環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和5年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第6章>第4節 国際的取組に係る施策

第4節 国際的取組に係る施策

1 地球環境保全等に関する国際協力の推進

(1)質の高い環境インフラの普及
ア 環境インフラの海外展開

「インフラシステム海外展開戦略2025」の重点戦略の柱の一つである「脱炭素社会に向けたトランジションの加速」の実現に向けて、相手国のニーズも踏まえ、実質的な排出削減につながる「脱炭素移行政策誘導型インフラ輸出支援」を推進しています。2021年6月には、二国間クレジット制度(JCM)を通じた環境インフラの海外展開を一層強力に促進するため、「脱炭素インフライニシアティブ」を策定しました(資金の多様化による加速化を通じて、官民連携で事業規模最大1兆円程度)。2021年10月に閣議決定した「地球温暖化対策計画」においては、JCMにより、2030年度までに官民連携でGHG排出削減量累計1億トン程度という目標が示されました。また、これまで我が国がパリ協定第6条の交渉を主導してきたことを踏まえ、2021年10月末から開催されたCOP26での合意を受けて、環境省は「COP26後の6条実施方針」を発表し、[1]JCMパートナー国の拡大と、国際機関と連携した案件形成・実施の強化、[2]民間資金を中心としたJCMの拡大、[3]市場メカニズムの世界的拡大への貢献を通じて、世界の脱炭素化に貢献していくこととしました。さらに、環境インフラの海外展開を積極的に取り組む民間企業等の活動を後押しする枠組みとして、2020年9月に環境インフラ海外展開プラットフォーム(JPRSI)を立ち上げました。本プラットフォームには現在480の団体(設立当初は277団体)が会員として参加しています。JPRSIでは、セミナー・メールマガジン等を通じた現地情報へのアクセス支援、日本企業が有する環境技術等の会員情報の海外発信、タスクフォース・相談窓口の運営等を通じた個別案件形成・受注獲得支援を行いました。

また、2021年度から、再エネ水素の国際的なサプライチェーン構築を促進するため、再エネが豊富な第三国と協力し、再エネ由来水素の製造、島嶼(しょ)国等への輸送・利活用の実証事業を開始しました。

アジアを始めとした途上国等における脱炭素移行を後押しするために、国立環境研究所等が開発した、GHG排出量の予測や対策、影響を評価するための統合評価モデル「アジア太平洋統合評価モデル(AIM)」を活用して、ベトナムやインドネシア、タイにおける長期戦略策定の支援を行い、これらの国々のカーボンニュートラル目標の設定に貢献しました。

イ 技術協力

独立行政法人国際協力機構(JICA)を通じた研修員の受入れ(オンライン)、専門家の派遣、技術協力プロジェクトなど、我が国の技術・知識・経験を活かし、開発途上国の人材育成や、課題解決能力の向上を図りました。

例えば、課題別研修「パリ協定下の『国が決定する貢献』前進に向けた能力強化」等、地球環境保全に資するオンライン講義等の協力を行いました。

(2)地域/国際機関との連携・協力

地球環境問題に対処するため、[1]国際機関の活動への支援、[2]条約・議定書の国際交渉への積極的参加、[3]諸外国との協力、[4]開発途上地域への支援を積極的に行っています。

ア 多数国間の枠組みによる連携

(ア)国連や国際機関を通じた取組

○ SDGs等における取組

2015年9月の国連サミットにおいて「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、2030年を達成期限とする持続可能な開発目標(SDGs)が定められました。SDGsは、エネルギー、持続可能な消費と生産、気候変動、生物多様性等の多くの環境関連の目標を含む、17の目標と169のターゲットで構成され、毎年開催される「国連持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム(HLPF)」において、SDGsの達成状況についてフォローアップとレビューが行われます。

2022年7月には3年ぶりに対面でHLPFが開催されました。また、環境省は、「ウェル・ビーイング(福利)のために行動するパートナーシップ:『SATOYAMAイニシアティブ』とより良い社会づくりのために」を国際機関等と共催でオンライン開催しました。大岡敏孝環境副大臣(当時)は、これまで地域のウェル・ビーイングの向上にも貢献してきたSATOYAMAイニシアティブについて、生物多様性に関する新たな世界目標採択後の展開の方向性について発信しました。

