太陽光発電については、再生可能エネルギーとして地球温暖化対策の観点から導入が促進されている一方で、近年、森林伐採を伴う大規模な太陽光発電事業が増加するなど自然環境や生活環境への支障が懸念される場合もあります。これを受け、既に環境影響評価法(平成9年法律第81号)で対象となっている事業と同程度以上に環境影響が著しいと考えられる大規模な太陽光発電事業については、2020年4月から新たに環境影響評価法の対象事業となりました。また、環境影響評価法や環境影響評価条例の対象にならない規模の太陽光発電事業における環境配慮の在り方を紹介した「太陽光発電の環境配慮ガイドライン」(2020年3月)について、地方自治体や関係事業者・団体等への周知を行いました。
環境影響評価法の対象となる風力発電所の規模要件等について、風力発電所に係る環境影響評価の現状を踏まえ、環境に配慮した再生可能エネルギーの適正な導入に向けた環境影響評価の在り方を検討するための検討会を開催し、2020年3月に報告書を取りまとめました。
環境保全と両立した形で風力発電事業の導入促進を図るため、個別事業に係る環境影響評価に先立つものとして、関係者間で協議しながら、環境保全、事業性、社会的調整に係る情報の重ね合わせを行い、総合的に評価した上で環境保全を優先することが考えられるエリア、風力発電の導入を促進し得るエリア等の区域を設定し活用する取組として風力発電に係るゾーニング実証事業を6地域で実施しました。
環境影響評価法に基づき事業者が縦覧・公表する環境影響評価図書については、縦覧・公表期間が定められていますが、多くの場合、当該期間を過ぎると図書の閲覧ができなくなっています。情報アクセスの利便性を向上させて国民と事業者の情報交流の拡充を図るとともに、事業者における環境影響予測・評価技術の向上を図るため、環境影響評価法に規定する縦覧・公表期間が終了した後についても図書の閲覧ができるよう、事業者の任意の協力を得て、環境省ホームページにおいて環境影響評価図書を掲載する取組を進めました。
環境影響評価に係る実務担当者向けの研修を4回開催しました。また、都道府県等の環境影響評価に係る審査会のより効果的かつ効率的な実施を目的として4地域で審査関係者との意見交換会を開催しました。
アジア地域においては、環境影響評価制度の導入が進んでいるものの運用面にはなお課題があるため、2017年に「アジア環境アセスメントネットワーク」の活動を始め、メーリングリスト等を用いてアジア各国の環境影響評価の担当者間で情報交換を行うなど、環境影響評価制度の強化に向けた知見を共有しました。2018年8月には、環境影響評価に関する協力も含む日本とミャンマーの包括的な環境協力覚書を締結し、覚書に基づき、2020年11月に、ミャンマーの行政官を対象とした環境影響評価に関する研修を実施しました。また、環境影響評価に係る今後の国際協力業務の在り方について、有識者を交えた意見交換を実施しました。
環境影響評価法は、道路、ダム、鉄道、飛行場、発電所、埋立て・干拓、土地区画整理事業等の開発事業のうち、規模が大きく、環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価の手続の実施を義務付けていますが、環境影響評価法に基づき、2021年3月末までに計716件の事業について手続が実施されました。そのうち、2020年度においては、新たに116件の手続が開始され、また、27件の評価書手続が完了し、環境配慮の徹底が図られました(表6-7-1)。
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近年、特に審査件数の多い風力発電事業については、騒音・風車の影といった生活環境への影響や、鳥類や植物・生態系など自然環境への影響等の観点から環境大臣意見を述べました。また、風力発電等の早期導入に向けて、3~4年程度かかるとされる環境影響評価の実施期間を半減させることを目標として、地方公共団体の協力を得て審査期間の短縮を図り、洋上風力発電事業については、2019年4月に施行された海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(平成30年法律第89号)も踏まえ、環境への配慮が適切になされていることを前提としつつ、海洋再生可能エネルギー発電の円滑な導入に資するよう、環境影響評価審査の期間の短縮化を図りました。加えて、既設の風力発電施設やリプレース事業の実態を把握し、風力発電事業に係る環境影響評価手続を合理化するため、2020年4月に「風力発電所のリプレースに係る環境影響評価の合理化に関するガイドライン」を公表しました。
火力発電事業の設置の事業については、最新鋭の高効率技術の採用や国の目標・計画との整合性等の観点から審査しました。環境大臣意見においては、今後の地球温暖化対策計画、エネルギー基本計画、長期戦略の見直しの状況を踏まえ、必要に応じて事業計画の見直しを行うとともに、我が国における2050年カーボンニュートラルの実現という目標との整合性が図られるよう、検討を行うことなどを求めました。
質の高い環境影響評価を効率的に進めるために、環境影響評価に活用できる地域の環境基礎情報を収録した「環境アセスメントデータベース“EADAS(イーダス)”」において、情報の拡充や更新を行い公開しました。また、今後導入の拡大が見込まれる洋上風力発電事業の環境影響評価に必要となる海洋の環境情報の収集に取り組みました。
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