ア 研究開発の総合的推進
科学技術基本計画に基づき、持続可能な社会の構築に資する観点及び環境と経済の統合的向上に資する観点から、我が国の環境問題への対応及び国際社会への貢献に資する研究開発を推進します。主な施策例は表6-3-1のとおりです。
また、「環境研究・環境技術開発の推進戦略」の取組状況のフォローアップを引き続き行い、研究・技術開発を効果的に推進します。
イ 環境省関連試験研究機関の整備と研究の推進
(ア)独立行政法人国立環境研究所
独立行政法人国立環境研究所では、環境大臣が定めた第3期中期目標(平成23~27年度)と第3期中期計画に基づき、組織的に集中して研究展開を図る課題対応型研究など、環境研究の中核的機関として国内外の関係機関とも連携しつつ環境研究を推進します。さらに、東日本大震災からの復旧・復興に貢献するため、放射性物質・災害と環境に関する研究を行います。また、適切な環境情報の提供を進めます。
(イ)国立水俣病総合研究センター
国立水俣病総合研究センターでは、国の直轄研究機関としての使命を達成するため平成22年度に策定した「中期計画2010」の4つの重点分野について、引き続き研究及び業務を積極的に推進します。特に、地元医療機関との共同研究による脳磁計(MEG)・磁気共鳴画像診断装置(MRI)を活用した臨床研究、妊婦・胎児のメチル水銀のばく露評価に関する研究、国内外諸機関との共同による環境中の水銀観測及び水俣病発生地域の再生・振興に関する調査・研究を進めます。また、国際・総合研究部に水銀分析技術研究室を創設し、水銀分析技術の向上・普及を図り、新しい水銀分析法の開発を進めます。水俣病に関する情報収集機能をもつ水俣病情報センターについては、歴史的資料等保有機関として適切な情報収集及び情報提供を実施します。
ウ 各研究開発主体による研究の振興等
文部科学省においては、先進環境材料分野、植物科学分野、環境情報分野、北極気候変動分野において大学等のネットワークを構築し、組織横断的な教育・研究活動や施設・設備の共同利用、産学連携プラットフォームの構築等を引き続き推進していきます。大学共同利用機関法人人間文化研究機構総合地球環境学研究所が実施する人文・社会科学から自然科学までの幅広い学問分野を総合化する研究プロジェクトや科学研究費助成事業による研究助成など、大学等における地球環境問題に関連する幅広い学術研究の推進や研究施設・設備の整備・充実への支援を行います。また、戦略的創造研究推進事業等により、環境に関する基礎研究を推進します。
地方公共団体の環境関係試験研究機関は、監視測定、分析、調査、基礎データの収集等を広範に実施するほか、地域固有の環境問題等についての研究活動も活発に推進しています。これらの地方環境関係試験研究機関との緊密な連携を確保するため、地方公共団体環境試験研究機関等所長会議を開催するほか、環境保全・公害防止研究発表会を開催し、研究者間の情報交換の促進を図ります。
環境省に一括計上する平成25年度の関係行政機関の試験研究機関の地球環境保全等に関する研究のうち、公害の防止等に関する各府省の試験研究費では、2府省4試験研究機関等において、中長期にわたる環境モニタリング等に関する研究等、合計4つの試験研究課題を実施します。
「環境研究総合推進費」では、平成25年度から、戦略プロジェクト「持続可能な開発目標とガバナンスに関する総合的研究-地球の限られた資源と環境容量に基づくポスト2015年開発・成長目標の制定と実現へ向けて-」を開始します。
また、地球温暖化の防止に関する研究の中で、各府省が中長期的視点から計画的かつ着実に関係研究機関において実施すべき研究を、「地球環境保全試験研究費」により効果的に進めます。
総務省では、独立行政法人情報通信研究機構等を通じ、電波や光を利用した地球環境観測技術として、人工衛星から地球の降水状態を観測するGPM搭載二周波降水レーダ、同じく人工衛星から地球の雲の状態を観測する雲レーダ、ライダーによる温室効果ガスの高精度観測技術、突発的局所災害の観測及び予測のために必要な次世代ドップラーレーダー技術、風速や大気汚染物質等の環境情報を都市規模で詳細に計測するセンシングネットワーク技術、天候等に左右されずに被災状況把握を可能とするレーダを使用した高精度地表面可視化技術の研究開発等を引き続き実施します。さらに、情報通信ネットワーク設備の大容量化に伴って増大する電力需要を抑制するため、光の属性を極限まで利用するフォトニックネットワーク技術による低消費電力光ネットワークノード技術等、極限光ネットワークシステム技術の研究開発を引き続き推進します。
