平成17年度循環型社会の形成に関する施策


第1章 概説


 社会経済活動が、大量生産・大量消費・大量廃棄型となり、高度化するにつれ、生活環境の汚染・破壊が進展し、同時に資源採取から廃棄に至る各段階での環境への負荷が高まっています。また、廃棄物・リサイクル対策を取り巻く状況として、これまでの努力にもかかわらず依然として横ばいの廃棄物の発生、廃棄物の質の多様化、最終処分場のひっ迫等の問題が生じています。このような課題に対する動きを加速させ、社会を持続可能なものにするため、自然界における物質の適正な循環などにも配慮しつつ経済社会システムにおける物質の循環を促進し、環境への負荷を低減させるための施策を講じていくことが必要です。
 このため、「循環型社会形成推進基本法」(循環型社会基本法)及び循環型社会形成推進基本計画(循環型基本計画)に基づき、廃棄物等の発生を抑制するとともに再使用及び再生利用を進めることにより減量化を促進し、その上でなお処理しなければならない廃棄物について安全かつ適正に処理することによって天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会(循環型社会)の形成に向けて施策を総合的、計画的に推進してまいります。


第2章 循環型社会の形成に向けた国の取組


第1節 循環型社会の形成に向けた法制度の施行について


1. 循環型社会形成推進基本法(循環型社会基本法)

 循環型社会の形成に関する施策を総合的、計画的に推進するため、平成15年3月に循環型社会基本法第15条に基づいて循環型社会形成推進基本計画(循環基本計画)を策定しました。その中で示した物質フロー指標に関する目標及び取組指標に関する目標の達成に向けて、各主体のパートナーシップの育成、各主体の活動への支援や情報の整備・提供、国自らも事業者・消費者として循環型社会の形成に向けた取組を率先的に実行する等、国全体の循環型社会の形成に関する取組を総合的に進めます。

2. 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)

 平成13年5月に環境大臣は「廃棄物の減量その他その適正な処理に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な方針」(基本方針)を決定し公表しています。その中では、まず、できる限り廃棄物の排出を抑制し、次に、廃棄物となったものについては不適正処理の防止その他の環境への負荷の低減に配慮しつつ、再使用、再生利用、熱回収の順にできる限り循環的な利用を行い、こうした排出抑制及び適正な循環的利用を徹底した上で、なお適正な循環的利用が行われないものについては、適正な処分を確保することを基本とすること等を定めています。これにより一般廃棄物及び産業廃棄物の最終処分量を平成22年度までに平成9年度のおおむね半分に削減することとしています。一般廃棄物の処理については、平成16年度に、中央環境審議会において循環型社会の形成に向けた市町村による一般廃棄物処理の在り方について審議が行われ、経済的インセンティブ等を利用した発生抑制等などを内容とする意見具申がなされました。平成17年度には本意見具申を踏まえて基本方針の見直しを行うこととしており、基本方針に定められた目標の達成に向けた取組を引き続き着実に推進していきます。
 平成17年度からは、廃棄物処理施設整備費国庫補助金を原則廃止する一方で、廃棄物の3R(リデュース、リユース、リサイクル)を推進するための目標を設定し、広域的かつ総合的に廃棄物処理・リサイクル施設の整備を推進する「循環型社会形成推進交付金制度」を創設します。
 またソフト面の施策として、市町村が実施する分別収集について標準的な分別区分や再資源化・処理方法の考え方を示す等、ごみの減量化・再生利用に資する施策への支援を引き続き実施します。
 また、平成12年度から新たに創設された産業廃棄物処理施設のモデル的整備事業に対する補助制度により、廃棄物処理センターによる産業廃棄物処理施設の整備促進を図ります。
 最終処分場の確保が特に困難となっている大都市圏のうち、近畿圏においては、大阪湾広域臨海環境整備センターが行う広域処理場整備の促進及び埋立ての円滑な実施を図ります。また、首都圏においては、必要な広域処理場の確保に向けて、関係地方公共団体間に働きかけを行います。
 廃棄物処理法に基づき、市町村における適正な処理が困難となっている一般廃棄物として指定されている廃タイヤ等については、消費者が新製品を購入する際等において販売店が廃棄物を引き取り、可能な範囲で市町村以外のシステムで処理しています。このような、市町村の処理が適正に行われることを補完するために製造事業者等が行う協力を推進します。
 産業廃棄物問題の根本的な解決に向け、国の役割を強化し、産業廃棄物運搬車両への表示等による不法投棄等の不適正処理事案の発生の未然防止や電子マニフェストの普及促進等による廃棄物処理システムの透明性の向上、行政における体制整備・対処能力向上を進めます。
 さらに、平成17年5月には、大規模不法投棄、無確認輸出等廃棄物の不適正処理に対する対応を強化するとともに、より適切な事務処理体制を確立するため、保健所設置市に係る事務の見直し、産業廃棄物管理票制度の強化、無確認輸出に関する罰則の強化等の措置を講ずる「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律」が公布されたところであり、円滑な施行のために関係政省令の整備などを行います。