また、同月にはパリ協定の目標達成とSDGsの様々な目標の同時達成につながる相乗効果のある行動を加速化すべく、国連経済社会局と国連気候変動枠組条約事務局が共催する「第3回パリ協定とSDGsのシナジー強化に関する国際会議」を、環境省がホストし、国連大学にて開催し、議論しました。

○ UNEPにおける活動

我が国は、UNEPの環境基金に対して継続的に資金を拠出するとともに、我が国の環境分野での多くの経験と豊富な知見を活かし、多大な貢献を行っています。

大阪に事務所を置くUNEP国際環境技術センター(UNEP/IETC)に対しても、継続的に財政的な支援を実施するとともに、UNEP/IETC及び国内外の様々なステークホルダーと連携するために設置されたコラボレーティングセンターが実施する開発途上国等への環境上適正な技術の移転に関する支援、環境保全技術に関する情報の収集・整備・発信、廃棄物管理に関するグローバル・パートナーシップ等への協力を行いました。さらに、関係府市等と協力して、同センターの円滑な業務の遂行を支援しました。また、UNEP/IETCは、2019年度から民間企業の協力も得て、持続可能な社会を目指す新たな取組である「UNEPサステナビリティアクション」の展開を開始しており、環境省としても支援しています。

2022年10月には、UNEP-IETC設立30周年を記念したイベントが開催され、持続可能な廃棄物管理を推進し、試行錯誤を重ね、さらに規模を拡大させていく方策に関して多角的な議論を行いました。

UNEPが、気候変動適応の知見共有を図るために2009年に構築したGAN及びアジア太平洋地域の活動を担うAPANへの拠出金等により、脆(ぜい)弱性削減に向けたパートナーシップの強化、能力強化活動を支援しました。

○ 経済協力開発機構(OECD)における取組

経済成長・開発・貿易等国際経済全般について協議することを目的として設立されたOECDは環境政策においても先進国主導のルールメーキングを主導しています。2019年6月に我が国が議長国を務めた「G20持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合」にもOECD事務局が参加し、会合の成功に貢献するなど、環境外交における我が国の国際的なプレゼンスにも貢献しています。我が国は、2010年より環境政策委員会のビューローを、2012年1月より同委員会の副議長を務めるなど、OECD環境政策委員会及び関連作業部会の活動に積極的に貢献しています。2022年3月にパリで開催されたOECD環境大臣会合には、気候変動をテーマとする全体セッションに山口壯環境大臣(当時)がオンラインで参加し、国内での取組や国際的な貢献について発信しました。現地では正田寛地球環境審議官(当時)が参加し、プラスチックをテーマとする全体セッション等に参加し、会合の成果として閣僚宣言が採択されました。

○ 国際再生可能エネルギー機関(IRENA)における取組

我が国は、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の設立当初より2018年まで理事国に選出、2019年のアジア太平洋地域の理事国を務め、2020年は代替国に就任しました。具体的には、IRENAに対して分担金を拠出するとともに、特に島嶼(しょ)国における人材育成及び再生可能エネルギー普及の観点から、2023年2月~3月には、IRENA及びGCFとの共催により、オンラインで国際ワークショップを実施しました。

(イ)アジア太平洋地域における取組

○ 日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)

2022年12月にオンラインで開催された第23回日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM23)では、これまでの共同行動計画(2021-2025年)に基づく三か国の環境協力の進展について評価するとともに、各国の環境政策の進展、地球規模及び地域の環境課題について意見交換を行いました。

