環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成24年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策第3章>第2節 循環型社会を形成する基盤整備

第2節 循環型社会を形成する基盤整備

(1)財政措置等

 循環型社会基本法では、政府は、循環型社会の形成に関する施策を実施するために必要な財政上の措置等を講じることとしています。国の各府省の予算のうち、「循環型社会」の形成を推進するための経費は、平成24年度当初予算額で約5,521億9,507万円となっています(表3-2-1)。


表3-2-1 主な循環型社会形成推進基本法関係予算

 さらに、石綿の発生及び飛散の防止、適正な処理等のために必要な設備資金等に係る低利施策を引き続き講じます。

 また、平成24年度税制改正において、ごみ処理施設、一般廃棄物最終処分場、指定物等回収設備に係る特例措置の適用期限を延長することとしています。

(2)循環型社会ビジネスの振興

 事業者が、再生資源の利用率目標の達成及び再生資源の新規用途の開発などの、個別品目の状況に応じた再生利用能力の向上を図ることを促進します。また、再生資源やリサイクル製品は、初めて使用される資源やこれによる製品に比べて割高になりがちであることも踏まえつつ、信頼性を確保し、国、地方公共団体、事業者、国民すべての主体がリサイクル製品を積極的に利用することなどにより、リサイクル製品の利用・市場の育成等を推進します。

 また、循環型社会の形成の礎となる産業廃棄物処理業の優良化を推進するため、優良産廃処理業者認定制度を活用して、適正処理に意欲的な処理業者が市場で適切に評価され、産業廃棄物の排出事業者から積極的に処理を委託されるような仕組みづくりの検討を行っていきます。そのほか、環境報告ガイドラインの改訂を受けて、その活用・啓発に努め、さらなる環境情報の開示促進と質の向上に向けた取組を進めます。

(3)経済的手法の活用

 多くの人の日常的な活動によって引き起こされている廃棄物問題については、大規模な発生源や行為の規制を中心とする従来の規制的手法による対応では限界がある面もあります。このため、その対策に当たっては、規制的手法、経済的手法、自主的取組などの多様な政策手段を組み合わせ、適切な活用を図っていくことが必要です。

 そのため、廃棄物の有料化に伴うさまざまな問題に関する考え方や、有料化の検討の進め方などについて取りまとめたガイドラインを通じて有料化を行う市町村を支援していきます。

 また、ごみ(一般廃棄物)処理有料化等に関する、現状の把握、優良事例の抽出、課題の検討等を行い、必要な施策及び上記ガイドライン改正の必要性の検討を行います。

(4)教育及び学習の振興、広報活動の充実、民間活動の支援及び人材の育成

 国民に対し3R推進に対する理解と協力を求めるため、関係府省(財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、消費者庁)連携の下、毎年10月を「リデュースリユースリサイクル(3R)推進月間」と定め、引き続き、広く国民に向けて普及啓発活動を実施します。また、3R推進月間の事業の一環として、3Rの推進に貢献している個人、グループ、学校及び特に貢献の認められる事業所等を表彰する「リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰」(リデュース・リユース・リサイクル推進協議会主催)の開催を引き続き後援します。

 文部科学省では、学校における環境教育の推進を図るため、引き続き、環境のための地球学習観測プログラム(GLOBE)協力校の指定を行います。また、文部科学省と環境省の連携・協力の下、「環境教育・環境学習データベース」による情報の提供や「環境教育リーダー研修」を実施するとともに、全国環境学習フェアを開催することとしています。

 経済産業省では、引き続き、普及啓発用DVD「レッツゴー3R」等の貸出等を実施します。

 また、容器包装リサイクル教材等3R教育に資する教材の貸出や関連資料の配布も引き続き実施します。

(5)調査の実施・科学技術の振興

 「環境研究総合推進費」は、平成23年度に「循環型社会形成推進科学研究費」を統合しており、廃棄物に係る諸問題の解決とともに循環型社会の構築を推進するため、科学技術基本計画及び環境研究・環境技術開発の推進戦略に基づき、競争的資金を活用し広く課題を募集し、研究事業及び技術開発事業を実施します。

