第2節 循環型社会を形成する基盤整備


1.財政措置等


 循環型社会基本法では、政府は、循環型社会の形成に関する施策を実施するために必要な財政上の措置等を講じることとしています。国の各府省の予算のうち、「循環型社会」の形成を推進するための経費は、平成17年度予算額で約3,614億4,700万円(下水道事業費補助等、内数で計上している経費は除く。)となっています(2-2-1表)。
2-2-1表 主な循環型社会形成推進基本法関係予算


 金融措置として、日本政策投資銀行において、廃棄物の発生抑制、再使用、再生利用、再資源化の総合的な促進による廃棄物・リサイクル対策、ダイオキシン類の適切な排出削減、PCB廃棄物処理の促進等の公害防止対策に係る融資施策を引き続き講じます。
 また、廃棄物処理施設に係る課税標準の特例措置等、廃棄物のリサイクルや適正処理の推進のための税制上の優遇措置を引き続き講じます。

2.循環型社会ビジネスの振興


 事業者が、再生資源の利用率目標の達成及び再生資源の新規用途の開発などの、個別品目の状況に応じた再生利用能力の向上を図ることを促進するとともに、再生資源やリサイクル製品は、初めて使用される資源やこれによる製品に比べて割高になりがちであることも踏まえつつ、国、地方公共団体、事業者、国民全ての主体がリサイクル製品を積極的に利用することなどにより、リサイクル製品の利用・市場の育成等を推進します。
 また、循環型社会の形成の礎となる産業廃棄物処理業の優良化を推進するため、処理業者の優良性の判断に係る評価制度の円滑な実施を図るとともに、中小企業を含めた事業者における環境報告書や環境会計の作成・公表、地域コミュニティビジネスの育成等を図ります。

3.経済的手法の活用


 多くの人の日常的な活動によって引き起こされている廃棄物問題については、大規模な発生源や行為の規制を中心とする従来の規制的手法による対応では限界がある面もあります。このため、その対策に当たっては、規制的手法、経済的手法、自主的取組などの多様な政策手段を組み合わせ、適切な活用を図っていくことが必要です。
 そのため、今後は、中央環境審議会の意見具申を踏まえて、有料化に伴う様々な問題に関する考え方や、有料化の検討の進め方などについてガイドラインを取りまとめ、有料化を行う市町村を支援していきます。
 また、引き続き、ごみ(一般廃棄物)処理手数料の徴収等の状況、デポジット制度(預託払戻制度)等の経済的負担措置等の導入実態や課題についての検討を実施します。

4.教育及び学習の振興、広報活動の充実、民間活動の支援及び人材の育成


 平成16年10月に、「環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律」が完全施行され、今後は同法及び同法に基づく基本方針(平成16年9月24日閣議決定)に基づき、学校、地域、家庭等様々な場における環境教育・環境学習を推進し、環境保全活動に取り組む意欲を高めていくための体験機会や情報の提供等の措置を進めます。また、環境教育等の指導者に関する情報の教育現場等への提供を図るため、環境省、文部科学省、農林水産省、経済産業省及び国土交通省が連携して、同法に基づく人材認定等事業の登録制度の円滑な運用を図ります。
 環境省では、小中学生の環境活動を支援する「こどもエコクラブ事業」等を引き続き実施するほか、家庭における環境保全行動を支援するため「我が家の環境大臣事業」を平成17年度より実施します。また、情報提供等を行う拠点として、引き続き全国に「地方環境パートナーシップオフィス」を整備していくほか、環境保全についての助言等を行う人材を確保する「環境カウンセラー事業」を推進します。さらに、独立行政法人環境再生保全機構に設けられている「地球環境基金」では、引き続き国内外の民間団体が行う環境保全活動に対する助成を行います。特に循環型社会形成推進のための活動には引き続き積極的な支援を行います。
 さらに、NGO・NPO等の民間団体、事業者及び地方公共団体等の各主体が連携して行うリデュース(排出抑制)、リユース(再使用)を中心とする循環型社会に向けた取組であって、先駆的・独創的かつ他の地域に適用可能な一般性を有する事業について、アイディアを公募して、実証事業として実施します。
 また、文部科学省では、新たに学校における環境教育推進のための教材開発に取り組むとともに、引き続き全国環境学習フェアや環境教育担当教員講習会の開催、環境教育実践モデル地域、環境のための地球観測プログラム(GLOBE)モデル校の指定などを行います。平成17年度からは、新たに環境教育推進のためのプログラム開発を行います。
 また、環境省と文部科学省の連携・協力の下、環境教育リーダー研修基礎講座の実施や情報提供体制の整備などを引き続き行います。