○ 日ASEAN環境協力イニシアティブ

2017年11月に提唱した「日ASEAN環境協力イニシアティブ」に基づき、ASEAN地域でのSDGs促進のため、廃棄物・リサイクル、持続可能な都市、排水処理、気候変動における環境インフラへの支援や、海洋汚染、化学物質、生物多様性の分野における協力が進んでいます。また、本イニシアティブに基づき2021年10月の日ASEAN首脳サミットで提唱された「日ASEAN気候変動アクション・アジェンダ2.0」では、従来の「日ASEAN気候変動アクション・アジェンダ」を、透明性・緩和・適応の3本の柱は維持した上で、特にASEAN地域の脱炭素社会への移行に向けた取組を大幅に拡充するとともに、既存の取組についてもその強度を強化しています。2022年11月に開催された日ASEAN首脳会合においては、日ASEAN友好協力50周年に向け、脱炭素社会の実現のため、ASEAN諸国との協力を強化していくことを表明しました。

特に、一つ目の柱である「透明性」としては、我が国がリーダーシップをとって設立した透明性パートナーシップ(PaSTI)に基づき、ベトナム、タイ、フィリピン等のASEAN国における企業等の排出量の透明性向上のための能力開発等を実施しました。また、これらの事例を活用し、ASEAN地域全体のガイドライン案を国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)の場で公表するなど、我が国のGHG排出量算定報告公表制度の経験を活かした協力を実施しました。

(ウ)アジア太平洋地域における分野別の協力

自然と共生しつつ経済発展を図り、低炭素社会、循環型社会の構築を目指すクリーンアジア・イニシアティブの理念の下、2008年から様々な環境協力を戦略的に展開してきました。2016年以降は特に、SDGsの実現にも注力し、アジア地域を中心に低炭素技術移転及び技術政策分野における人材育成に係る取組等を推進しています。

気候変動については第1章第1節7、資源循環・3Rについては第3章第7節1、汚水処理については第3章第7節2、水分野については第4章第3節、大気については第4章第7節3(3)を参照。

イ 二国間の枠組みによる連携

(ア)先進国との連携

○ 米国

2022年9月、西村明宏環境大臣とマイケル・リーガン米国環境保護庁長官は、日米環境政策対話を行い、日米共通の重要課題である気候変動と脱炭素、海洋ごみと循環経済、化学物質管理、環境教育と若者の分野における日米の協力強化や連携について、意見交換を行いました。本対話の成果として「日米環境政策対話共同声明」を発表しました。

○ EU

2021年5月、菅義偉内閣総理大臣(当時)とシャルル・ミシェル欧州理事会議長及びウァズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長はテレビ会議形式で会談を行い、「日EUグリーン・アライアンス」の立ち上げを発表しました。これは、グリーン成長と2050年温室効果ガス排出実質ゼロを達成するため、気候中立で、生物多様性に配慮した、かつ、資源循環型の経済の実現を目指すものであり、日EUで、[1]エネルギー移行、[2]環境保護、[3]民間部門支援、[4]研究開発、[5]持続可能な金融、[6]第三国における協力、[7]公平な気候変動対策の分野での協力を定めております。

○ カナダ

2022年11月、COP27の機会を捉え、西村明宏環境大臣とカナダのスティーブン・ギルボー環境・気候変動大臣は、気候・環境に関する日加環境政策対話の立ち上げについて署名を行うとともに、政策対話を実施しました。

(イ)開発途上国との連携

○ 中国

2019年11月に開催された日中環境ハイレベル円卓対話等において、中国生態環境部と環境政策及び大気汚染、海洋プラスチックごみ、気候変動対応、生物多様性等における環境協力を推進し、両省間で環境に関する協力覚書を署名することに合意しました。引き続き、協力覚書の検討を進めるとともに、中国が掲げる2030年までのピークアウト及び2060年までの炭素中立目標の引き上げに関して働きかけを行うなど、率直な議論を交わしました。

海洋プラスチックごみについては、2022年11月に第14回日中高級事務レベル海洋協議において、第4回日中海洋ごみ協力専門家対話プラットフォーム会合及び日中海洋ごみワークショップを2023年に開催し、日中が実施している海洋プラスチックごみや資源循環に係る取組や科学的知見の整備に関する意見交換を行うことで合意しました。

