2010年(平成22年)10月に愛知県名古屋市で開催されたCOP10の決定事項を着実に実施していくため、引き続き、関係副大臣等会議や関係省庁連絡会議等を活用しながら関係省庁の緊密な連携を図り、愛知目標の達成に向けた取組を進めます。具体的には、生物多様性国家戦略の見直しに着手し、これを踏まえた生物多様性に関する国内施策の充実を図るとともに、名古屋議定書の早期締結に向けた作業を進めます。
「SATOYAMAイニシアティブ」については、COP10に立ち上げた国際パートナーシップの参加者と連携し、各国の社会経済情勢や二次的な自然環境の質に即した自然資源を推進します。
わが国は2012年(平成24年)に予定されるCOP11までの期間、COPの議長国を務めます。愛知目標の世界的な達成や名古屋議定書の実施に向け、特に途上国の能力養成等を図るため「生物多様性日本基金」への拠出を行うなど、関連する国際機関との協力のもとに、生物多様性の保全と持続可能な利用にむけた地球規模の取組に引き続き貢献していきます。
カルタヘナ議定書が適切に実施されるよう、次回締約国会議までの2年間、開発途上国の体制整備を支援するなど、議長国としてリーダーシップを発揮します。また、COP10に先立って開催されたカルタヘナ議定書第5回締約国会議(MOP5)において、名古屋・クアラルンプール補足議定書が採択されたことから、関係省庁が緊密に連携し、本補足議定書の早期締結に向けた検討を進めます
特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(ラムサール条約)締約国会議の決議などに則し、条約湿地に関するモニタリング調査や普及啓発などを関係する地方公共団体やNGOなどと連携しつつ実施し、総合的な湿地の保全と賢明な利用を図っていきます。また、2012年(平成24年)に予定されているラムサール条約第11回締約国会議に向けて、平成22年9月に公表したラムサール条約湿地潜在候補地について、引き続きラムサール条約湿地への登録を進めます。
アジア地域の重要な湿地の保全のため、引き続きアジア諸国の湿地登録の促進に努めるとともに、湿地システムとしての水田の生物多様性の向上を訴えていきます。
絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)締約国間の、条約の適切な執行に向けた取組を推進するとともに、関係省庁、関連機関が連携・協力して、違法取引の防止、摘発に努めます。
屋久島、白神山地及び知床は、世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(世界遺産条約)に基づき、世界遺産一覧表に記載されています。これらの世界自然遺産について、地元の意見と科学的な知見を管理に反映させるための管理体制と保全施策の充実を図ります。また、関係省庁・地方公共団体・地元関係者・専門家の連携により、引き続き適正な保全・管理を推進します。
国内の世界自然遺産候補地である小笠原諸島と琉球諸島については、それぞれ一覧表記載、推薦に向けた取組を進めていきます。特に、平成23年の世界遺産委員会において記載の可否が審議される予定の小笠原諸島については、記載に向けて必要な情報収集を進めるとともに、関係省庁・地方公共団体等の連携により、外来種対策や希少種の保全を一層推進します。また、琉球諸島については、世界的に優れた自然環境の価値を保全するため必要な方策を検討します。
南極地域の環境保護の促進を図るため、観測、観光、冒険旅行、取材等に対する確認制度等を運用し、南極地域の環境保護に関する普及啓発を行うなど、「環境保護に関する南極条約議定書(以下「議定書」という。)」及びその国内担保法である南極地域の環境の保護に関する法律(平成9年法律第61号)の適正な施行を推進します。また、平成17年6月の南極条約協議国会議で採択された環境上の緊急事態に対する責任について定めた議定書附属書について、引き続き対応を検討します。また、職員が第52次南極地域観測隊に同行し採取した水や土壌、生物などの試料を分析し、基地活動による南極地域の環境への影響を調べ、今後の活動の内容などについて検討します。
砂漠化対処条約(UNCCD)に関する国際的動向を踏まえつつ、同条約に基づく取組を推進します。具体的には、同条約への科学技術面からの貢献を念頭に、砂漠化対処のための技術の活用に関する調査などを進めます。また、二国間協力や、民間団体の活動支援等による国際協力の推進に努めます。
アメリカ、オーストラリア、中国、ロシア及び韓国との二国間の渡り鳥条約等に基づき、各国との間で渡り鳥等の保護のため、アホウドリ、オオワシ、ズグロカモメなどの希少種をはじめとする種について共同調査を引き続き推進するとともに、渡り鳥保護施策や調査研究に関する情報や意見の交換を行います。
