環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策第3章>第2節 国際的取組の推進

第2節 国際的取組の推進

1 3R国際協力の推進と我が国循環産業の海外展開の支援

 アジア太平洋諸国において3R関連の事業形成や政策立案を促進するため、我が国はアジア諸国における3Rの戦略的実施支援事業として国際機関への拠出を今後も引き続き行うほか、3Rや資源循環についての課題や進捗、データ等を情報収集し、「アジア太平洋3R白書」として整備していくこととしています。また、「アジア太平洋3R推進フォーラム」等により、アジア太平洋諸国における3Rの推進に向けた政策対話を進め、更なる合意形成を目指していきます。さらに、2016年(平成28年)にはオーストラリアで、「アジア太平洋3R推進フォーラム第7回会合」を開催します。

 特にアジア各国に適合した廃棄物・リサイクル制度や有害廃棄物等の環境上適正な管理(ESM)の定着のため、独立行政法人国際協力機構(JICA)においては、アジア太平洋諸国のうち、ベトナム、インドネシア、マレーシア、パキスタン、スリランカ、大洋州について、技術協力等により廃棄物管理や循環型社会の形成を支援します。また政府開発援助(ODA)対象国からの研修員受入れを実施します。

 また、我が国の優れたインフラ関連産業の国際展開の支援も引き続き行います。我が国循環産業の戦略的国際展開・育成事業について、平成28年度は平成25年度までの三年間の事業成果を取りまとめ、課題抽出と支援策の改善を行う拡充期の最終年度として、さらなる海外展開の促進に向けたステップアップを目指し取組の充実を図るとともに、次期に向けた課題抽出と支援策の改善を検討していくこととしています。さらに、我が国企業によるアジア等でのリサイクルビジネスの事業実施可能性調査の継続や個別案件のフォローアップ、また、マスタープランや都市計画段階へのコミット等により、事業化を促進していきます。同時に、我が国のリサイクル関連企業が進出しやすい土壌の形成のため、我が国の自治体が持つ廃棄物処理・リサイクルに関する経験・ノウハウを活用し、相手国の自治体・政府に対して制度設計・整備・運用の支援等を実施していきます。また、現地ニーズに合致したリサイクル技術・システムの確立に係る研究開発・実証事業については、引き続き事業を継続していきます。

 アジア地域等の途上国における公衆衛生の向上、水環境の保全に向けては、JICAや日本サニテーションコンソーシアム(JSC)等と連携しながら、浄化槽等の日本発の優れたし尿処理技術の情報発信や普及促進を図り、持続可能な開発目標(SDGs)の達成への貢献を目指します。

 同時に、国際的な活動への参画も引き続き行います。アジアを中心とした経済成長と人口増加に伴って、世界的に廃棄物の発生量が増大し、質も多様化する中で、アジアは今後の世界の資源利用に大きな影響を与えると考えられるため、国連環境計画(UNEP)での研究対象をよりアジアに向けさせる必要があります。今後は、UNEP国際資源パネルへの支援として、引き続き、我が国から専門家の派遣を行うとともに、UNEP国際資源パネルにおけるアジア出身のメンバーの増員等を通じ、アジアへUNEP国際資源パネルの関心を誘導していくことが課題です。加えて、我が国が誘致したUNEP国際環境技術センター(UNEP/IETC)の活動の支援を通じ、国連を始めとする国際社会における我が国の環境政策・技術の普及に引き続き努めます。

 また、経済協力開発機構(OECD)資源生産性・廃棄物作業部会には、今後も引き続き参画し、調査・研究の推進を図っていくほか、2014年(平成26年)に東京で開催された環境に関するグローバル・フォーラムでの議論を踏まえ、OECD資源生産性・廃棄物作業部会にて、拡大生産者責任に関する情報を取りまとめていきます。

 さらに、有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約(以下「バーゼル条約」という。)等に関わる取組も引き続き行います。

 バーゼル条約においては、水銀廃棄物及びPOPs(残留性有機汚染物質)廃棄物の環境上適正な管理について、PCN(ポリ塩化ナフタレン)廃棄物の環境上適正な管理に関する技術ガイドラインの策定作業を主導するほか、我が国の処理技術等に関する知見を適切にインプットすることで、引き続き国際的な議論の進展に積極的に貢献していきます。また、同条約第12回締約国会議において採択された電気電子機器廃棄物及び使用済電気電子機器の越境移動(特に、廃棄物と非廃棄物の識別)に関する技術ガイドラインについても、2017年(平成29年)の第13回締約国会議において技術的事項の改訂が予定されていることから、同締約国会議に向けた議論に積極的に貢献していきます。

 同時に、バーゼル条約、国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続に関するロッテルダム条約(PIC条約)、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)の3条約に、2013年(平成25年)に採択された水銀に関する水俣条約(以下「水俣条約」という。)を加えた、4条約の連携強化に係る活動を引き続き推進していきます。バーゼル条約で採択された水銀廃棄物の環境上適正な管理に関する技術ガイドラインは水俣条約の実施に活用できることから、特にこれら2条約についての連携強化に引き続き取り組みます。

 「国連持続可能な開発のための教育(ESD)の10年」後の取組については、第6章第5節6を参照。

2 循環資源の輸出入に係る対応

 有害廃棄物の不法輸出入防止に関するアジアネットワーク等を通じて、アジア太平洋地域の関係国・関係国際機関との連携強化に、引き続き取り組みます。また、税関等とも協力して、廃棄物等の不法輸出の防止のための水際対策の強化を進めていきます。さらに、循環資源の越境移動をめぐり近年生じている課題に適切に対応するための取組について、引き続き検討を進めます。

 さらに、国際的な循環資源の移動に当たっては、玄関口としての港湾が果たす役割の重要性に鑑み、円滑な資源輸送に必要な港湾施設の整備や循環資源の受入体制の確保を引き続き図っていきます。