環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和5年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第6章>第7節 環境影響評価

第7節 環境影響評価

1 環境影響評価の総合的な取組の展開

2021年6月に閣議決定した「規制改革実施計画」において、効果的・効率的なアセスメント等の風力発電に係る適正な制度的対応の在り方について、2022年度に結論を得ることとされ、環境省及び経済産業省は、2021年度から具体的な検討を開始し、現行制度の課題を整理した上で、新制度の大きな枠組みについて取りまとめました。また、洋上風力発電については、2022年度に関係省庁とともに検討を行い、新たな環境影響評価制度の方向性を取りまとめました。

さらに、情報アクセスの利便性を向上させて、国民と事業者の情報交流の拡充及び事業者における環境影響の予測・評価技術の向上を図るため、環境影響評価法(平成9年法律第81号)に基づき事業者が縦覧・公表する環境影響評価図書について、法定の縦覧・公表期間を過ぎた場合においても図書の閲覧ができるよう、事業者の任意の協力を得て、環境省ホームページにおいて環境影響評価図書を掲載する取組を進めました。

2 質が高く効率的な環境影響評価制度の実施

(1)環境影響評価法の対象事業に係る環境影響審査の実施

環境影響評価法は、道路、ダム、鉄道、飛行場、発電所、埋立て・干拓、土地区画整理事業等の開発事業のうち、規模が大きく、環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価の手続の実施を義務付けています。環境影響評価法に基づき、2023年3月末までに計849件の事業について手続が実施されました。このうち、2022年度においては、新たに63件の手続が開始され、また、6件の評価書手続が完了し、環境配慮の確保が図られました(表6-7-1)。

表6-7-1 環境影響評価法に基づき実施された環境影響評価の施行状況

造成地やゴルフ場跡地等の既に開発済み土地で行われる事業に対して、「太陽電池発電所に係る環境影響評価の合理化に関するガイドライン」(2021年6月環境省・経済産業省)の考え方を参考に、メリハリある環境影響評価項目選定が可能である旨の環境大臣意見を述べました。一方で、環境影響への懸念が指摘されている太陽光発電事業については、土地の安定性及び水環境への影響を極力回避又は低減すること等を求めた環境大臣意見を述べました。

近年、特に審査件数の多い陸上の風力発電所については、奥地の山間地に計画される傾向が強まってきています。風力発電による環境影響の度合いは事業規模よりも立地に依拠する特徴があり、立地選定において適正な配慮がなされていないと判断される事業に対しては、事業計画の見直し等の厳しい環境大臣意見を述べました。洋上風力発電については、「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(平成30年法律第89号)」に基づく事業者選定に先行して、一つの海域で複数の事業者がアセス手続を実施する状況が見られ、これまで国内における導入実績が少なく、運転開始後の環境影響に係る知見が十分に得られていないことから、最新の知見、専門家の助言等を踏まえ、適切に調査、予測及び評価を実施することなどを求める環境大臣意見を述べました。

また、川辺川の流水型ダムは、環境影響評価法の対象ではありませんが、熊本県知事からの要望なども踏まえた特別な取組として、国土交通省と環境省が連携し、法に基づくものと同等の環境影響評価を実施することとしており、環境影響評価法の計画段階環境配慮書に相当する環境配慮レポートについて、水環境及び生態系への影響等の観点から、環境大臣意見を述べました。

(2)環境影響評価に係る情報基盤の整備

質の高い環境影響評価を効率的に進めるために、環境影響評価に活用できる地域の環境基礎情報を収録した「環境アセスメントデータベース“EADAS(イーダス)”」において、情報の拡充や更新を行い公開しました。