5.調査の実施・科学技術の振興


 廃棄物に係る諸問題の解決とともに循環型社会の構築を推進するため、平成16年度においても、総合科学技術会議の「ゴミゼロ型・資源循環型技術研究イニシャティブ」に基づき、競争的資金を活用し広く課題を募集し、研究事業及び技術開発事業を実施します。
 研究事業については「社会におけるマテリアルフロー分析、循環型社会の評価手法に関する研究」、「経済的インセンティブを用いた3R(リデュース、リユース、リサイクル)の推進に関する研究」、「地域における最適な資源循環システムの構築に関する研究」、「安全、安心のための廃棄物管理技術に関する研究」を重点テーマとし、社会的・政策的必要性に応じた廃棄物処理等に係る研究を推進します。
 技術開発については、「廃棄物適正処理技術」、「廃棄物リサイクル技術」、「循環型設計・生産技術」の各分野において、実用性、経済性が見込まれる次世代を担う廃棄物処理等技術の開発を図ります。
 廃棄物処理等科学研究費においては、循環型社会の形成や廃棄物の安全かつ適正な処理に資するため、社会的な必要性が高く先駆的・独創的な科学研究の振興並びに実用的で汎用性、経済性に優れた次世代を担う技術開発の推進を図ります。
 科学研究の振興では、循環型社会形成の評価や費用負担の在り方に関する研究、廃棄物処理に伴う有害化学物質の排出削減や無害化処理に関する研究、不法投棄対策や原状回復に関する研究等を実施します。
 また、技術開発の推進では、ばいじん等の適正処理技術、最終処分場の再生や修復技術、生ごみ・廃家電・廃自動車・建設系廃棄物等のリサイクル技術、循環利用設計や建設・生産技術等の開発を実施します。
 地球環境保全等試験研究費のうち公害防止等試験研究費においては、前年度に引き続き「循環型社会形成に資する研究」を重点的強化を図る必要がある事項の一つに掲げ、「埋立廃棄物の品質並びに埋立構造改善による高規格最終処分システムに関する研究」など5課題の試験研究を実施します。
 また、建設廃棄物、特に混合廃棄物を構成する各種資材を主対象として、建築物の解体工事等に伴う廃棄物の発生抑制から収集・集積、加工・処理、流通及び再生資材の活用までの各段階が連携し、効果的に資源循環を推進するための技術体系並びにその普及基盤の開発を行います。
 また、民間事業者の有する効率的な3R(リデュース・リユース・リサイクル)技術の実用化の促進を図るため、民間企業から公募により選定されたすぐれた循環システムの実用化に向けた技術開発に対して補助をしていきます。また、このほかにも特に3Rのうちリデュース、リユース対策として、電気電子機器再資源化促進高温鉛はんだ代替技術開発、環境配慮設計推進に係る基盤整備、構造物長寿命化高度メンテナンス技術開発などの事業を推進していきます。
 さらに、異業種間の交流・協力等を進めつつリサイクル技術の開発・普及を促進し、リサイクル推進のための啓発や国民運動を進め、リサイクルの実施状況、効果等に係る情報の整備・提供を推進します。