3.資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)

 平成13年4月に施行された「資源の有効な利用の促進に関する法律」(資源有効利用促進法)では、1)副産物の発生抑制を行うべき業種(特定省資源業種:鉄鋼業、紙・パルプ製造業等)、2)再生資源・再生部品を原材料として利用すべき業種(特定再利用業種:紙製造業、複写機製造業等)、3)材料の合理化を行うべき製品(指定省資源化製品:自動車、家電等)、4)材料・構造の工夫を行うべき製品(指定再利用促進製品:自動車、家電等)、5)分別回収を容易にするための表示を行うべき製品(指定表示製品:プラスチック製容器包装、紙製容器包装等)、6)自主回収・再資源化を行うべき製品(指定再資源化製品:パソコン、小形二次電池)、7)再生資源として利用できるよう工夫すべき副産物(指定副産物:石炭灰等)を指定し、それぞれに係る事業者に一定の義務付けを行い、事業者の自主的な取組の促進を図ります。

4.容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(容器包装リサイクル法)

 平成15年度を初年度とする平成19年度までの第3期分別収集計画が策定されていますが、例えばプラスチック製容器包装については、平成19年度までに、全市町村数の8割を超える市町村が分別収集に取り組むこととなっており、その収集量は90万tを超える見込みです。
 同計画に基づき、分別収集が着実に行われるように、分別収集に関する施設への補助など、引き続き市町村に対する支援に努めることとしています。
 また、容器包装リサイクル法は施行後10年を経過した場合において、一部規定の施行状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとされています。これを踏まえ、平成16年7月から中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会及び産業構造審議会廃棄物・リサイクル小委員会容器包装リサイクルWGにおいて制度の評価・検討が開始されました。平成17年度も引き続き検討が行われ、平成17年6月頃に中間取りまとめ、秋頃に最終取りまとめが行われる予定になっています。

5. 特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)

 家電リサイクル法については、小売業者による引取り、引渡し及び家電リサイクル券の管理、製造事業者等による引取り、再商品化(リサイクル)及び家電リサイクル券の管理が適正に行われるよう、引き続き、法の実効性を確保するための必要な措置を講じます。
 今後とも、広報活動等を通じて家電リサイクルの理解をより一層深める取組を進めるとともに、不法投棄の実態把握や投棄防止のための各地域の取組に関する情報提供を実施していきます。

6.使用済自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法)

 平成17年1月1日から自動車リサイクル法が本格施行されましたが、引き続き、制度の円滑な施行に向けて、関係事業者や自動車所有者等に対して各種媒体を利用しつつ、制度の一層の広報・普及等を行っていきます。具体的には、各種チラシ等の配布やテレビ、ラジオ、新聞などの幅広い手段を用いて広報を実施していく予定です。

7.建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)

