水質汚濁に係る環境基準のうち、健康項目については、基準項目以外の項目の水環境中での存在状況や有害性情報等の知見の収集・集積を引き続き実施します。生活環境項目については、国が類型指定する水域に対する類型指定及び見直しに向けた検討を進めるとともに、BOD、COD等の基準の今後のあり方に関して基礎的な調査を推進します。特に基準化を推し進めていく必要がある底層DO等の長期間連続測定を行い、基準化に向けた検討を引き続き行います。また、水生生物の保全に係る水質環境基準についても、類型指定に向けた検討を進めるとともに、基準項目以外の項目の有害性情報等の知見の収集・集積を実施します。
水濁法に基づき、国及び地方公共団体は、公共用水域及び地下水の水質について、引き続き常時監視を行います。また、要監視項目についても、地域の実情に応じて水質測定を行います。
工場・事業場については適切な排水規制を行い、排水規制の対象となっていない項目等について規制の必要性の検討を進めます。平成21年11月に水質環境基準の追加・見直しが行われたことを踏まえ、1,4-ジオキサンの排水規制等について引き続き検討を行います。
閉鎖性水域における水環境の保全を図るため、水濁法等に基づく排水規制、下水道や浄化槽の整備等の各種施策を総合的に実施します。また、富栄養化しやすい湖沼及び閉鎖性海域を対象として、水濁法等に基づき、窒素・りんの排水規制を行うとともに、富栄養化の水質状況等の把握を行います。
湖沼については、湖沼水質保全特別措置法(昭和59年法律第61号)に基づく湖沼水質保全計画の策定されている琵琶湖や霞ヶ浦等11湖沼について、同計画に基づき、各種規制措置のほか、下水道及び浄化槽の整備その他の事業を総合的・計画的に推進します。
東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海においては、化学的酸素要求量(COD)、窒素含有量及びりん含有量を対象とした第7次水質総量削減を引き続き実施するとともに、全国88か所の閉鎖性海域等において、より適切な窒素及びりんの排水規制に向けた一斉点検を実施します。瀬戸内海については、瀬戸内海環境保全特別措置法(昭和48年法律第110号) 及び「瀬戸内海環境保全基本計画」等に基づき、水質や自然景観の保全等の諸施策を引き続き推進します。有明海及び八代海については、有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律(平成14年法律第120号)に基づき、また、平成18年12月の有明海・八代海総合調査評価委員会報告の提言を踏まえつつ、貧酸素水塊発生対策、底質改善、生態系の回復、その他の当該海域の環境の保全及び改善のための施策、水産資源の回復等による漁業の振興のための施策等を引き続き推進します。このほか、多様な魚介類等が生息し、人々がその恩恵を将来にわたり享受できる自然の恵み豊かな豊穣の里海の創生を推進します。さらに、海域の状況に応じた陸域・海域が一体となった栄養塩類の円滑な循環を達成するための効率的かつ効果的な管理方策の構築に向けた取組を推進します。
生活排水対策については処理施設の整備がいまだ十分でないため、水質の汚濁の防止を図るため汚水処理施設の整備を進めるに当たり、近年の人口減少傾向も踏まえた経済性や水質保全上の重要性などの地域特性を踏まえ、都道府県ごとの汚水処理に係る総合的な整備計画である「都道府県構想」の見直しを推進し、浄化槽、下水道、農業集落排水施設、漁業集落排水施設、コミュニティ・プラントなど各種生活排水処理施設の効率的かつ適正な整備を図ります。
浄化槽については、単独浄化槽の合併処理浄化槽への転換について、撤去費支援の更なる条件緩和により転換の推進を図ります。また、民間活力を用いた新たな整備・管理手法を検討し、官民が連携して整備の促進・適正な管理に取り組んでいけるよう支援を行います。
下水道整備については、全人口の約7割の汚水処理を担っていますが、市街化区域にも下水道未普及地域が残されており、快適で衛生的な生活環境の享受という公平性が確保されておらず、また、広域的な水質保全の面からも課題となっています。そのため、未普及地域のうち、人口が集中している地域や水道水源水域等水質保全上重要な地域において重点的に整備を推進するとともに、その他の地域においては、ほかの汚水処理施設と連携強化を図るとともに地域の実状に応じた低コストの整備手法の導入により、機動的な整備を行います。また、流域全体で効率的に高度処理を推進する高度処理共同負担事業の活用等により、引き続き下水道における高度処理を推進するとともに、計画的な合流式下水道の改善を推進します。