○ インドネシア

2019年6月に署名された海洋担当調整大臣との共同声明に基づき、海洋プラスチックごみについては、モニタリングの技術協力として、研修を行いました。

2022年8月には、環境林業省との間で環境協力に関する新たな協力覚書を締結し、また、海洋投資調整府との間で、日インドネシア包括環境協力パッケージに合意・署名し、インドネシアが重視する優先課題に関して、脱炭素移行、生物多様性保全、循環経済の同時推進を目指した包括的な協力を進め、官民投資の促進を図っていきます。

○ インド

2018年10月にインド環境・森林・気候変動省と署名した環境分野における包括的な協力覚書に基づき、2021年9月に「第1回日本・インド環境政策対話」を開催しました。本政策対話では気候変動分野の二国間協力等について議論するとともに、JCMに関する政府間協議の実施等、今後両省の協力を一層推進していくことに合意しました。2023年1月に日・インド環境ウィークを開催し、気候変動や廃棄物管理、大気汚染対策などに関するセミナーや両国企業による展示・ビジネスマッチ等、複数のイベントを一体的に開催し、官民における二国間環境協力を推進しました。

○ モンゴル

2018年12月に更新されたモンゴル自然環境・観光省との環境協力に関する協力覚書に基づき、「第14回日本・モンゴル環境政策対話」を2021年12月にオンラインで開催し、大気汚染対策、GOSATシリーズ、JCM、生物多様性等について、意見交換を行いました。2022年5月バトウルジー・バトエルデネモンゴル国自然環境観光大臣来訪時に協力の進捗に係るハイレベルでの意見交換を行い、環境協力覚書の更新を行いました。

○ フィリピン

2022年3月にはフィリピン環境天然資源省と共催で「日本・フィリピン環境ウィーク」をオンラインで開催し、両省の気候変動分野を含む環境分野の協力に関する環境政策対話と合わせて、2015年より開催している廃棄物分野に関する環境対話(第6回)を実施しました。また環境セミナー、展示会・ビジネスマッチング等を一体的に実施し、政策支援から案件形成までの包括的な協力を推進しました。

○ シンガポール

2017年6月に更新されたシンガポール環境水資源省との間の「環境協力に関する協力覚書」に基づき、2020年12月に「第6回日本・シンガポール環境政策対話」をオンラインで開催し、大気汚染、廃棄物管理、気候変動対策について意見交換を行い、今後も二国間及びASEAN地域における環境協力を強化していくことに合意しました。

○ タイ

2018年5月にタイ王国天然資源環境省と署名した「環境協力に関する協力覚書」に基づき、「第2回日本・タイ環境政策対話」を2022年5月にオンラインで開催し、気候変動、大気環境、海洋プラスチックごみ・廃棄物管理、水質管理の分野において日タイの二国間環境協力を一層推進することに合意しました。

○ ベトナム

2020年8月に更新されたベトナム天然資源環境省との間の「環境協力に関する協力覚書」に基づき、2023年2月、ハノイにて「第8回日本・ベトナム環境政策対話」を開催するとともに、同覚書を更新しました。また同月には、ベトナムの2050年までのカーボンニュートラル目標の実現のため、2021年11月に両大臣により署名された「2050年までのカーボンニュートラルに向けた気候変動に関する共同協力計画」に基づく第2回合同作業部会を開催し、本共同協力計画に基づく気候変動分野などの協力を議論しました。また、海洋プラスチックごみについては、モニタリングの技術協力として、当地における海洋プラスチックごみ調査手法の取りまとめに向けた助言、研修を行いました。

○ UAE

2022年11月に、エジプトで開催されたCOP27会期中に、環境大臣とアラブ首長国連邦気候変動・環境大臣との間で「日本国環境省とアラブ首長国連邦気候変動・環境省との間の環境協力に関する協力覚書」に署名をしました。

○ ブラジル

2022年7月に、環境省とブラジル連邦共和国環境省との間で、気候変動対策を中心とする二国間環境協力を進めるため、「日本国環境省及びブラジル連邦共和国環境省との宣言書」に署名をしました。

○ ウズベキスタン

2022年10月にJCMに関する協力覚書に署名しました。2022年12月に環境省とウズベキスタン共和国国家生態系・環境保護委員会との間で環境保護分野における協力覚書に署名しました。

