環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成29年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策第6章>第8節 環境保健対策、公害紛争処理等及び環境犯罪対策

第8節 環境保健対策、公害紛争処理等及び環境犯罪対策

公害に係る健康被害については、予防のための措置を講じ、被害者の発生を未然に防止するとともに、公害健康被害の補償等に関する法律(昭和48年法律第111号。以下「公害健康被害補償法」という。)の被認定者に対しては、汚染者負担の原則を踏まえて迅速かつ公正な保護及び健康の確保を図ります。

1 健康被害の救済及び予防

(1)公害健康被害補償及び予防
ア 公害健康被害の補償等に関する法律の適切な運用

(ア)補償給付等の実施

被認定者に関する補償給付については、労働者の平均賃金の動向等を踏まえて必要な給付額の改定を行うとともに、被認定者の健康の回復等を図るため、公害保健福祉事業を引き続き実施します。

(イ)公害健康被害予防事業の実施

独立行政法人環境再生保全機構において、公害健康被害予防基金を基に、調査研究、知識の普及及び研修の各事業を直接行うとともに、地方公共団体が旧第一種地域等を対象に行う計画作成及び健康相談、健康診査、機能訓練、施設等整備の各事業に対して助成金の交付を行います。

(ウ)費用負担

旧第一種地域に係る補償給付額(公害保健福祉事業に係る原因者負担分を含む)の所要額は、2017年度において約411億円と見込まれており、これらの費用を賄うため、工場・事業場分については汚染負荷量賦課金を徴収し、自動車分については自動車重量税収見込額の一部に相当する額を引き当てます。

イ 水俣病対策の推進

水俣病対策については、水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法(平成21年法律第81号)等に基づく救済措置のみで終わるものではなく、引き続き、その解決に向けて、公害健康被害補償法に基づく認定患者の患者の方の補償に万全を期すとともに、高齢化が進む胎児性患者やその家族の方等関係の方々が地域社会の中で安心して暮らしていけるよう、水俣病発生地域における医療・福祉対策の充実を図りつつ、水俣病問題解決のために地域のきずなを修復する再生・融和(もやい直し)や、環境保全を通じた地域の振興等の取組を加速させることとしています。

(2)石綿健康被害の救済

石綿(アスベスト)による健康被害については、石綿による健康被害の救済に関する法律(平成18年法律第4号)に基づき、引き続き、被害者及びその遺族の迅速な救済を図ります。また、2016年12月に取りまとめられた中央環境審議会環境保健部会石綿健康被害救済小委員会の報告書を踏まえ、今後、石綿健康被害救済制度の被認定者の介護等の実態調査や更なる制度周知等、必要な調査や措置を講じることとしています。

(3)環境保健に関する調査研究等
ア 環境保健施策基礎調査等

(ア)大気汚染と呼吸器疾患に係る調査研究

大気汚染と健康状態との関係について、引き続き環境保健サーベイランス調査を行います。また、独立行政法人環境再生保全機構においても、大気汚染の影響による健康被害の予防に関する調査研究を引き続き行っていきます。

(イ)環境要因による健康影響に関する調査研究等

熱中症に関しては、関係省庁の緊密な連携において、対策に取り組んでいきます。環境省としては、予防・対処法の普及啓発等を推進するため、暑さ指数(WBGT)の情報提供、「熱中症環境保健マニュアル」等の配布、イベントや報道機関向け勉強会の開催等を実施していきます。また、外国人に対する普及啓発手法や夏季の大規模なイベント等における熱中症対策について検討を行います。

花粉症に関しては、関係省庁が協力して対策に取り組んでいきます。環境省では、花粉自動計測器の適切な維持管理を行うとともに、花粉観測システム(はなこさん)を活用し、花粉飛散情報の迅速かつ正確な提供に努めます。このほか、黄砂の健康影響に関する調査研究等を進めます。

イ カドミウム環境汚染地域住民健康調査

カドミウム汚染地域住民の保健管理等、今後の環境保健対策に資するため、神通川流域住民健康調査を引き続き実施します。

ウ 重金属等の健康影響に関する総合研究

水銀やカドミウム等の重金属等の健康影響に関して、科学的な知見を得るために調査研究を実施します。

エ 石綿による健康被害に関する調査等

健康管理に係る試行調査、石綿繊維計測体制整備事業、中皮腫登録事業、石綿関連疾患に係る医学的所見等の解析調査、診断支援等事業及び諸外国の制度に関する調査等を引き続き実施します。

2 東京電力福島第一原子力発電所事故による放射線に係る住民の健康管理・健康不安対策

引き続き、福島県の県民健康調査「甲状腺検査」の充実やリスクコミュニケーション事業、福島県及び福島近隣県における疾病罹患動向の把握等の調査研究の継続・充実に取り組むなど、必要な施策を実施します。

3 公害紛争処理等

(1)公害紛争処理

公害等調整委員会では、地方在住者の負担を軽減するために当事者双方の主張や立証を聴取する期日を現地開催し、迅速かつ適正に事件を処理するために調査を適時適切に実施し、都道府県公害審査会等との連携を強化するなど、国民に身近で効率的な公害紛争処理制度の活発な運用を進めます。

(2)公害苦情処理

地方公共団体の公害苦情処理事務が適切に運営されるよう、苦情の受付及び処理の実態を把握するための「公害苦情調査」等を行います。

4 環境犯罪対策

関係行政部局との人的交流や情報交換を行うなどし、早期発見・早期検挙による環境犯罪の抑止を推進します。