 対象建設工事の分別解体等及び再資源化等が確実に実施されるよう、引き続きPR活動や工事現場のパトロールの充実等を図ります。また、建設廃棄物等のリサイクル推進のため、平成14年5月に策定された「建設リサイクル推進計画2002」や「建設リサイクルガイドライン」の周知・徹底を図るとともに、公共工事発注者をはじめとして建設工事関係者間の連携を図るため建設副産物対策連絡協議会等の場を活用するなど関係機関間の情報交換体制の強化、研究・技術開発の推進を図っていきます。
 また、建設発生木材については千葉県をモデルとした「建設発生木材リサイクル促進行動計画」の策定に向け、関係機関が検討を進めています。また、その排出量自体はコンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊及び建設発生木材に比べると少ないものの、再資源化等率が低くとどまっているものに、建設汚泥と建設混合廃棄物が挙げられます。このうち、建設汚泥については、廃棄物該当性や再生利用に係る基準の明確化、建設資材としての利用用途の拡大などの再生利用促進方策について、国土交通省と環境省が連携して検討を進めているところです。さらに、建設混合廃棄物については、工事現場において建設副産物をリサイクル用途に合わせて分別することが効果的と考えられていますが、その際に少量化・多品目化した建設副産物を分別した状態のまま効率良く回収するための建設副産物小口巡回共同回収システムの実現可能性が検討されています。
 また、リサイクルを推進するためには、リサイクル材の利用を促進することが不可欠です。そのため、公共事業においては、グリーン購入法の基本方針の内容も踏まえ、建設リサイクル法において再資源化等が義務付けられているコンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊及び建設発生木材について、リサイクル材の積極的な利用の促進に努めていきます。特に、リサイクル用途が限定されていることや木材チップの需要が低迷していること等の理由から、再資源化率が約60%(平成14年度)と低迷している建設発生木材については、そのリサイクル用途を拡大し、その再資源化を強力に推進していく必要があるため、建築資材やコンクリート型枠材、マルチング材等について、木材を再生利用したリサイクル材の利用促進を図るよう、モデル工事等を通じた施工性、経済性等の適用性の検討を進めるとともに、木材チップの品質基準の策定等を行っていきます。
 また、建設廃棄物の最終処分量をゼロにすることを目標として、東京圏において建設工事における完全再資源化及び完全再利用のフィージビリティースタディーを実施し、ゼロ・エミッションのための具体化構想の策定に向けた検討を実施しています。
 さらに、住宅・建築物の分野において、廃棄物の発生が少ない木造建築物の設計・施工技術の開発を行うとともに、中小規模の建築物について廃棄物の発生を抑制するためのリサイクル資材の導入などリサイクルしやすい住宅整備方策の検討を行います。

8.食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)

 「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(食品リサイクル法)は、平成13年5月から施行されており、同法に基づく食品関連事業者の再生利用等の実施を確保するとともに、これらの円滑な取組を確保するため、登録再生利用事業者制度、再生利用事業計画認定制度を活用した優良なリサイクル業者の育成等を推進します。
 また、食品循環資源の再生利用等の推進を図るため、普及啓発の実施、食品廃棄物を含むバイオマス利活用を図ろうとする地域に対する施設整備の支援等を通じた再生利用の促進等を実施します。

9.国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)

 国等の各機関では、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」(グリーン購入法)に基づく基本方針に即して毎年度環境物品等の調達方針を作成・公表し、これに基づいて環境物品等の調達の推進を図ります。また、基本方針に定める国等が重点的に調達の推進を図る環境物品等については、その開発・普及の状況、科学的知見の充実等に応じて、適宜追加・見直しを行います。
 地方公共団体におけるグリーン購入の取組を促すため、地方公共団体を対象としたグリーン購入に関するアンケート調査や、基本方針の変更についての説明会等を行います。
 さらに、幅広い主体による環境物品等の購入を推進するため、購入者が製品やサービスに関連する適切な環境情報を入手できるよう、新たに「商品環境情報提供システム」の構築を図るとともに環境ラベリングその他の手法による情報提供を進めていきます。
 廃棄物を大幅に低減するため、廃棄物の発生の少ない製品やリサイクル可能な製品など、環境への負荷の少ない製品の積極的な購入を進めるため、グリーン購入に率先して取り組む企業、行政、消費者団体等各主体が連携した組織として発足したグリーン購入ネットワークの活動を積極的に支援します。また、全国各地において開催するグリーン購入セミナーを通じて、グリーン購入の周知を図っていきます。

10.ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特措法)

 国が策定したPCB廃棄物処理基本計画に即した、都道府県及び政令市によるPCB廃棄物処理計画の策定を推進します。また、日本環境安全事業株式会社によるPCB廃棄物の拠点的な広域処理施設の整備については、北九州事業、豊田事業、東京事業、大阪事業及び北海道事業の進捗を図ることにより、全国のPCB廃棄物を法律に定める処理期限である平成28年7月までに、一掃できるよう努力することとしています。
 さらに、国は処理費用負担能力の小さい中小企業者が保管しているPCBを使用した高圧トランス・高圧コンデンサの処理に係る負担を軽減するために設置しているPCB廃棄物処理基金を造成するための予算措置を平成16年度に引き続いて行います。

11.特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法(産廃特措法)

 特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法(産廃特措法)に基づき、平成9年の改正廃棄物処理法の施行前(平成10年6月17日前)に、廃棄物処理法に定める処理基準に違反して不適正に処分された産業廃棄物に起因する生活環境保全上の支障の除去等の計画的かつ着実な推進を都道府県等に対して呼び掛けるとともに、実施計画を策定して支障除去等事業を自ら行う都道府県等に対し、引き続き財政支援を行っていきます。


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