環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部パート1>第2章 地球温暖化対策に関する我が国の新たなステージ>第1節 我が国の地球温暖化対策の経緯と中期削減目標

第2章 地球温暖化対策に関する我が国の新たなステージ

 第1章で見たように、COP21のパリ協定の採択により、先進国・途上国という二分論を超えた全ての国の参加、温室効果ガスの削減目標の5年ごとの提出・更新、適応計画プロセスや行動の実施等が新たな枠組みに反映され、地球温暖化対策は国際的に新しいステージに入りました。これに呼応して、我が国も地球温暖化対策の新しいステージに入ることとなります。

 我が国は、COP21に向けて提出した「日本の約束草案」の中で、我が国の温室効果ガス排出量の中期削減目標については、国内の排出削減・吸収量の確保により、温室効果ガス排出量を2030年度(平成42年度)に2013年度(平成25年度)比マイナス26.0%(2005年度(平成17年度)比マイナス25.4%)の水準とすることとしています。また、平成24年4月27日に閣議決定した第四次環境基本計画では、「長期的な目標として2050年(平成62年)までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す」こととしており、その推進を図っているところです。パリ協定においては、産業革命以降の世界の平均気温上昇を2℃よりも十分下方に抑えるとの目的及び1.5℃に抑える努力の追及や、この目的を達成するために今世紀後半の温室効果ガスの人為的な排出と吸収を均衡させるよう、世界の排出量を早急にピークアウトし、その後急激に削減することが世界的な目標として設定されました。我が国は、こうしたパリ協定を踏まえ、全ての主要国が参加する公平かつ実効性ある国際枠組みの下、主要排出国がその能力に応じた排出削減に取り組むよう国際社会を主導し、地球温暖化対策と経済成長を両立させながら、長期的目標として2050年(平成62年)までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指すとしています。しかし、このような大幅な排出削減は、従来の取組の延長では実現が困難であるため、抜本的排出削減を可能とする革新的技術の開発・普及等、イノベーションによる解決を最大限に追求するとともに、国内投資を促し、国際競争力を高め、国民に広く知恵を求めつつ、長期的、戦略的な取組の中で大幅な排出削減を目指し、また、世界全体での削減にも貢献していくこととしています。私たちのあらゆる社会・経済活動は、温室効果ガスの排出と関わりがあります。このため、地球温暖化対策の推進に当たっては、国、地方公共団体、事業者、国民等、あらゆる主体が温室効果ガスの排出を自分ごととして捉え、その削減に向けた取組を積極的に行っていく必要があります。

第1節 我が国の地球温暖化対策の経緯と中期削減目標

1 我が国の地球温暖化対策の経緯

 1992年(平成4年)に採択された気候変動枠組条約に先立ち、我が国は1990年(平成2年)に「地球温暖化防止行動計画」を策定し、その対策を進めてきました。その後、1997年(平成9年)のCOP3で京都議定書が採択され、我が国は2008年(平成20年)~2012年(平成24年)に1990年(平成2年)比で6%の温室効果ガス排出削減を約束しました。これを受け、1998年(平成10年)6月に、政府の地球温暖化対策推進本部において、「地球温暖化対策推進大綱」を決定したほか、同年に国、地方公共団体、事業者、国民が一体となって対策に取り組むための枠組みである地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号。以下「地球温暖化対策推進法」という。)を制定しました。法的拘束力を持つ京都議定書の約束を確実に達成するために、同法に基づき、2005年(平成17年)4月に京都議定書目標達成計画を閣議決定し、総合的かつ計画的な対策を講じてきました。この結果、第一約束期間中の5か年平均の総排出量は12億7,800万トン(1990年(平成2年)比1.4%増)、森林等吸収源及び京都メカニズムクレジットを加味すると、1990年(平成2年)比8.7%減となり、京都議定書の目標(基準年比6%減)は達成されました。

 京都議定書第一約束期間以降(2013年(平成25年)以降)も地球温暖化対策を引き続き推進するため、平成25年に地球温暖化対策推進法の一部を改正し、京都議定書目標達成計画に代わる我が国の地球温暖化対策の総合的かつ計画的な推進を図るための計画として、「地球温暖化対策計画」を策定することが規定されました。また、2010年(平成22年)COP16で採択されたカンクン合意に基づき、我が国の2020年度(平成32年度)における温室効果ガスの排出抑制・吸収の量に関する目標として、2005年度(平成17年度)を基準として3.8%削減することを、2013年(平成25年)のCOP19において表明しました。

2 我が国の2030年度の中期削減目標

 2020年(平成32年)以降の国際枠組みの在り方に関し、2013年(平成25年)のCOP19決定では、全ての国に対し、自国が決定する貢献案(INDC)のための国内準備を開始し、COP21に十分先立って示すことが要請されました。これに対応して、平成27年7月17日に地球温暖化対策推進本部において、我が国は2030年度(平成42年度)の中期削減目標を含む「日本の約束草案」を決定し、同日付けで気候変動枠組条約事務局に提出しました。

 我が国の2030年度(平成42年度)の中期削減目標は、「国内の排出削減・吸収量の確保により、温室効果ガス排出量を2030年度(平成42年度)に2013年度(平成25年度)比マイナス26.0%(2005年度(平成17年度)比マイナス25.4%)の水準にすること」を目標としており、この内訳は表2-1-1のとおりです。この目標は、エネルギーミックスと整合的なものとなるよう、技術的制約及びコスト面の課題等を十分に考慮した裏付けのある対策・施策や技術の積み上げによる実現可能な削減目標です。


表2-1-1 我が国のINDCにおける各温室効果ガスの排出量の目安(上)及び目標(中及び下)

 平成25年の我が国の温室効果ガスの排出の状況については、国内総生産(GDP)当たりの温室効果ガス排出量は0.29kg/米ドル、人口一人当たりの排出量は二酸化炭素(CO2)換算で11トン/人であり、いずれも既に先進国で最高水準の効率となっています。我が国のINDCは、GDP当たり排出量を4割以上、一人当たり排出量を約2割改善することで、世界最高水準を維持するものであり、国際的にも遜色のない野心的な目標となっています。また、IPCC第5次評価報告書で示された、2℃目標達成のための2050年(平成62年)までの長期的な温室効果ガス排出削減に向けた排出経路や、我が国が掲げる「2050年(平成62年)世界半減、先進国全体80%減」という目標に整合的なものです。