ウ 海外広報の推進

海外に向けた情報発信の充実を図るため、報道発表の英語概要、環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書の英語抄訳版等、海外広報資料の作成・配布や環境省ウェブサイト・SNS等を通じた海外広報を行いました。

エ 開発途上地域の環境の保全

我が国は政府開発援助(ODA)による開発協力を積極的に行っています。環境問題については、2015年2月に閣議決定した「開発協力大綱」において地球規模課題への取組を通じた持続可能で強靱な国際社会の構築を重点課題の一つとして位置付けるとともに、開発に伴う環境への影響に配慮することが明記されています。また、特に小島嶼(しょ)開発途上国については、気候変動による海面上昇等、地球規模の環境問題への対応を課題として取り上げ、ニーズに即した支援を行うこととしています。

(ア)無償資金協力

居住環境改善(都市の廃棄物処理、上水道整備、地下水開発、洪水対策等)、地球温暖化対策関連(森林保全、クリーン・エネルギー導入)等の各分野において、無償資金協力を実施しています。

草の根・人間の安全保障無償資金協力についても貧困対策に関連した環境分野の案件を実施しています。

(イ)有償資金協力

下水道整備、大気汚染対策、地球温暖化対策等の各分野において、有償資金協力(円借款・海外投融資)を実施しています。

(ウ)国際機関を通じた協力

我が国は、UNEPの環境基金、UNEP/IETC技術協力信託基金等に対し拠出を行っています。また、我が国が主要拠出国及び出資国となっているUNDP、世界銀行、アジア開発銀行、東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)等の国際機関も環境分野の取組を強化しており、これら各種国際機関を通じた協力も重要になってきています。

(3)多国間資金や民間資金の積極的活用

地球環境ファシリティ(GEF)は、開発途上国等が地球環境問題に取り組み、環境条約の実施を行うために、無償資金等を提供する多国間基金です。2022年7月から2026年6月まで4年間のGEF活動期間に係る第8次増資交渉が計5回にわたる会合を経て妥結し、2022年6月に開催されたGEF評議会で承認されました。今回の増資規模は53.3億ドルであり、このうち我が国から6.38億ドルの拠出を表明しました。我が国はGEFトップドナーの一つとしてこの交渉会合を通じて、プログラムの優先事項の特定及び政策方針等の作成に貢献しました。上述の2022年6月のGEF評議会では、増資交渉承認に加え、事業案の採択、環境改善効果の向上に向けた取組、基金のガバナンス等が議論されました。また、我が国は意思決定機関である評議会の場を通じ、GEFの活動・運営に係る決定に積極的に参画しています。

開発途上国の温室効果ガス削減と気候変動の影響への適応を支援する緑の気候基金(GCF)については、初期拠出の15億ドルに続いて、2019年10月の第1次増資ハイレベル・プレッジング会合において、我が国から最大15億ドルの拠出表明を行い、これまでに我が国を含む32か国及び2地方政府が総額約100億ドルの拠出を表明しました。また、2022年12月までに128か国における209件の支援案件がGCF理事会で承認されました。我が国は基金への最大級のドナーとして資金面での貢献に加え、GCF理事国として、支援案件の選定を含む基金の運営に積極的に貢献しています。また、我が国は、途上国の要請に基づき技術移転に関する能力開発やニーズの評価を支援する「気候技術センター・ネットワーク(CTCN)」に対して2021年度に約46万ドルを拠出し、積極的に貢献しました。

(4)国際的な各主体間のネットワークの充実・強化
ア 地方公共団体間の連携

脱炭素社会形成に関するノウハウや経験を有する日本の地方公共団体等の協力の下、アジア等各国の都市との間で、都市間連携を活用し、脱炭素社会実現に向けて基盤制度の策定支援や、優れた脱炭素技術の普及支援を実施しました。2022年度は、北海道札幌市、富山県富山市、神奈川県川崎市、神奈川県横浜市、東京都、埼玉県さいたま市、広島県、滋賀県、大阪府大阪市、大阪府堺市、福岡県福岡市、福岡県北九州市、愛媛県、沖縄県浦添市による22件の取組を支援しました。2023年3月に、脱炭素都市国際フォーラム2023を日米で共催し、都市の先進事例の共有等を行いました。