農林水産省では、国産バイオ燃料の利用促進を図るため、バイオエタノールの生産コストを大幅に削減する技術開発を進めるとともに、農林水産分野における温室効果ガスの排出削減技術・吸収源機能向上技術の開発及び影響評価に基づく地球温暖化の進行に適応した生産安定技術の開発について推進します。さらに、これらの研究開発に必要な生物遺伝資源の収集・保存や特性評価等を推進します。
東京電力福島第一原子力発電所事故の影響を受けた被災地における営農の早期再開のため、高濃度汚染地域における農地土壌除染技術体系の構築・実証、高濃度農地汚染土壌の処分技術の開発、森林から流出する水等に含まれる放射性物質の挙動解明、放射性物質を含む作物等の安全な減容・安定化技術の開発、農作物への放射性物質吸収抑制技術の開発を行います。さらに、消費者に安全な木材製品を供給するため、木材製品、作業環境などに係る放射性物質の調査・分析を行うとともに木材の安全確保のため、効率的な放射性物質の除去・低減のための技術の検証・開発を行います。
経済産業省では、植物機能や微生物機能を活用して工業原料や高機能タンパク質等の高付加価値物質を生産する高度モノづくり技術の開発等を引き続き実施します。また、バイオテクノロジーの適切な産業利用のために、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成15年法律第97号。以下「カルタヘナ法」という。)の適切な施行や、海外の遺伝資源の円滑な利用を促進するため関係者との協議を行う等、事業環境の整備を引き続き実施します。
国土交通省では、地球温暖化対策にも配慮しつつ地域の実情に見合った最適なヒートアイランド対策を検討できるシミュレーション技術の実用化や、地球温暖化対策に資する都市緑化等によるCO2の吸収量算定手法の開発等を引き続き実施します。下水汚泥資源化・先端技術誘導プロジェクト(LOTUS Project)により開発された技術の普及と、下水道革新的技術実証事業(B-DASH)による下水汚泥有効利用の新技術開発を積極的に進めます。また、次世代内航船(スーパーエコシップ)の普及を引き続き図ります。海運からのCO2の排出削減に向け、船舶からのCO2排出規制に関する国際的枠組み作りと民間事業者等が行う先進的な研究開発の支援を一体的に推進し、国際競争力を強化しつつ、CO2排出の大幅な削減対策を実施します。また、船舶の環境負荷低減技術の普及を目指し、独立行政法人海上技術安全研究所を通じて、実海域における省エネ等の運航性能評価を行うためのシミュレーターの開発や設計段階での省エネデバイス等の実海域性能を評価できる手法の開発・研究を行います。さらに、船舶からの大気汚染防止に関する国際規制強化の動向に対応するため、排出ガスに含まれるNOx等を大幅削減する環境にやさしい舶用エンジンの排出ガス後処理装置(SCR触媒)に係る認証方法技術の確立に向けた研究を行います。
地球温暖化対策技術開発・実証研究事業により、引き続き早期に実用化が必要かつ可能な省エネルギー技術・再生可能エネルギー導入技術の開発、主要なステークホルダーの参画を得ながら優良技術を社会に組み込むための実証研究、再生可能エネルギーの導入加速に当たって指摘されている自然環境及び生活環境への悪影響の克服に関する技術開発等を実施します。また、二酸化炭素削減効果の優れた技術の開発実証を強力に推進し、その普及を図ります。
文部科学省では、東日本大震災の被災地の復興と我が国のエネルギー問題の克服に貢献するため、[1]福島県への革新的エネルギー技術研究開発拠点の形成、[2]被災地の大学等研究機関の強みを活かしたクリーンエネルギー技術の研究開発を推進していきます。
また、先端的低炭素化技術開発事業では、抜本的な温室効果ガスの削減を実践するため、従来技術の延長線上にない新たな科学的・技術的知見に基づいた革新的技術の研究開発を、引き続き幅広く公募によりシーズを発掘し、競争的環境下で推進していきます。
経済産業省では、省エネルギー、再生可能エネルギー、クリーンコールテクノロジー及び二酸化炭素回収・貯留(CCS)等の技術開発を引き続き実施します。
環境技術実証事業では、先進的な環境技術の普及に向け、技術の実証やその結果の公表等を引き続き実施します。
地球環境保全等試験研究費や環境研究総合推進費により実施された研究成果について、引き続き、広く行政機関、研究機関、民間企業、民間団体等に紹介し、その普及を図ります。
