第8節 社会経済のグリーン化の推進に向けた取組

1 経済的措置

(1)経済的助成

 ア 政府関係機関等の助成

 政府関係機関等による環境保全事業の助成については、表6-8-1のとおりでした。


表6-8-1 政府関係機関等による環境保全事業の助成

 イ 税制上の措置等

 平成20年度税制改正において、[1]バイオエタノール混合ガソリン(エタノール3%混合ガソリン(E3)及びETBE7%混合ガソリン)に係る揮発油税及び地方道路税のうちバイオエタノール分について非課税とする措置の創設、[2]既存住宅について一定の省エネ改修を行った場合の住宅ローン減税の控除額の特例及び固定資産税の減額措置を創設、[3]自動車税のグリーン化及び低燃費車等の取得に係る自動車取得税の特例措置について軽減対象を重点化した上で延長、[4]平成21年排出ガス規制に適合したディーゼル乗用車に係る自動車取得税の軽減措置を創設、[5]公害防止用設備の特別償却制度について対象設備の見直し・延長などの措置を講じました。


(2)経済的負担

 ア 基本的考え方

 環境への負荷の低減を図るために経済的負担を課す措置については、その具体的措置について判断するため、地球温暖化防止のための二酸化炭素排出抑制、廃棄物の発生抑制などその適用分野に応じ、これを講じた場合の環境保全上の効果、国民経済に与える影響及び諸外国の活用事例等につき、調査・研究を進めました。

 平成20年度においては、経済的措置の検討が深められた事例として以下のようなものがあります。

 (ア) 環境税の検討状況

 環境税については、「低炭素社会づくり行動計画」(平成20年7月29日閣議決定)において、「税制の抜本改革の際には、道路特定財源の一般財源化後の使途の問題にとどまらず、環境税の取扱いを含め、低炭素化促進の観点から税制全般を横断的に見直し、税制のグリーン化を進める」とされました。

 また、環境省は、平成20年9月から、中央環境審議会総合政策・地球環境部会グリーン税制とその経済分析等に関する専門委員会を開催しました。本専門委員会では、原油価格の高騰等の経済状況下での課税の効果や、既存エネルギー関係諸税との関係等について議論され、同年11月に、それまでの議論が整理されました。この中では、「今後相当な量の温室効果ガスの削減が必要であることを考えると、地球温暖化対策の中で環境税導入に向けた議論を積極的に進めていくべき」、「環境税は、広く社会全体の意識・行動を変革する契機となり、環境税を含んだ形の様々な地球温暖化対策を総動員することにより、自主的取組、規制、経済的手法等が互いに補強し合いながら、あらゆる部門・事業者が何らかの形で政策的にカバーされるような工夫を行うことが必要である」、「環境税を含めて、税制全体のグリーン化を図っていくことが今後の大きな方向である」等の委員の意見がまとめられています。

 この整理を踏まえ、環境省は、平成16年から19年までに引き続き、20年においても、地球温暖化防止のための環境税の創設を要望しました。

 なお、環境税の取扱いを含め、税制のグリーン化について、政府、党で活発な議論がなされ、同年12月の「持続可能な社会保障構築とその安定財源確保に向けた「中期プログラム」」においては、税制抜本改革の基本的方向性として、「低炭素化を促進する観点から、税制全体のグリーン化を促進する。」ことが記載され、また、所得税法等の一部を改正する法律(平成21年法律第13号)附則第104条においても、「低炭素化を促進する観点から、税制全体のグリーン化(環境への負荷の低減に資するための見直しをいう。)を推進すること。」とされました。

 いずれにせよ、環境税については、税制抜本改革に関する議論の中で、税制全体のグリーン化を図る観点から、様々な政策手法全体の中での位置づけ、課税の効果、国民経済や産業の国際競争力に与える影響、既存の税制との関係、諸外国における取組の現状等に考慮を払い、国民、事業者などの理解と協力を得るように努めながら、真摯に総合的な検討を進めていくべき課題です。

