上の所要の措置(所得税、法人税、消費税、印紙税、登録免許税、相続税、個人住民税、法人住民税、事業税、地方消費税、不動産取得税、固定資産税、都市計画税、事業所税)を講じました。

(2)税制のグリーン化

環境関連税制等のグリーン化については、2050年カーボンニュートラルのための重要な施策です。

我が国では、税制による地球温暖化対策を強化するとともに、エネルギー起源CO2排出抑制のための諸施策を実施していく観点から、2012年10月に「地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例」が導入されました。具体的には、我が国の温室効果ガス排出量の8割以上を占めるエネルギー起源CO2の排出削減を図るため、全化石燃料に対してCO2排出量に応じた税率(289円/トンCO2)を石油石炭税に上乗せするものです。急激な負担増を避けるため、税率は3年半かけて段階的に引き上げることとされ、2016年4月に最終段階への引上げが完了しました。この課税による税収は、エネルギー起源CO2の排出削減を図るため、省エネルギー対策、再生可能エネルギー普及、化石燃料のクリーン化・効率化などに充当されています。

車体課税については、自動車重量税におけるエコカー減税や、自動車税及び軽自動車税におけるグリーン化特例(軽課)及び環境性能割といった環境性能に優れた車に対する軽減措置が設けられています。