環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成30年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第3章>第3節 国際的取組の推進

第3節 国際的取組の推進

1 3R国際協力の推進と我が国循環産業の海外展開の支援

地球規模での循環型社会づくりと、我が国の循環産業の海外展開を通じた活性化を図るためには、国、地方公共団体、民間レベル、市民レベル等の多様な主体同士での連携に基づく重層的なネットワークを形成する必要があります。多国間協力について、アフリカのごみ問題の知見共有と持続可能な開発目標(SDGs)達成促進等を目的とした「アフリカのきれいな街プラットフォーム」を2017年4月に独立行政法人国際協力機構(JICA)等と共に設立しました。アジア各国に適合した廃棄物・リサイクル制度や有害廃棄物等の環境上適正な管理(ESM)の定着のため、JICAでは、アジア太平洋諸国のうち、ベトナム、インドネシア、マレーシア、スリランカ、大洋州について、技術協力等により廃棄物管理や循環型社会の形成を支援しました。またODA対象国からの研修員受入れを実施しました。

我が国の廃棄物分野の経験や技術を活かした、廃棄物発電ガイドラインの策定などアジア各国の廃棄物関連制度整備と、我が国循環産業の海外展開を戦略的にパッケージとして推進しています。我が国循環産業の戦略的国際展開・育成事業等では、海外展開を行う事業者の支援を2017年度に13件実施しました。2011年度から2016年度までの支援の結果、2017年12月時点で商用運転が開始した件数が4件、契約、特別目的会社(SPC)・合弁企業設立、MOU(覚書)締結、入札まで至っている(準備中含む)件数が9件、二国間オフセット・クレジット制度(JCM)や他省庁支援事業等の他事業に発展した件数が4件という成果を上げています。また、我が国企業によるアジア等でのリサイクルビジネスについては、3件の実施可能性調査を新たに実施しました。さらに、現地ニーズに合致したリサイクル技術・システムの確立に係る研究開発・実証事業として、2012年度からの継続案件1件、2013年度からの継続案件1件を実施しました。また、2017年度は、NEDOで実施中のアジア省エネルギー型資源循環制度導入実証事業において、海外案件を2件採択しました。

各国別でも様々な取組を行っています。

インドネシアにおいては、2017年1月に「廃棄物発電導入を包括的にサポートする支援プログラム」を提案し、本プログラムに基づき第1回日インドネシア廃棄物発電推進合同委員会を2017年9月にジャカルタで開催するとともに、11月末にはインドネシアの市長級を招聘し訪日研修を行いました。

フィリピンにおいては、廃棄物発電推進のための合同ワークショップを2017年9月にケソンで開催しました。また、11月には廃棄物分野における第3回日比環境政策対話を実施し、廃棄物発電のモデル地区の追加等を行いました。

アジア地域等の途上国における公衆衛生の向上、水環境の保全に向けては、浄化槽等の日本発の優れたし尿処理技術の国際展開を実施しています。2017年度は、第5回アジアにおける分散型汚水処理に関するワークショップを2017年12月にミャンマーで開催しました。

国際的な活動に積極的に参画し、貢献することも重要です。2017年7月のハンブルクサミットでは、G20各国の資源効率性の向上を目指して情報交換を行う「G20資源効率性対話」が初めて設立されました。その第1回会合はドイツで11月に開催され、我が国からも参加しました。国連環境計画(UNEP)国際資源パネルについては、環境省は2017年6月にフィンランドのヘルシンキで開催された第20回会合及び2017年11月にペルーのリマで開催された第21回会合に参加し、積極的に議論に参加しました。今後も毎年複数の報告書の公表が予定されるなど、UNEP国際資源パネルの活動は着実に進捗しています。

外務省及び環境省は、我が国に誘致したUNEP国際環境技術センター(IETC)の運営経費を拠出しています。IETCは、2016年の国連環境総会決議(UNEA2/7)で廃棄物管理の世界的な拠点として位置付けられ、主に廃棄物管理を対象に、開発途上国等に対し、研修及びコンサルティング業務の提供、調査、関連情報の蓄積及び普及等を実施しています。