 また、東日本大震災においては、津波により膨大な量の廃棄物がこれまでにない状態で発生しており、今後の震災に備えても、これらを踏まえて廃棄物の処理計画等を準備することが重要となっていることから、これら災害廃棄物の撤去、処理を進めることに資する研究・技術開発を推進します。

 研究事業については、「3R推進のための研究」、「廃棄物系バイオマス利活用推進のための研究」、「循環型社会構築を目指した社会科学的複合研究」等を重点テーマとして、社会的・政策的必要性に応じた循環型社会形成推進に係る研究を推進します。

 また、これらの実施状況については、平成22年6月に取りまとめられた「環境研究・環境技術開発の推進戦略について」(中央環境審議会答申)に定められたとおり、「重点課題」についての着実なフォローアップを行います。

 技術開発事業については、日系静脈産業メジャーの海外展開に資する次世代廃棄物処理技術開発として、「熱利用の推進に関する技術開発」、「廃棄物の収集から処分に至るまでの低炭素化技術開発」、「廃棄物の処理・リサイクル技術の高度化・低コスト化」を重点テーマとし、途上国でも利用可能な廃棄物処理等に係る技術の開発を図ります。

 公害防止等試験研究費においては、「廃プラスチックのリサイクル過程における有害化学物質の排出挙動と制御に関する研究」を実施します。

 また、建設廃棄物、特に混合廃棄物を構成する各種資材を主対象として、建築物の解体工事等に伴う廃棄物の発生抑制から収集・集積、加工・処理、流通及び再生資材の活用までの各段階が連携し、効果的に資源循環を推進するための技術体系並びにその普及基盤の開発を行います。

 また、3Rに配慮した、製品の長寿命化やリサイクルが簡単な製品の設計・製造技術の開発として、「元素戦略/希少金属代替材料開発プロジェクト」、「革新的構造材料を用いた新構造システム建築物研究開発」、「希少金属等高効率回収システム開発」、「資源循環実証事業(使用済超硬工具からのタングステンリサイクル技術開発・システム実証)」、「レアアースレアメタル使用量削減・利用部品代替支援事業(平成23年度三次補正予算2次公募)」及び「次世代自動車向け高効率モーター用磁性材料技術開発」等の事業を実施していきます。

 資源制約を克服し、環境と調和した持続的な経済・社会の実現と、安全・安心な国民生活を実現するため、革新的な技術の開発と、その成果の市場化に必要な関連施策(規制改革、標準化等)とを一体的に推進していきます。

 国立環境研究所では、資源循環・廃棄物研究センターを中心に第3期中期計画(計画期間:平成23年度から27年度)に掲げられた重点研究プログラムの一つである「循環型社会研究プログラム」を始めとする調査・研究を推進します。

 また、農林水産省においては、地産地消によるバイオ燃料等の生産を進め、農山漁村における新産業の創出に向け、草本、木質、微細藻類からバイオ燃料等を製造する技術開発等を推進します。

(6)施設整備

 廃棄物の3Rを推進するための目標を設定し、広域的かつ総合的に廃棄物処理・リサイクル施設の整備を推進する「循環型社会形成推進交付金制度」を活用し、地域における循環型社会づくりのための社会資本整備を加速させます。また、東日本大震災における被災地の復旧・復興のため、災害廃棄物の迅速かつ適正な処理を行うために必要な一般廃棄物処理施設(ごみ焼却施設又はし尿処理施設)の整備への交付金による支援や、廃棄物分野における温暖化対策を一層推進するための一般廃棄物処理施設の基幹的設備の改良、高効率ごみ発電設備の導入など、交付金制度の活用による対策を引き続き進めていきます。

 浄化槽においては、単独処理浄化槽の撤去費用に対して助成を行うことで、引き続き単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換を推進します。また、温室効果ガスの削減目標達成のための浄化槽分野におけるCO2削減対策の促進を図るため、低炭素社会対応型浄化槽の整備を引き続き推進していきます。

 また、畜産業において発生する家畜排せつ物等については、家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律(平成11年法律第58号。以下「家畜排せつ物法」という)等に基づき、適正な管理を徹底するとともに、地域における有効利用を促進し、効率的かつ環境保全上適切に循環するシステムを形成するための施設整備等を推進します。