 (イ) 地方公共団体における環境関連税(注)の導入の動き

 地方公共団体において、環境関連税の導入の検討が進められています。例えば、産業廃棄物の排出量又は処分量を課税標準とする税について、平成21年3月末現在、28の地方公共団体で条例が制定され施行されました。税収は、主に産業廃棄物の発生抑制、再生、減量、その他適正な処理に係る施策に要する費用に充てられています。

 また、森林環境税や森づくり税等名称こそ違え、森林整備等を目的とする税が29県において導入され、今後さらに1県において導入が予定されています。例えば、高知県では、県民税均等割の額に500円を加算し、その税収を森林整備等に充てるために森林環境保全基金を条例により創設するなど、実質的に目的税の性格を持たせたものとなっています。

 (注)環境関連税:OECD統計上、環境関連税は、強制的、一方的な政府への支払いであって、特定の環境関連と考えられる課税対象に課せられるものと定義されている。環境に関連した課税対象には、エネルギー製品、自動車、輸送機関、廃棄物管理、オゾン層破壊物質等が含まれる。(「OECD環境データ集」(2006年、2007年版))

2 環境配慮型製品の普及等

(1)グリーン購入の推進

 グリーン購入法(図6-8-1)に基づき、国等の各機関では、基本方針に即して平成20年度の環境物品等の調達方針を定め、これに基づいて環境物品等の調達を推進しました。


図6-8-1 グリーン購入法の仕組み

 また、グリーン購入の取組を更に促すため、基本方針の変更について、国の地方支分部局、地方公共団体、事業者等を対象とした説明会を全国10か所において開催しました。

 グリーン購入の推進のためには、各地域において行政、地元の事業者、住民等によるネットワークが組織されることが重要です。そこで、グリーン購入地域ネットワークの構築を推進するために、地方公共団体、消費者、事業者等に対し、情報提供や啓発のためのセミナーを開催しました。また、グリーン購入の取組が進んでいない地方公共団体等にも、無理なくグリーン購入を始めてもらうために、「グリーン購入取組ガイドライン」を策定し、普及・啓発を行っています。


(2)環境配慮契約(グリーン契約)

 平成19年11月に施行された国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(平成19年法律第56号。以下「環境配慮契約法」という)(図6-8-2)に基づき、国の各機関や独立行政法人、国立大学法人、地方公共団体などの公的機関は、価格だけでなく環境負荷をも考慮した「環境配慮契約」を推進しています。


図6-8-2 環境配慮契約法の構造

 平成21年2月に変更された基本方針(閣議決定)では、従来の、電力調達、自動車購入、ESCO(省エネルギー改修)事業、建築設計の4分野に加え、自動車のリース契約について、具体的な環境配慮の仕方や手続を定めました。国及び独立行政法人等は、基本方針に従って環境配慮契約に取り組む義務があり、機関ごとに契約の締結実績を公表することになります。


(3)環境ラベリング

 消費者が環境負荷の低い製品を選択する際に適切な情報を入手できるように、環境ラベル等環境表示の情報の整理を進めました。日本で唯一のタイプI環境ラベル(ISO14024準拠)であるエコマーク制度では、ライフサイクルを考慮した指標に基づく商品類型を継続して整備しており、平成21年3月末現在、エコマーク対象商品類型数は47、認定商品数は4,544となっています。

 事業者の自己宣言による環境主張であるタイプII環境ラベルや民間団体が行う環境ラベル等については、各ラベリング制度の情報を整理、分類して提供する「環境ラベル等データベース」を引き続き運用・更新しました。また、環境表示を行う事業者等、又は、認定(認証)制度を運用する行政機関や公益法人、NPO等が、グリーン購入を促進させる上で必要な情報提供の在り方等についてまとめた「環境表示ガイドライン」の普及に努め、説明会を開催しました。

 また、環境物品等を国際的に流通させてグリーン購入の取組を推進するためには、各国の環境ラベル制度における基準の共通化等が必要であるため、我が国のエコマークを中心に、各国環境ラベル間の相互認証に関する調査・分析を行いました。


(4)標準化の推進

 日本工業標準調査会(JISC)は、平成20年度、環境関連法令等の中での環境JISの位置づけを確認しながら自治体・企業・消費者のグリーン購入における環境JISの活用状況の調査・検討を行い、更なる環境JISの活用促進に向けた課題の抽出を行いました。


