日本の国立公園と世界自然遺産

日本の国立公園

 日本の国立公園は、日本を代表する自然の風景地として、自然公園法に基づき環境大臣の指定を受け、管理されています。国立公園は、全国で29カ所が指定されており、56カ所ある国定公園、300カ所を超える都道府県立自然公園とともに、日本の自然公園のネットワークをつくり、その中心となっています。国立公園の面積は合計約209万ヘクタールで、日本の国土面積の約5.5%を占めています。国立公園は開発の波から自然を守り、自然とのふれあいの場としてだれもが利用できるところで、年間約4億人が訪れています。


1. 利尻礼文サロベツ国立公園 1. 利尻礼文サロベツ国立公園
  指定:昭和49年9月20日 面積:24,166ha
 日本最北端に位置する国立公園で、海からそそり立つような利尻山や高山植物が咲き乱れる礼文島、湿原植物が豊かなサロベツ原野や稚咲内の砂丘林など変化に富んだ景観が楽しめます。(写真:利尻山)
2. 知床国立公園 2. 知床国立公園
  指定:昭和39年6月1日 面積:38,633ha
 原始性の高い自然を有する国立公園で、オジロワシやシマフクロウ、ヒグマが生息しています。森に囲まれた知床五湖から眺める知床連山の眺めは絶景で、海域は冬に流氷で閉ざされます。世界自然遺産に登録されています。(写真:知床連山、知床五湖)
3. 阿寒国立公園 3. 阿寒国立公園
  指定:昭和9年12月4日 面積:90,481ha
 雌阿寒岳をはじめ複数の火山があります。深い森に囲まれ、マリモが生育する阿寒湖、世界有数の透明度を誇る摩周湖、周囲に強酸性の温泉群のある屈斜路湖などの湖沼の景観が美しい国立公園です。(写真:摩周湖)
4. 釧路湿原国立公園 4. 釧路湿原国立公園
  指定:昭和62年7月31日 面積:26,861ha
 釧路湿原は日本最大の湿原です。周辺の展望台からは、広大な湿原とともに、蛇行する釧路川を見ることができます。タンチョウの繁殖地で、湿原の東側には塘路湖、シラルトロ湖などの湖沼があります。(写真:キラコタン)
5. 大雪山国立公園 5. 大雪山国立公園
  指定:昭和9年12月4日 面積:226,764ha
 北海道の屋根といわれる山岳地帯を含む日本一大きな国立公園です。北海道最高峰の旭岳、十勝岳などの火山群や、石狩岳の雄大な山並みと高山植物が特徴で、ナキウサギの生息地でもあります。(写真:白雲岳)
6. 支笏洞爺国立公園 6. 支笏洞爺国立公園
  指定:昭和24年5月16日 面積:99,473ha
 支笏湖、洞爺湖の二大湖に、羊蹄山や有珠山、昭和新山や樽前山のような新しい火山があり、活発な火山活動で形成された個性的な山岳景観を見ることができます。洞爺湖は北限の不凍湖としても有名です。(写真:洞爺湖)
7. 十和田八幡平国立公園 7. 十和田八幡平国立公園
  指定:昭和11年2月1日 面積:85,551ha
 雄大な十和田湖や奥入瀬、八幡平一帯に広がるアオモリトドマツの森林や湿原など、水と緑の豊かな景観を有する国立公園です。古くからの湯治場も点在し、登山と温泉が楽しめます。(写真:奥入瀬)
8. 陸中海岸国立公園 8. 陸中海岸国立公園
  指定:昭和30年5月2日 面積:12,212ha
 岩手県の久慈海岸から宮城県の気仙沼までの延長約180kmの海岸からなる国立公園です。大断崖がつづくさまは壮観で、海のアルプスともいわれています。ウミネコ、オオミズナギドリなど海鳥の繁殖地にもなっています。(写真:北山崎)
9. 磐梯朝日国立公園 9. 磐梯朝日国立公園
  指定:昭和25年9月5日 面積:186,404ha
 山岳信仰の地として名高い出羽三山、奥深い朝日・飯豊連峰の山々、磐梯山と猪苗代湖をはじめとする大小多数の湖沼がある山と森と湖に恵まれた国立公園です。カモシカやツキノワグマなどが生息しています。(写真:磐梯山)
10. 日光国立公園 10. 日光国立公園
  指定:昭和9年12月4日 面積:114,908ha