気候の観測・監視については、世界気象機関(WMO)及び全球気候観測システム(GCOS)の枠組みに基づき、地上及び高層における定常観測を引き続き推進するとともに、その推進に向けた国際的な取組に積極的に参画します。また、温室効果ガスなど大気環境の観測については、独立行政法人国立環境研究所及び気象庁が、温室効果ガスの測定を行います。この他、独立行政法人国立環境研究所では、沖縄県波照間島等で温室効果ガスの測定を行うほか、航空機・船舶を利用した大気中及び海洋表層における温室効果ガスの測定や陸域生態系における二酸化炭素収支の測定を行います。気象庁ではWMOの全球大気監視(GAW)計画の一環として、温室効果ガス、CFC等オゾン層破壊物質、オゾン層や有害紫外線等の定常観測を東京都南鳥島等で引き続き実施するとともに、日本周辺海域及び北西太平洋海域における洋上大気・海水中の二酸化炭素等の定期観測を実施します。さらに大気混濁度の観測や、北西太平洋上空の温室効果ガスの航空機による定期観測を継続します。また、黄砂に関する情報及び有害紫外線に関する情報を引き続き発表します。
衛星による地球環境観測については、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)による観測を行い、世界の温室効果ガスの濃度分布や月別・地域別の二酸化炭素の吸収・排出量のより正確な把握等を目指すとともに、観測対象の気体を追加し、搭載するセンサーの観測精度を高めた後継機の開発を進めます。そのほかにも、降水、雲・エーロゾル、植生等の地球環境に関する全球の多様なデータの収集を行う衛星の研究開発やデータ提供、世界に先駆けて地球観測機能を強化した「静止地球環境観測衛星」としての次期静止気象衛星ひまわりの整備等、人工衛星による観測・監視技術の開発利用を一層推進します。また、海洋地球研究船「みらい」等を用いた観測研究、観測技術の研究開発を引き続き推進し、地球規模の諸現象の解明・予測等の研究開発を推進します。さらに、地球規模の高度海洋監視システムを構築するArgo計画を引き続き推進します。
第54次南極地域観測隊が昭和基地を中心に、海洋、気象、電離層等の基本観測のほか、南極地域観測第VIII期計画に掲げた「南極域から探る地球温暖化」をメインテーマとして、各種研究観測を実施します。
また、気候変動を解明する鍵となる北極研究について、研究基盤の整備や、コンソーシアムの創設による研究者の連携強化、モデル研究者と観測研究者の協働促進を実施します。
地球温暖化対策に必要な観測を、統合的・効率的なものとするため、環境省と気象庁が共同で運営する「地球観測連携拠点(温暖化分野)」の活動を通じて、関係府省・機関間の観測の連携を推進します。また、温暖化影響に対して脆弱な東アジアの途上国における監視・影響評価を推進することにより、途上国の取組に寄与し、気候変動対策に係る将来の国際的な枠組みの構築に貢献します。
地球環境変動予測研究については、引き続き、世界最高水準の性能を有するスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」を活用した地球温暖化予測モデル開発等、及び全球予測結果の高精細化や不確実性の低減等のための研究開発を推進します。また、観測・予測データの収集からそれらのデータの解析処理を行うための共通プラットフォームの整備・運用を実施していきます。さらに、具体的な適応策の提示までを統一的・一体的に推進することにより、温暖化に伴う環境変化への適応策案に貢献する研究開発を推進していきます。
地球温暖化の原因物質や直接的な影響を的確に把握する包括的な観測態勢整備のため、「地球環境保全試験研究費」において「地球観測モニタリング支援型」の課題を継続して実施します。全国の気象官署における観測開始以降の観測資料の利用を促進するなど、地球温暖化の状況等に関する調査研究を推進し、地球温暖化予測の強化を図ります。また、国内の影響・リスク評価研究のさらなる進展のため、日本付近の詳細な気候変化の予測精度を高めるための技術開発を引き続き推進します。また、GPS装置を備えた検潮所において精密型水位計による地球温暖化に伴う海面水位上昇の監視を行い、海面水位監視情報の提供を継続します。
さらなる環境測定分析の精度向上等を目指して、引き続き地方公共団体及び民間の環境測定分析機関を対象とした環境測定分析統一精度管理調査を実施します。
「微生物によるバイオレメディエーション利用指針」に基づき、事業者から提出された浄化事業計画につき、同指針への適合に関する審査を行う等、引き続き適切な制度の運用を行います。
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