(5)ライフサイクルアセスメント(LCA)

 製品やサービスに関するライフサイクルアセスメントの手法について、投入される資源、エネルギー量と生産される製品及び排出物のデータ収集、定量化などを行うインベントリ分析や、インベントリ分析の結果を各種環境影響カテゴリーに分類し、それを使用して環境影響の大きさと重要度を分析するインパクト評価の手法などの調査・研究の成果を、データベースの運用などにより普及を進めるとともに、全国9か所に地域拠点機関を設け、LCA手法を活用して、企業における環境配慮設計の導入を支援し、環境配慮製品(エコプロダクツ)の開発・市場拡大を促進しました。


(6)カーボンフットプリント制度

 「低炭素社会づくり行動計画」(平成20年7月29日閣議決定)に基づき、温室効果ガスの「見える化」の一つとして、商品・サービスのライフサイクル全般(原材料調達から廃棄・リサイクルまで)で排出される温室効果ガスをCO2量に換算し、表示するカーボンフットプリント制度について、「カーボンフットプリント実用化・普及推進研究会」等を有識者・事業者および関係各省参加のもと開催し、算定・表示の在り方について検討を行い、統一マークの選定、エコプロダクツ2008での試作品の展示(研究会参加企業30社が参加)などを経て、平成21年2月に「カーボンフットプリント制度の在り方(指針)」及び「商品種別算定基準(PCR)策定基準」を取りまとめました。また、ISO(国際標準化機構)におけるカーボンフットプリント制度の国際標準化に向けた議論に積極的に貢献するため、「カーボンフットプリント制度国際標準化対応国内委員会」を設置し、国内の取組や海外動向を踏まえ、我が国の対応方針を検討する体制を整備しました。平成21年1月には、ISOの会合がマレーシアにおいて開催され、我が国からも専門家を派遣し、我が国の考え方を主張しました。

3 事業活動への環境配慮の組込みの推進

(1)環境マネジメントシステム

 環境マネジメントシステムについて情報提供等を行い、幅広い事業者への普及を図りました。特に、中小企業者向けに策定された「エコアクション21」(環境活動評価プログラム)については、更なる普及促進を目指し、最新の環境情勢を反映させるとともにより分かりやすくするための改訂に着手しました。また、中小企業への環境マネジメントシステムの普及を図るため、環境マネジメントシステムの認証登録を要件とする低利融資制度により、事業者のエコアクション21の認証取得及びそれに伴う環境対策投資の支援等を実施しました。さらに、環境マネジメントシステムの要求事項を定めた国際規格であるISO14001及びこれを翻訳した日本工業規格JISQ14001について情報提供等を行いました。平成21年3月末現在、環境マネジメントシステムISO14001の審査登録件数は約2万件、エコアクション21の審査登録件数は約3千件です。ISO14001の認証制度の信頼性を向上するため、平成20年7月に認定機関、認証機関等の関係者向けのガイドラインを公表しました。また、環境マネジメントシステムの段階的適用の指針(ISO14005)の平成22年発行に向けて、作業を進めました。


(2)環境会計

 事業者による効率的かつ効果的な環境保全活動の推進に資する環境会計手法の確立に向けて、気候変動リスクによる企業の財務状況への影響について調査を行いました。

 企業経営に役立つ環境管理会計の一手法であり、廃棄物削減と生産性向上を同時に実現するマテリアルフローコスト会計については、普及・促進のため、普及事業の拠点となる事業者団体等におけるセミナー等の開催、導入実証事業と普及指導を担う人材育成のためのインターンシップ事業を実施しました。また、平成20年3月にISOにおいて承認されたマテリアルフローコスト会計の国際標準規格化については、我が国が議長及び幹事を務める作業部会ISO/TC207/WG8にて議論されており、第2回WG会合を東京で開催するなど、我が国の主導により、作業を進めました。