イ 市民レベルでの連携

独立行政法人環境再生保全機構が運営する地球環境基金では、プラットフォーム助成制度に基づいて、国内の環境NGO・NPOが国内又は開発途上地域において他のNGO・NPO等との横断的な協働・連携の下で実施する環境保全活動に対する支援を行いました。

(5)国際的な枠組みにおける主導的役割

2022年5月、ドイツ・ベルリンで開催されたG7気候・エネルギー・環境大臣会合では、気候変動、生物多様性の損失及び汚染という3つの危機に統合的に対応する必要性を確認しました。パリ協定の実施強化へのコミットを再確認し、気温上昇を1.5℃に抑えるため、この10年間に緊急かつ野心的で包括的な行動を取ることを確認しました。また、強力で野心的かつ効果的なポスト2020生物多様性枠組を提唱し、その実施に向けて直ちに行動を起こすことを確認し、資源効率性・循環経済に関する「ベルリン・ロードマップ」、海洋の取組に関する「オーシャン・ディール」を採択しました。

2022年6月のG7エルマウ・サミットでは、パリ協定及びその実施の強化への揺るぎないコミットメントを再確認しました。また、2030年までの高度に脱炭素化された道路部門、2035年までに完全に、又は大宗が脱炭素化された電力部門、国内の排出削減対策が講じられていない石炭火力発電のフェーズアウトを加速させるという目標に向けた具体的かつ適時の取組を重点的に行うこと、排出削減対策が講じられていない国際的な化石燃料エネルギー部門への新規の公的直接支援の2022年末までの終了にコミットすることを確認しました。また、国内及び世界で2030年までに少なくとも陸地の30%及び海洋の30%を保全又は保護することにコミットし、プラスチック汚染対策については、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を基礎として、プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)に関する政府間交渉にコミットしました。

新興国を含むG20では、2022年11月にインドネシア・バリで開催されたG20バリ・サミット首脳宣言において、今世紀半ば頃までに世界全体でネット・ゼロ又はカーボン・ニュートラルを達成するとのコミットメントを改めて確認しました。また、2024年末までに作業を完了するとの野心を持ってプラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に取り組むことにコミットしました。

なお、宇宙空間のごみ(スペースデブリ)が、新たな国際的な課題となっており、国際社会が協力してスペースデブリ対策に取り組む必要があることから、我が国では、JAXAにおいて、2019年4月から世界に先駆けて大型デブリ除去プロジェクトとして、民間企業と連携して軌道上でのキー技術実証や、デブリ除去技術実証に向けた開発を目指して必要な開発を進めています。

また、2019年のG20エネルギー・環境大臣会合で採択された「G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組」に基づき、上述の2022年のG20環境大臣会合にあわせて、インドネシアのイニシアティブの下、日本が支援し、「第4次G20海洋プラスチックごみ対策報告書」を取りまとめました。

また、2018年11月のASEAN+3サミットにて提唱された「ASEAN+3海洋プラスチックごみ協力アクション・イニシアティブ」に基づき、2019年に設立された海洋プラスチックごみ地域ナレッジ・センター(RKC-MPD)において、民間企業の優良事例を紹介するプラットフォームを立ち上げました。

パリ協定6条(市場メカニズム)の実施により、脱炭素市場や民間投資が活性化され、世界全体の温室効果ガスが更に削減されるとともに、経済成長にも寄与することが期待されている一方、パリ協定6条を実施するための体制整備や知見の共有等が課題とされています。国際的な連携の下、6条ルールの理解促進や研修の実施等、各国の能力構築を支援するため、我が国は、2022年11月、COP27において、60を超える国・機関の参加表明を得て「パリ協定6条実施パートナーシップ」を立ち上げました。今後も我が国が主導して、パートナーシップ参加国、国際機関等と連携しつつ、パリ協定6条に沿った市場メカニズムを世界的に拡大し、世界の温室効果ガスの更なる削減に貢献していきます。