農業集落排水事業については、高度処理方式のより適切な運転手法の検討などにより、高度処理技術の一層の開発・普及を推進します。
非特定汚染源による水質汚濁の実態を把握し、その汚濁負荷の削減対策手法に関する調査を実施します。
また、湖沼の窒素・りん比率の変動による水生態系への影響や利水障害を未然に防止するために、窒素・りんの管理手法の確立に向けた検討を行います。さらに、湖沼の植生等の自然浄化機能について、生物多様性の保全や水質改善の効果を検証し、活用手法の検討を行います。
平成23年2月の中央環境審議会答申を受けて、地下水汚染の未然防止対策を進めます。そのため、国会に提出した「水質汚濁防止法の一部を改正する法律案」の成立・施行に向けて政省令や技術的指針等の内容を検討します。さらに、硝酸性窒素による地下水汚染についても、より実効性のある対策手法を検討します。
住民が水辺環境に関心をもち、生活の中で水と人との関係を考えていくことができる基盤づくりや、自発的に環境保全活動に参加できる環境づくりを行います。また、住民が水辺環境に関心をもち、生活の中で水と人との関係を考えていくことができる基盤づくりや、自発的に環境保全活動に参加できる環境づくりの施策を展開します。特に、多くの人が訪れ、地域のシンボル及び憩いの場である都市域の水環境の再生や身近な水辺空間の再生・創造により、住民による自発的な水環境保全活動を支援します。
地域住民等の参加を得て、全国の河川において水生生物による簡易水質調査を推進するとともに、市民団体と協働して、身近な水環境の一斉調査を実施します。
さらに、河川水質を、[1]人と河川の豊かなふれあいの確保、[2]豊かな生態系の確保、[3]利用しやすい水質の確保等の視点で総合的に分かりやすく評価する新しい指標に基づき、全国で一般市民の参加を得て、調査を実施します。
また、雨水渠等の下水道施設や下水処理水を活用したせせらぎ水路等の水辺空間の再生・創出を推進します。
水質汚濁に係る環境基準の項目、基準値、水域類型の指定及び見直しに関し、必要な調査検討を行います。
さらに、水環境保全施策が的確に機能していくよう、最新の知見を踏まえ、水環境の目標や効果的な監視手法等について検討を行います。また、流域別下水道整備総合計画等水質保全に資する計画を策定し、効率的な汚濁負荷削減施策を推進します。
また、水質面のみならず、水量、水生生物、水辺地を含めた総合的な取組を進めるため、引き続き水循環に関する調査や施策の推進方策等についての検討を行います。特に農業集落排水施設等の生活排水処理施設整備事業を重点的に実施します。環境保全上健全な水循環の確保については、流域単位での水循環計画策定に向けた取組を推進・支援します。また、地域の湧水を保全・復活させるため、地域特性に応じた具体的・効果的な取組について検討を行います。
「健全な水循環系構築に関する関係省庁連絡会議」では、健全な水循環系の構築に向けた施策の推進のため、引き続き情報や意見の交換及び施策相互の連携や協力の推進を図ります。
河川、湖沼における自然浄化機能の維持・回復のため、水質、水生生物等の生息環境、水辺地植生等の保全、水量の確保、都市域における水循環再生構想の策定を行います。また、下水処理水等の効果的な利用や雨水貯留浸透の推進、森林の適切な管理・保全や、自然海岸、干潟、藻場、浅海域の適正な保全や人工干潟・海浜の整備の推進等を通じ、環境保全上健全な水循環の維持・回復を推進します。
琵琶湖・淀川流域圏の再生計画に基づき、特定非営利活動法人等の活動団体で構成する「琵琶湖・淀川流域圏連携交流会」と関係行政機関で構成する「琵琶湖・淀川流域圏再生推進協議会」とが連携し、琵琶湖・淀川の生態系の保全・再生や健全な水循環系の構築等、流域全体での一体的な取組を引き続き推進します。
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