環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成30年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第4章>第5節 土壌環境の保全対策

第5節 土壌環境の保全対策

1 環境基準等の見直し

土壌環境基準については、土壌環境機能のうち、地下水等の摂取に係る健康影響を防止する観点と、食料を生産する機能を保全する観点から設定されており、既往の知見や関連する諸基準等に即し、現在29項目について設定されています。

水質汚濁に係る環境基準や地下水の水質汚濁に係る環境基準等に関しては、2009年度から2011年度にかけて、1,4-ジオキサン、クロロエチレン、1,2-ジクロロエチレン、1,1-ジクロロエチレン、カドミウム及びその化合物、トリクロロエチレンの6物質に関し基準の項目への追加又は基準値の改正が行われ、1,1-ジクロロエチレンについては、土壌環境基準及び土壌溶出量基準等の改正を行いました。また、クロロエチレンについては、土壌環境基準及び土壌溶出量基準等への追加を、1,4-ジオキサンについては、土壌環境基準への追加を行いました。

2 土壌汚染対策

土壌汚染対策法に基づき、2016年度には、有害物質使用特定施設が廃止された土地の調査284件、一定規模以上の土地の形質変更の届出の際に、土壌汚染のおそれがあると都道府県知事等が認め実施された調査119件、土壌汚染による健康被害が生ずるおそれがある土地の調査0件、自主調査428件の合計831件行われ、同法施行以降の調査件数は、2016年度までに6,480件となりました。調査の結果、土壌溶出量基準又は土壌含有量基準を超過しており、かつ土壌汚染の摂取経路があり、健康被害が生ずるおそれがあるため汚染の除去等の措置が必要な地域(以下「要措置区域」という。)として、2016年度末までに506件指定されています(506件のうち311件は解除)。また、土壌溶出量基準又は土壌含有量基準を超過したものの、土壌汚染の摂取経路がなく、汚染の除去等の措置が不要な地域(形質変更時要届出区域)として、2,704件指定されています(2,704件のうち1,028件は解除)(図4-5-1)。

図4-5-1 土壌汚染対策法の施行状況

要措置区域においては、都道府県知事が汚染の除去等の措置を講ずべきことを指示することとされており、形質変更時要届出区域においては、土地の形質の変更を行う場合には、都道府県知事への届出が行われることとされています。また、汚染土壌を搬出する場合には、都道府県等へ届出が行われた上で、汚染土壌処理施設への搬出が行われることとされており、これらにより、汚染された土地や土壌の適切な管理がなされるよう推進しました。

土壌汚染対策法に基づく土壌汚染の調査を適確に実施するため、調査を実施する機関は環境大臣又は都道府県知事の指定を受ける必要がありますが、2017年12月末時点で718件がこの指定を受けています。また、指定調査機関には、技術管理者の設置が義務付けられており、その資格取得のための土壌汚染調査技術管理者試験を2017年11月に実施しました。そのほか、低コスト・低負荷型の調査・対策技術の普及を促進するための調査等を行いました。

土壌汚染対策法は、2010年4月の改正法の施行から5年が経過したことから、中央環境審議会において施行の状況についての審議が進められ、2016年12月に、「今後の土壌汚染対策の在り方について(第一次答申)」が答申されました。この第一次答申を踏まえ、土壌汚染に関する適切なリスク管理を推進するため、土壌汚染状況調査の強化を図り、都道府県知事が汚染の除去等の措置内容の計画提出を命ずることとするとともに、一定の要件を満たす区域における土地の形質変更の届出及び汚染土壌の処理に係る特例制度の創設等を盛り込んだ土壌汚染対策法の一部を改正する法律(平成29年法律第33号)が2017年5月19日に公布されました(第1段階施行期日:平成30年4月1日/第2段階施行期日:公布の日から2年以内で政令で定める日)。また、第1段階施行に伴い必要となる政省令事項等を定めるために、土壌汚染対策法施行令の一部を改正する政令(平成29年政令第269号)が2017年10月25日に、土壌汚染対策法施行規則の一部を改正する省令(平成29年環境省令第29号)等が2017年12月27日に公布され、いずれも2018年4月1日に施行されます。

3 農用地の土壌汚染対策

基準値以上検出等地域の累計面積は、2016年度末時点で7,592haであり、このうち、対策地域の指定がなされた地域の累計面積は6,609haになります。また、対策事業等(県単独事業、転用を含む)が完了している地域は7,055haあり、基準値以上検出等地域の面積の92.9%になります。