 再資源化施設に関しては、建設廃棄物等の再資源化を促進するため、再資源化施設の稼働状況等に関する情報交換システムの運用を推し進めていくとともに、再資源化施設の立地について、その適正な立地誘導等が図られるよう必要な施策について検討を進めていきます。

 水産物の加工流通過程における排水処理の高度化及び水産加工残さ等のリサイクルの促進に必要な施設整備を推進します。港湾における廃棄物埋立護岸について、東京湾等において整備を行います。

 このほか、資源のリサイクルを促進するため、首都圏の建設発生土を全国の港湾建設資源として広域的に有効利用するプロジェクト(いわゆるスーパーフェニックス)として、平成24年度には小名浜港において建設発生土の受入を実施します。

 最終処分場の確保が特に困難となっている大都市圏のうち、近畿圏においては、大阪湾広域臨海環境整備センターが行う広域処理場(廃棄物埋立護岸、廃棄物受入施設、排水処理施設等)の整備促進及び埋立ての円滑な実施を図ります。また、首都圏をはじめその他の地域において、広域処理場の確保が必要となった際に、関係地方公共団体間に適切な働きかけを講じられるよう、次期広域処理場のあり方についての検討を実施します。

(7)不法投棄等の未然防止・拡大防止及び残存事案対策

 不法投棄等の未然防止・拡大防止対策としては、廃棄物処理法(昭和45年法律第137号)の厳格な適用を図るとともに、引き続き、5月30日から6月5日までを「全国ごみ不法投棄監視ウィーク」として設定し、国と都道府県等とが連携して、不法投棄等の撲滅に向けた普及啓発活動等の取組を一斉に実施します。また、不法投棄等に関する情報を国民から直接受け付ける不法投棄ホットラインの運用及び現地調査や関係法令等に精通した専門家を不法投棄等現場へ派遣し都道府県等による行為者等の責任追及の支援等を行い、不法投棄等の撲滅に向けてさらなる推進を図ります。

 残存事案対策としては、産廃特措法の延長により対応するとともに、引き続き、生活環境保全上の支障等がある事案に対する今後の財政的支援のあり方について検討を進めていきます。

(8)その他の政府の取組

 廃棄物の焼却や埋立てに伴う温室効果ガスについては、平成20年3月に改定された京都議定書目標達成計画に基づき、その発生量の抑制を図ります。

 具体的には、廃棄物等の発生抑制・再使用・再生利用の推進によって廃棄物焼却量や直接埋立量の抑制を図ります。また、化石系資源の使用量の抑制を図るため、廃棄物発電施設や、有機性廃棄物からのメタン回収を高い効率で行う施設に対し補助するなど、廃棄物の焼却に伴って生じる排熱を有効に活用する廃棄物発電・熱利用やバイオマスエネルギーの活用を推進していきます。

 主に民間の廃棄物処理事業者が行う地球温暖化対策に資する高効率の廃棄物発電、廃棄物熱供給施設や廃棄物燃料製造施設等の整備、電動式塵芥収集車の導入を促進させるため、廃棄物エネルギー導入・低炭素化促進事業により当該設備の整備に必要な費用に対して支援を行っていきます。

 木くずなど有機性廃棄物の最終処分場への直接埋立については、温暖化効果の高いメタンを発生することから、できるだけ早期に廃止し、地域の特性に応じて、適切に再生利用等を行っていく必要があります。

 地域における資源循環型経済社会構築の実現に向けて、ゼロ・エミッション構想推進を目的とした全国26か所の「エコタウン事業」認定地域を核に、資源循環の広域リサイクルチェーン構築に向けた取組への支援等を行います。

 また、循環型社会の形成等の観点を踏まえ、加工時のエネルギー消費量が少なく、再生産可能な資源としての特性を有する木材の利用を推進していきます。

 下水道事業において発生する汚泥は、産業廃棄物の総発生量の約19%を占め、下水道の普及に伴いその発生量は年々増加している一方、下水汚泥を受け入れている最終処分場の残余年数は依然として非常に厳しい状況にあり、今後さらなる汚泥の減量化、再生利用に加え、地球温暖化対策の推進も踏まえたエネルギー利用が必要となっています。このような状況を踏まえ、下水汚泥資源化施設の整備の支援、下水道資源の循環利用に係る計画策定の推進、下水汚泥再生利用・エネルギー利用に係る技術開発の促進・普及啓発などに取り組んでいきます。