 日光東照宮の歴史的建築物、山上の避暑地中禅寺湖畔や戦場ヶ原に代表される奥日光、鬼怒川、塩原の渓谷や那須岳山麓の高原など、多様な表情をあわせもつ国立公園です。(写真:男体山、中禅寺湖)
11. 尾瀬国立公園 11. 尾瀬国立公園
  指定:平成19年8月30日 面積:37,200ha
 ミズバショウなどの湿原植物が豊かな尾瀬ヶ原や田代山山頂に代表される湿原景観、燧ヶ岳や会津駒ヶ岳に代表されるオオシラビソやブナ、ダケカンバといった森林景観が見られます。平成19年に日光国立公園尾瀬地域とその周辺地域をあわせ、新たな国立公園として指定されました。(写真:尾瀬ヶ原)
12. 上信越高原国立公園 12. 上信越高原国立公園
  指定:昭和24年9月7日 面積:188,046ha
 群馬、長野、新潟県にまたがり、日本で2番目に面積の大きい国立公園です。谷川岳など2,000m級の険しい山々や、浅間山、妙高山などの火山が多い一方で、志賀高原、妙高高原、菅平など広々とした高原も所々に見られます。(写真:志賀高原)
13. 秩父多摩甲斐国立公園 13. 秩父多摩甲斐国立公園
  指定:昭和25年7月10日 面積:126,259ha
 雲取山、御岳山など古い地層の山が多く、コメツガやシラビソの自然林が見られます。荒川、千曲川、多摩川の源流域には自然豊かな森林と渓谷があり、絶好の野外レクリエーションの場となっています。御岳山、三峰山は古くからの山岳信仰の地でもあります。(写真:奥秩父)
14. 小笠原国立公園 14. 小笠原国立公園
  指定:昭和47年10月16日 面積:6,629ha
 東京の南方、1,000~1,200kmに浮かぶ小笠原諸島のうち、父島、母島などの大小30余りの島々からなる日本で最も面積が小さい国立公園です。海洋に囲まれているため、オガサワラオオコウモリ、ムニンノボタンなど、固有の動植物が多いことが特徴です。(写真:南島)
15. 富士箱根伊豆国立公園 15. 富士箱根伊豆国立公園
  指定:昭和11年2月1日 面積:121,695ha
 日本の最高峰である富士山とその裾野の富士五湖や青木ヶ原樹海の雄大な景観が特徴で、神山、駒ヶ岳の火山と仙石原、芦ノ湖がつくる箱庭のような景観や伊豆半島の山々と海岸からなる景観もすぐれています。また、伊豆七島は各島特有の自然と景観に恵まれています。(写真:富士山、本栖湖)
16. 中部山岳国立公園 16. 中部山岳国立公園
  指定:昭和9年12月4日 面積:174,323ha
 北アルプスの白馬岳、立山、槍ヶ岳、穂高岳、乗鞍岳など、日本を代表する3,000m級の山々が南北に連なる国立公園です。黒部川や梓川などの河川が作る渓谷や渓流が美しく、弥陀ヶ原、五色ヶ原など所々にお花畑があり、高山植物が咲き乱れます。ライチョウの重要な生息地でもあります。(写真:涸沢)
17. 白山国立公園 17. 白山国立公園
  指定:昭和37年11月12日 面積:47,700ha
 白山は、昔から信仰の山として登山が行なわれ、富士山、立山と並んで日本三霊山の一つに数えられます。高山植物の宝庫として、植物研究の歴史も古く、白山にちなんだ名前を持つ植物が多くあります。(写真:刈込池)
18. 南アルプス国立公園 18. 南アルプス国立公園
  指定:昭和39年6月1日 面積:35,752ha
 山梨、長野、静岡の3県にまたがり、北岳を筆頭に3,000m級の山々が連なる国立公園です。北岳や仙丈ヶ岳には、高山植物のお花畑が見られ、ここにしかない貴重な植物が生育しています。(写真:北岳)
19. 伊勢志摩国立公園 19. 伊勢志摩国立公園
  指定:昭和12年11月20日 面積:55,544ha
 鳥羽湾から的矢湾、英虞湾、五ヶ所湾、贄湾と続く複雑な海岸線と周辺の島々がつくる景観が優美な国立公園です。伊勢神宮は日本の信仰、歴史、文化の上で重要な地であり、神宮の奥山の神宮林には、シイ類とスギ、アカマツが混在する自然林が広がっています。(写真:英虞湾)
20. 吉野熊野国立公園 20. 吉野熊野国立公園
  指定:昭和11年2月1日 面積:59,793ha