6.施設整備


 循環型社会を目指し、21世紀初頭を目途に、廃棄物のほとんど全てを、単に燃やして埋める処理から、極力リサイクルを推進し、焼却処理の際には熱エネルギーを回収するものへの転換を推進します。
 リサイクル関連施設については、容器包装廃棄物や廃家電製品の再商品化、建設資材廃棄物の再資源化、焼却灰の溶融固化、し尿・浄化槽汚泥・生ごみの資源化等、特に有機性廃棄物をメタン発酵させ、高効率で回収する施設、また、熱利用施設については余熱利用、廃棄物発電等の施設整備等を推進します。
 平成17年度に創設する「循環型社会形成推進交付金」により、広域的な地域において廃棄物の3R(リデュース、リユース、リサイクル)を総合的かつ戦略的に推進するための目標を設定し、その達成のために必要な廃棄物処理・リサイクル施設の整備を促進します。
 また、家畜排せつ物等について、地域における有効利用を促進し、効率的かつ環境保全上適切に循環するシステムを形成するための施設整備、さらに「民間事業者の能力の活用による特定施設の促進に関する臨時措置法」に基づく古紙の他用途リサイクルのための施設整備等を推進します。
 再資源化施設に関しては、建設廃棄物等の再資源化を促進するため、再資源化施設の稼働状況等に関する情報交換システムの運用を推し進めていくとともに、再資源化施設の立地について、その適正な立地誘導等が図られるよう必要な施策について検討を進めていきます。
 地域における資源循環型経済社会構築の実現に向けて、引き続き「エコタウン事業」を実施し、先進的なリサイクル関連施設に対する支援を行っていきます。
 水産物の加工流通過程における排水処理の高度化及び水産加工残さ等のリサイクルの促進に必要な施設整備を推進します。
 最終処分場の確保が特に困難となっている大都市圏のうち、近畿圏においては、大阪湾広域臨海環境整備センターが行う広域処理場(廃棄物埋立護岸、廃棄物受入施設、排水処理施設等)に対して事業費約83億円(うち国費約21億円)で整備を行い、広域処理場の整備の促進及び埋立ての円滑な実施を図ります。また、首都圏を始めその他の地域においては、広域処理場の確保が必要となれば、関係地方公共団体間に働きかけを行います。
 港湾における廃棄物埋立護岸について、事業費約394億円(うち国費約102億円)で全国27港及び大阪湾において整備を行います。
 このほか、資源のリサイクルを促進するため、首都圏の建設発生土を全国の港湾建設資源として広域的に有効利用するプロジェクト(いわゆるスーパーフェニックス)として、平成17年度には栗津港、広島港等において建設発生土の受入を実施します。

7.生活環境保全上の支障の防止、除去等


 産業廃棄物の不適正処分の防止と支障の除去等を図るため、引き続き、全国9ブロックの地方環境対策調査官事務所(平成17年10月1日より、自然保護事務所との統合により、全国7ブロックの地方環境事務所に改組)の立入検査等の体制を強化するとともに、都道府県等の監視の強化に対する補助を行います。さらに、硫酸ピッチの不適正処分の防止については、廃棄物処理法を改正し、不適正保管に対する規制を強化するとともに、引き続き関係機関との連携等を図ります。
 また、産業廃棄物適正処理推進センターの基金に対し、産業界の自主的な拠出に併せて国からも補助を行うとともに、産廃特措法に基づく補助も行っていきます。
 さらに、環境省に設置した不法投棄ホットラインを活用し、都道府県等とも連携して不法投棄の早期発見、拡大防止に努めるほか、現場調査や関係法令等に精通した専門家チームを派遣し、都道府県等の不法投棄対策を支援します。また、循環型社会の形成を根幹から阻害するおそれのある不法投棄等の不法行為の取締りを引き続き強化するとともに、その取締体制の整備等を行います。