 シップリサイクル条約の施行を支援するため、わが国主導の下、各種ガイドライン作成を行います。

 国内においては、世界に先駆け、環境に配慮した先進国型のシップリサイクルシステムを構築するため、解体技術手法の調査研究を実施するなどさらなる取組を推進します。

 使用済みFRP船の処理については、平成20年度から全国において(社)日本舟艇工業会が「FRP船リサイクルシステム」の本格運用を開始したため、今後ともリサイクル処理の必要性及びFRP船リサイクルシステムの周知啓発等をおこなうことにより、FRP船のリサイクル処理の普及促進に取り組んでいきます。

 また、環境負荷の低減、環境情報の提供、JISの活用等を念頭におき、消費者等利害関係者からの意見を反映し、規格の制定・改正を行い、JISに対する信頼感に答えていきます。さらに、平成19年7月に策定した「国際標準化アクションプラン」に基づき、わが国のすぐれた環境技術を国際提案し、国際標準化活動に取り組みます。

 バイオマスの活用の推進に関する施策についての基本的な方針、国が達成すべき目標等を定めた「バイオマス活用推進基本計画」(22年12月閣議決定)に基づき、以下の取組を実施します。

ア 国産バイオ燃料の本格的な生産に向け、原料供給から製造、流通まで一体となった取組のほか、食料・飼料供給と両立できる稲わら等のソフトセルロース系原料の収集・運搬からバイオ燃料の製造・利用までの技術を確立する取組を支援します。

イ 地産地消によるバイオ燃料等の生産を進め、農山漁村における新産業の創出に向け、草本、木質、微細藻類からバイオ燃料等を製造する技術開発等を推進します。

 また、平成24年2月に設置された、「バイオマス事業化戦略検討チーム」において、バイオマスの技術開発のロードマップや事業化に向けた戦略を策定します。

 加工時のエネルギー消費量が少ない地域材の利用等を推進するとともに、建設廃棄木材等の廃棄物系の木質資源のうち未利用となっている資源の再使用・再資源化を図るため、木質複合材料等の開発を行います。さらに、家畜排せつ物等有機性資源のたい肥化や再生可能エネルギーとしての利活用などによる循環的利用の促進等を推進します。また、農業集落排水事業において、発生する汚泥の有機肥料等へのリサイクルを推進します。このほか、水産系副産物である貝殻の再資源化により資源の循環的利用を推進します。

 静脈物流の拠点となる港湾を総合静脈物流拠点港リサイクルポート)に指定し、広域的なリサイクル関連施設の臨海部への立地を推進するとともに、循環資源の収集・輸送・処理の総合的な静脈物流拠点を形成し、ネットワーク化を図ります。

 地方公共団体は、循環型社会の形成に関するさまざまな施策を策定・実施する主体です。その施策は当該区域の自然的社会的条件を踏まえて実施されるものであることから、国は、地方公共団体が実施する施策の適切さを確保するために、地方公共団体が施策を実施する際に参考となる基準・指針の設定等、地方公共団体を支援する措置を講じていきます。

 また、地方公共団体が循環型社会の形成に関する施策を講ずるために必要な費用について、交付金、地方公共団体への融資等、必要な財政措置を講じます。

 自治体における小型電子機器等の回収体制の構築や収集運搬等を支援しつつ、関係者間での費用負担や役割分担の設定に必要な情報を収集するため、使用済小型電気電子機器リサイクル推進事業を実施します。

 また、環境省では、リサイクル以上に優先度の高いリユースを促進するため、研究会を開催しながら、市町村とリユース業者等、関係者間の連携による使用済製品等のリユース推進策について検討を行います。

 また、経済産業省と環境省では、レアメタル等のリサイクルシステムを構築するため、平成23年11月より産業構造審議会と中央環境審議会の合同会合において、レアメタル等を多く含む主要製品全般を横断的に対象として、レアメタルのリサイクルを促進するための対応策の検討を開始したところです。平成24年の夏頃を目途に取りまとめを行います。