 紀伊半島の中央山岳地帯と山間を蛇行して流れる川及び半島南東部の海岸からなる国立公園です。桜と史跡の吉野山、古くから修験道の道場とされてきた大峯山脈や熊野三山が広く知られています。また、尾鷲から潮岬の長い海岸は断崖が数多く、変化に富んだ景観が見られます。(写真:熊野古道)
21. 山陰海岸国立公園 21. 山陰海岸国立公園
  指定:昭和38年7月15日 面積:8,783ha
 奥丹後半島の網野海岸から鳥取砂丘まで、延長約75kmの国立公園で、海水などの浸蝕でつくられた洞門、洞窟が美しい景観を形成しています。鳥取砂丘は起伏量が100mにも達していることが特徴で、絶えず砂が移動する厳しい環境に適応した砂丘独特の動植物が見られます。(写真:鳥取砂丘)
22. 瀬戸内海国立公園 22. 瀬戸内海国立公園
  指定:昭和9年3月16日 面積:66,934ha
 瀬戸内海の島々は、小さなものまで数えると約3,000にもなるといわれ、鷲羽山から眺める備讃諸島など、静かな海と密集する島々からなる景観が特徴です。渋川海岸や慶野松原など砂浜と松が織りなす景観、段々畑など人の生活と自然が一体となった景観も美しい国立公園です。(写真:備讃諸島)
23. 大山隠岐国立公園 23. 大山隠岐国立公園
  指定:昭和11年2月1日 面積:35,053ha
 中国山地最高峰の大山から蒜山までの山岳地帯と隠岐諸島、島根半島海岸部、三瓶山一帯からなる国立公園です。山頂部東側が大きく崩れて荒々しい岩壁となっている大山と、海水などの浸蝕によってできた断崖が連なる隠岐島の景観が代表的です。(写真:大山)
24. 足摺宇和海国立公園 24. 足摺宇和海国立公園
  指定:昭和47年11月10日 面積:11,345ha
 四国の西南端、愛媛県から高知県に位置する国立公園です。南部の足摺岬はスケールの大きな断崖が連なり、北部の宇和海は細かく出入りする海岸線と島々がつくる景観が特徴で、竜串ではサンゴや熱帯魚など色彩豊かな海中景観も楽しめます。(写真:竜串海岸)
25. 西海国立公園 25. 西海国立公園
  指定:昭和30年3月16日 面積:24,646ha
 佐世保の九十九島から平戸島、五島列島を含む国立公園です。大小400に及ぶ島々が特徴で、多数の小島が密集する九十九島や若松瀬戸の景観が代表的です。また、島々には断崖地形が多く、福江島には珍しい火山地形があります。(写真:九十九島)
26. 雲仙天草国立公園 26. 雲仙天草国立公園
  指定:昭和9年3月16日 面積:28,279ha
 島原半島の中央にある雲仙岳周辺と、天草諸島からなる国立公園です。雲仙地域は平成2年に噴火した普賢岳や雲仙温泉地を中心とする避暑地の一つで、天草地域は有明海や八代海に浮かぶ大小120の島々が美しい所です。(写真:平成新山)
27. 阿蘇くじゅう国立公園 27. 阿蘇くじゅう国立公園
  指定:昭和9年12月4日 面積:72,678ha
 周囲約100kmに及ぶ世界最大級のカルデラや火山活動でできた多数の山々を持つ国立公園です。阿蘇地域は今も噴煙をあげる中岳などの阿蘇五岳と草原が作る雄大な景観が特徴で、くじゅう地域は久住連山、由布岳などの景観がすぐれています。(写真:阿蘇山中岳)
28. 霧島屋久国立公園 28. 霧島屋久国立公園
  指定:昭和9年3月16日 面積:60,794ha
 霧島地域には韓国岳をはじめ、20を超える火山があり、山麓はシイ、カシ、アカマツなどの自然林が広がっています。また、錦江湾地域の桜島の景観も代表的です。屋久島は縄文杉、大王杉など樹齢千年を超える屋久杉の島として有名です。(写真:霧島山)
29. 西表石垣国立公園 29. 西表石垣国立公園
  指定:昭和47年5月15日 面積:20,569ha
 日本列島西南端の西表島と石垣島、その間にはさまれた海域からなる国立公園です。西表島は80%が亜熱帯林に覆われ、イリオモテヤマネコなど希少な野生動物も多く生息しています。また、石西礁湖には広大なサンゴ礁が広がっています。(写真:石西礁湖)