OECDについては、2017年 12月にフランスのパリで開催されたOECD資源生産性・廃棄物作業部会第10回会合へ参加し、我が国の経験や取組の発信を行いました。

SDGsが2015年9月に国連サミットにおいて採択されましたが、その中で、世界全体で、資源効率性の向上や3Rと同様の取組を進めること及び持続可能な生産消費形態の確保をすることがゴールとなっています。このようなゴールの下、2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たり食品廃棄物を半減させるなど、3Rの推進や資源効率の向上に関するターゲットが盛り込まれました。

バーゼル条約等に関わる取組も、各省連携の下で行っています。環境省は、ストックホルム条約(以下「POPs条約」という。)において考慮することとされているPOPs廃棄物の環境上適正な管理に関する技術ガイドラインのうち、ポリ塩化ナフタレン(PCN)廃棄物に関するガイドラインの策定作業を主導するとともに、我が国のPCN廃棄物等の処理技術等に関する知見を適切に反映、他のPOPs廃棄物ガイドラインの策定又は改訂作業も含め、国際的な議論の進展に貢献しました。また、バーゼル条約第12回締約国会議において暫定採択された「電気電子機器廃棄物及び使用済電気電子機器の越境移動(特に廃棄物と非廃棄物の識別)に関する技術ガイドライン」の今後の正式採択に向けて、締約国会議や専門家会合の場における議論に積極的に参加しました。

バーゼル条約、国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続に関するロッテルダム条約(PIC条約)、POPs条約の3条約に、2013年に採択された水俣条約を加えた4条約の連携強化に係る活動も推進しました。水銀廃棄物の環境上適正な管理に関する技術ガイドラインなど、バーゼル条約における取組で得られた知見は、水俣条約の実施に活用できることから、特にバーゼル条約と水俣条約の連携強化に取り組みました。

2 循環資源の輸出入に係る対応

地方環境事務所において廃棄物等の不法輸出入の監視強化のための取組を関係省庁と連携して行うなど、廃棄物等の不法輸出入防止に関する水際対策に積極的に取り組むとともに、このための国際的な連携強化を図るため、2017年11月に、ベトナムでアジア太平洋地域の11の国と地域及び関係国際機関の参加を得て、有害廃棄物の不法輸出入防止に関するアジアネットワークワークショップを開催しました。さらに、循環資源の越境移動をめぐり近年生じている課題に対応し、適正な資源循環の実現に向けた今後の取組の在り方等について検討を行い、特定有害廃棄物等の輸出規制の適正化を図るため、雑品スクラップ等の規制対象物の範囲を明確化すること、輸出先国において条約上の有害廃棄物とされている物を規制対象とすること、輸出先の環境汚染防止措置について環境大臣が確認する事項を明確化すること、再生利用等事業者の認定制度の創設により、特定有害廃棄物等の輸入に係る手続の簡素化することなどを内容とする特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律の一部を改正する法律 (平成29年法律第62号)が第193回国会において成立し、2018年10月1日から施行されることとなりました。

そのほか、港湾における循環資源の取扱いにおいては、循環資源の積替・保管施設等が活用されました。

3 災害廃棄物対策に係る国際支援

近年、世界各国において自然災害が頻発化・激甚化しています。災害大国である日本が蓄積してきた災害対応のノウハウや経験の供与は、アジア・太平洋地域のような災害が頻発する地域においても有効です。そこで、環境省では、日本の過去の災害による経験、知見を活かした国際支援の一環として、2015年に大地震が発生したネパール国に対して、環境省職員や専門家を派遣し、倒壊した家屋等により発生した大量の災害廃棄物の適正かつ迅速な処理を行うための技術支援を実施してきました。2017年には災害廃棄物の処理完了に向けて、廃棄物処理推進協議会をネパール国と共催するとともに、現地調査を行うなど、首都カトマンズの災害廃棄物処理を中心に技術的な支援を行いました。カトマンズの災害廃棄物は2017年7月に処理を完了しました。さらに、環境省ではこうした国際的な支援の一環として、アジア・太平洋地域において災害廃棄物が適正かつ迅速に処理が行われるよう、同地域向けの災害廃棄物対策ガイドラインの策定に向けて検討しました。

2015年4月に行われた第18回日中韓三カ国環境大臣会合において締結された共同コミュニケに基づき、2017年12月にフォローアップ会議を開催し、大地震等災害時の廃棄物対策等における経験や政策の共有及び意見交換を行いました。