8.その他の政府の取組


 木材の循環利用を促進するためには、建設廃棄木材等の未利用木質資源の再利用・再資源化が必要であり、これらの未利用木質資源の有効活用を図るため、木質複合材料等の開発を行います。また、接着剤により接着された木質系材料は木質部と接着剤の分離が困難であることから、廃棄段階において簡易に分離・剥離する接着・分離技術を開発することにより再使用・再生利用・再資源化を促進します。
 また、循環型社会の形成等の観点を踏まえ、加工時のエネルギー消費量が少なく、再生産可能な資源としての特性を有する木材とりわけ国産材の利用を推進してまいります。
 家畜排せつ物等有機性資源のたい肥化・飼料化や再生可能エネルギーとしての利活用などによる循環的利用の促進、緑肥の導入などによる効率的な土作り等を推進します。
 農業集落排水事業においては、発生する汚泥の有機肥料等へのリサイクルを引き続き推進します。
 木質資源循環利用技術開発事業においては、木質資源の有効活用に配慮し、木材成分を活用して、リサイクルが可能であり、石油化学製品を代替する木質新素材等の開発を実施します。
 品目別及び業種別廃棄物処理・リサイクルガイドラインのフォローアップ、対象の改定についての検討のほか、「排出事業者のための廃棄物・リサイクルガバナンスガイドライン」、鉱工業等に係る産業廃棄物の減量化・リサイクルに関する数値目標などに係る取組の実施、関係者への周知徹底、フォローアップなどを引き続き推進します。
 また、製品の設計・製造段階から3Rを配慮した「環境配慮製品」への取組の強化、「環境配慮製品」の市場拡大促進にも取り組んでいきます。
 下水道事業において発生する汚泥(発生汚泥等)は、産業廃棄物の総発生量の約19%を占め、下水道の普及に伴いその発生量は年々増加している一方、下水汚泥を受け入れている最終処分場は、その半数が数年以内には受入れができなくなると見込まれており、今後さらなる汚泥の減量化、再生利用が必要となっています。このような状況を踏まえ、下水汚泥処理施設や資源化施設整備の支援、下水汚泥処理総合計画の策定の推進、技術開発の促進、下水汚泥再生利用の普及啓発などに取り組んでいきます。
 使用済みFRP(繊維強化プラスチック)船の処理については、埋設、焼却処分しているのが現状であり、埋設処分場確保の限界や、焼却によるダイオキシン発生問題等を勘案すると、早期にリサイクルシステムを構築する必要があります。
 このため、「FRP廃船高度リサイクルシステム構築プロジェクト」のもとで、経済的なリサイクルシステムの事業化に向けた検討を継続実施し、この分野におけるリサイクル基盤の整備を図ります。
 また、将来的な使用済みFRP船発生量を抑制するため、劣化・損傷箇所のみを取り替え可能とするリユース技術を用いたFRP船(通称「エコ・ボート」)の普及に取り組んでいきます。
 日本工業標準調査会(JISC)は環境配慮製品の普及のため、平成14年4月に策定した「環境JISの策定促進のアクションプログラム」に基づく環境JIS策定を推進するとともに、同プログラムに示されている「環境JIS策定中期計画」の毎年度の見直しを実施します。
 また、平成15年3月に策定した分野別環境配慮規格整備方針に基づき、規格(JIS)への環境側面の導入を推進します。
 さらに、平成16年6月に策定した「国際標準化活動基盤強化アクションプラン」に基づき、環境測定方法を国際的に統一するための国際標準化活動に対して、積極的に参加します。
 平成14年4月の首都圏ゴミゼロ型都市推進協議会及び平成15年3月の京阪神圏ゴミゼロ型都市推進協議会の取りまとめを踏まえ、それらの進捗状況について点検を行い、新たな課題について検討を行うなど、フォローアップを行います。
 地球温暖化の防止、循環型社会の形成、競争力のある新たな戦略的産業の育成、農林漁業、農山漁村の活性化の観点から、バイオマスをエネルギーや製品として総合的に最大限利活用し、持続的に発展可能な社会「バイオマス・ニッポン」を早期に実現するため、平成14年12月に閣議決定された「バイオマス・ニッポン総合戦略」に基づき、この戦略に位置付けられた各種の施策を強力に推進します。
 具体的には、全般的事項に関する戦略として、バイオマス関連の情報拠点の創設やシンポジウム等の開催を通じた国民的理解の醸成を図るほか、バイオマスの効率的な利活用が可能となる社会システム設計に関する研究開発、地域における取組支援等を行うとともに、関係府省の連携のためのバイオマス・ニッポン総合戦略推進会議の開催、環境NPOの活動支援、モデル地域等における総合的なバイオマス利活用対策等を実施します。
 静脈物流の拠点となる港湾を総合静脈物流拠点港(リサイクルポート)に指定し、広域的なリサイクル関連施設の集中立地を推進するとともに、循環資源の収集・輸送・処理の総合的な静脈物流拠点を形成し、ネットワーク化を図ります。また、国内の静脈物流システムとも連携を図りながら、循環資源の輸出ターミナルの拠点化・大型化、品質管理の強化等による効率的な国際静脈物流システムの構築に向けた取組も推進していきます。
 地方公共団体は、循環型社会の形成に関する様々な施策を策定・実施する主体です。その施策は当該区域の自然的社会的条件を踏まえて実施されるものであることから、国は、地方公共団体が実施する施策の適切さを確保するために、法制定等により地方公共団体の役割やその実施すべき施策を明確化すること、通知等により法解釈を具体的に明らかにすること、地方公共団体が施策を実施する際によって立つべき基準を設定すること、地方公共団体が施策を実施する際の参考となる指針を設定すること等、地方公共団体の実施する施策を支援する措置を講じていきます。
 また、地方公共団体が循環型社会の形成に関する施策を講ずるために必要な費用について、国庫補助金、地方公共団体への融資等、必要な財政措置を講じることとしています。


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