日本の世界自然遺産とその候補地

 将来の世代に引き継ぐべき人類共通のかけがえのない財産として世界遺産条約に基づく世界遺産一覧表に記載された資産が「世界遺産」です。世界遺産には、文化遺産、自然遺産、複合遺産があり、自然遺産として記載されるためには、世界遺産の評価基準のうち、(vii)自然景観、(viii)地形・地質、(ix)生態系、(x)生物多様性のいずれかを満たす必要があります。

 日本では「知床」「白神山地」「屋久島」が自然遺産として記載されています。また、国内の候補地としては「小笠原諸島」「琉球諸島」が選定されており、小笠原諸島については、平成22年1月に世界遺産条約の事務局であるユネスコに推薦書を提出しています。


1. 知床 1. 知床
  登録:平成17年7月 適合基準:(ix)(x) 面積:71,103ha
 流氷の形成に伴う豊富な栄養のため、生産性の極めて高い生態系が存在します。海と陸の生態系の相互関係のすぐれた見本であるとともに、絶滅のおそれのある海鳥、渡り鳥、トドや鯨類など多くの海の動物にとって重要な地域です。
2. 白神山地 2. 白神山地
  登録:平成5年12月 適合基準:(ix) 面積:16,971 ha
 かつて北日本の山地や丘陵に広く分布していた冷温帯性のブナ林が、原生的な状態を保って広く分布する最後の地域です。さまざまな群落型、更新のステージを示しており、進行中の生態学的なプロセスの顕著な見本です。
3. 屋久島 3. 屋久島
  登録:平成5年12月 適合基準:(vii)(ix) 面積:10,747ha
 樹齢千年を越えるスギの巨木をはじめ、亜種を含めて約1,900種もの植物が生育するなど豊かな生物相を有します。また、海岸部から亜高山帯に及ぶ植生の典型的な垂直分布が見られます。
● 小笠原諸島(推薦地) ● 小笠原諸島(推薦地)
  推薦書提出:平成22年1月 推薦基準:(viii)(ix)(x) 面積:7,408ha
 海洋性島弧の発達過程を、大規模に露出した地層から読み解くことのできる地球上唯一の場所です。また、固有種の多い特異な島嶼生態系で、隔離された海洋島の特徴を良く保存しており、多くの国際的に重要な希少種や固有種の生息・生育地です。
● 琉球諸島(国内候補地) ● 琉球諸島(国内候補地)
  
平成15年候補地選定(トカラ列島以南の南西諸島が検討対象)
 大陸との分離結合を繰り返した地史を反映した生物の進化を示すとともに、遺存固有種を含む多くの国際的な希少種の生息・生育地となっています。


「日本の動物分布図集」

 環境省では、1978(昭和53)年度から自然環境保全基礎調査の一環で、わが国に生息している野生動物の分布情報を調査してきました。しかし、これらの分布調査の結果は対象種や調査年度が多岐にわたっていたことから、複雑で分かりにくい部分がありました。そこで、これまでの分布調査で得られた情報をとりまとめ、わが国の野生動物に関する基礎資料として分かりやすく提示することを目的として、「日本の動物分布図集」の作成を行いました。

 本分布図集は、これまで分布図を作成した実績のある動物3,304種類(哺乳類116種、鳥類364種、爬虫類96種、両生類64種、淡水魚類326種、昆虫類1,184種、陸産及び淡水産貝類1,154種)について、それぞれの分布図を分類群別にとりまとめたものです。近年個体数が増加していると思われるニホンジカや、分域が北上していると思われるクマゼミ等の分布域の変化を日本地図上に年代別に示しており、生物の分布が変化している様子を見ることができます。

 「日本の動物分布図集(PDF版)」の概要は、巻末のCD-ROMに収録されています。また、その全文は、生物多様性センターのWebサイトで入手することができます。 http://www.biodic.go.jp/kiso/atlas/


表紙

表紙


分布図の一例

分布図の一例


ツシマヤマネコの野生復帰に向けた取組

 ツシマヤマネコは、日本においては長崎県の対馬にのみ生息し、環境省レッドリストでは最も絶滅のおそれが高い野生生物(絶滅危惧IA類)とされています。過去島内に広く生息していましたが、1980年代には100~140頭、2000年代前半には、約80~110頭と減少し、特に下島の個体群は危機的な状況にあります。ツシマヤマネコの絶滅を回避するには、生息域内の保全とともに、生息域外で増やした飼育下繁殖個体群の野生復帰による補強が重要とされました。これまで、福岡市動物園を始め5園で繁殖に取り組んできましたが、次の段階として平成23年度から3カ年かけて下島に野生順化施設を建設し、野外の生息環境を再現したケージ内で動物園生まれの個体の野生復帰訓練を行う予定です。ほ乳類の野生復帰はわが国初ですので、地元自治体、専門家、NPOや地域住民等様々な方と連携し、周囲の生息環境の改善やモニタリング等行いつつ進めていきます。


ツシマヤマネコ(撮影者:川口 誠)

ツシマヤマネコ(撮影者:川口 誠)




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