平成18年11月に発足した「東アジア・オーストラリア地域フライウェイパートナーシップ」に基づき、同地域における渡り性水鳥とその生息地の保全のため、ネットワーク参加地における普及啓発、調査研究、研修、情報交換などの活動を推進するとともに、ネットワークの拡充を進めます。また、中国、韓国との間で、黄海とわが国の間をわたり、特に保全の必要性の高い種について情報共有などを進めます。
カンボジアで第7回ICRI東アジア地域会合を開催し、東アジア地域サンゴ礁保護区ネットワーク戦略2010に基づき、東アジアを中心とした海域におけるサンゴ礁保全のための取組を推進します。
森林原則声明、アジェンダ21及び気候変動問題における森林の重要性などを踏まえ、世界の森林の保全と持続可能な経営の推進を目指し、[1]国連森林フォーラム(UNFF)における国際的な検討に積極的に参加し、「すべてのタイプの森林に関する法的拘束力を有さない文書(NLBI)」及び多年度作業計画(MYPOW)の着実な実施を目指すとともに、[2]アジア森林パートナーシップ(AFP)、森林法の施行及びガバナンス(FLEG)の関係会合等を通じた地域的取組の推進、[3]国際熱帯木材機関(ITTO)、国連食糧農業機関(FAO)等の国際機関を通じた協力の推進、[4]国際協力機構(JICA)、世界銀行の「森林炭素パートナーシップファシリティ(FCPF)」等を通じた二国間・多国間の技術・資金協力の推進、[5]熱帯林の保全等に関する調査・研究の推進、[6]民間団体の活動の支援による国際協力の推進等に努めます。
国土の生物多様性の損失を防止するための目標の達成状況を評価するうえで重要となる指標の設定に向け、国土の生物多様性の状況や変化の空間的な分析・評価方法に関する検討を行います。
自然環境保全基礎調査の一環として、「植生調査」等、わが国の生物多様性に関する情報の収集整備を行います。「植生調査」では、縮尺2万5千分の1植生図の整備を進めます。また、沿岸域の自然環境の変化状況を把握する調査を行います。
モニタリングサイト1000では、高山帯、森林・草原、里地里山、陸水域(湖沼及び湿原)、沿岸域(砂浜、磯、干潟、アマモ場、藻場及びサンゴ礁)、小島嶼の各生態系について、生態系タイプ毎に定めた調査項目及び調査手法により、引き続き合計約1000か所の調査サイトでのモニタリング調査を実施します。
アジア太平洋地域の生物多様性モニタリング体制の推進を目的として、地球規模での生物多様性保全に必要な科学的基盤の強化のため、当該地域の生物多様性観測モニタリングデータの収集・統合化等を推進するアジア太平洋生物多様性観測ネットワーク(AP-BON)への支援を引き続き行います。また、東・東南アジア地域での生物多様性の保全と持続可能な利用のための生物多様性情報整備と分類学能力の向上に貢献するための東・東南アジア生物多様性情報イニシアティブ(ESABII)において、当該地域で特に施策上重要と思われる生物多様性情報を整備するとともに、分類学の能力向上のための研修を引き続き実施します。
生物多様性に関する科学及び政策の連携の強化を目的とした「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)」については、引き続き創設に向けた国際的な議論に積極的に参画していきます。
「生態系と生物多様性の経済学(TEEB)」に関する国際的な取組と連携し、生物多様性の経済評価に関する施策の検討を行います。併せて、生態系や生物多様性の価値を国の意思決定に反映できる手法の開発を促進するため、世界銀行が行う「生態系の価値評価と国民経済計算への算入に関する国際パートナーシップ」の取組を支援します。
「生物多様性関連技術開発等推進事業」により、生物多様性の保全・再生や持続可能な利用に関する政策課題に直結した技術開発や応用的な調査研究を、引き続き実施します。
独立行政法人国立科学博物館において、「日本海周辺域の地球表層と生物層構造の解析」、「生物多様性ホットスポットの特定と形成に関する研究」などの調査研究を推進するとともに、約394万点の登録標本を保管し、これらの情報を引き続きインターネットで広く公開します。また、GBIF(地球規模生物多様性情報機構)の日本ノードとして、国内の自然史系博物館と協働で、引き続き標本資料情報を国際的に発信します。さらに、様々な企画展や講座、体験教室など展示・学習支援活動を実施します。
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