環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和2年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第5章>第2節 化学物質に関する未解明の問題への対応

第2節 化学物質に関する未解明の問題への対応

1 小児環境保健への取組

胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子供の健康に与える影響を解明するために、2010年度より全国で10万組の親子を対象とした大規模かつ長期の出生コホート調査「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」を開始しました。母体血や臍(さい)帯血、母乳等の生体試料を採取保存・分析するとともに、子供が13歳に達するまで質問票によるフォローアップを行い、子供の健康に影響を与える環境要因を明らかにすることとしています。

この調査研究の実施体制としては、国立研究開発法人国立環境研究所がコアセンターとして研究計画の立案や生体試料の化学分析等を、国立研究開発法人国立成育医療研究センターがメディカルサポートセンターとして医学的な支援を、公募により指定した全国15地域のユニットセンターが参加者のフォローアップを担っており、環境省はこの調査研究の結果を用いて環境施策の検討を行うこととしています。また、質問票によるフォローアップ及び全国調査10万人の中から抽出された5,000人程度の子供を対象として環境試料の採取、医学的検査等を行う詳細調査を実施しています(図5-2-1)。

図5-2-1 子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)の概要

2 化学物質の内分泌かく乱作用問題に係る取組

化学物質の内分泌かく乱作用問題については、その有害性など未解明な点が多く、関係府省が連携して、環境中濃度の実態把握、試験方法の開発、生態系影響やヒト健康影響等に関する科学的知見を集積するための調査研究を、経済協力開発機構(OECD)における活動を通じた多国間協力や二国間協力など国際的に協調して実施しています。

環境省では、2016年に取りまとめた「化学物質の内分泌かく乱作用に関する今後の対応─EXTEND2016─」に基づき、これまでに得られた知見や開発された試験法を活用し、評価手法の確立と評価の実施のための取組を進めています。2019年度も、一部の化学物質について試験管内試験及び生物試験を実施しました。

小児や妊婦(胎児)など化学物質に対して脆(ぜい)弱と考えられる集団の化学物質に対する反応に関して、疫学調査等を通じた知見の集積を踏まえ、次世代に対する影響の評価手法の開発に資する研究等を推進しています。

水環境中の内分泌かく乱作用を有すると疑われる化学物質の存在状況を把握するため、全国109の一級河川を対象に、水質及び底質の調査を引き続き実施しました。