(3)環境報告書

 質の高い環境報告書の作成、公表を促進するため、環境コミュニケーション大賞の表彰制度において、喫緊の課題である地球温暖化対策に関する優れた報告書を表彰する賞を設けたほか、環境経営をテーマに環境コミュニケーションシンポジウムを開催するなど、引き続き環境報告書への取組を支援しました。

 また、「環境情報の提供の促進等による特定事業者等の環境に配慮した事業活動の促進に関する法律(平成16年法律第77号。以下「環境配慮促進法」という。)」では、環境報告書の普及促進と信頼性向上のための制度的枠組みの整備や一定の公的法人に対する環境報告書の作成・公表の義務付け等について規定しています。その附則第4条に基づき、法律の施行後3年が経過したことを踏まえ、「中央環境審議会総合政策部会環境に配慮した事業活動の促進に関する小委員会」を設置し、環境配慮促進法の施行状況について評価・検討を行いました。(図6-8-3)。


図6-8-3 環境情報の提供の促進等による特定事業者等の環境に配慮した事業活動の促進に関する法律の概要


(4)公害防止管理者制度

 工場における公害防止体制を整備するため、特定工場における公害防止組織の整備に関する法律(昭和46年法律第107号)によって一定規模の工場に公害防止に関する業務を統括する公害防止統括者、公害防止に関して必要な専門知識及び技能を有する公害防止管理者等の選任が義務付けられており、約2万の特定工場において公害防止組織の整備が図られています。

 同法に基づく公害防止管理者等の資格取得のため、昭和46年度以降国家試験が毎年実施されており、平成20年度の合格者数は6,127人、これまでの延べ合格者数は31万4,056人です。

 また、国家試験のほかに、一定の技術資格を有する者又は公害防止に関する実務経験と一定の学歴を有する者が公害防止管理者等の資格を取得するには、資格認定講習を修了する方法があり、平成19年度の修了者数は2,867人、これまでの修了者数は25万4,424人です。


(5)公害防止体制の促進

 平成19年3月に示した、実効性のある公害防止に関する環境管理体制の構築に取り組む際の参考となる行動指針「公害防止ガイドライン」に関して、普及啓発及び産業界の取組状況のフォローアップを行いました。


(6)温室効果ガスの排出量等の定量化等に関する標準化

 温室効果ガスの排出量・除去量の定量化等に関する国際規格(ISO14064-1~3)に基づき、日本工業規格(JIS)化に向けて、作業を進めました。

4 環境に配慮した投融資の促進

(1)金融のグリーン化

 企業の社会的責任という観点から環境への取組をとらえる傾向が高まっていることを受けて、金融のグリーン化の促進を目的として、環境に配慮した投融資の実態を把握すべく調査を行い、有識者による検討会を開催し、今後の環境に配慮した投融資の普及のための検討を行いました。


(2)金融機関の環境融資に対する支援

 環境に配慮した事業活動を行う事業者を支援するため、環境面からのスクリーニング手法を用いた金融機関が行う低利融資について、温暖化防止の観点から利子補給を実施しました。また、各地域の温室効果ガス排出削減に資する低利融資制度についても、交付金による支援を実施しました。さらに日本政策金融公庫(旧中小企業金融公庫、国民生活金融公庫)より、大気汚染対策や水質汚濁対策、廃棄物の処理・排出抑制・有効利用、温室効果ガス排出削減、省エネ、エコアクション21等の環境対策に係る融資施策を引き続き実施しました。


(3)「環境力」評価手法の検討

 市場において環境に配慮した製品・サービス・企業の環境力を適切に評価し、投融資行動につなげる仕組みの構築に向け、金融機関や投資家に的確に訴求する「環境力」の評価手法の開発、「環境力」を的確に表す株価指数等への適用のあり方、比較可能な環境情報開示のあり方について検討を行いました。

5 その他環境に配慮した事業活動の促進

(1)地域等での環境に配慮した事業活動

 環境保全に資する製品やサービスを提供する環境ビジネスの振興は、環境と経済の好循環が実現する持続可能な社会を目指す上で、極めて重要な役割を果たすものであると同時に、経済の活性化、国際競争力の強化や雇用の確保を図る上でも大きな役割を果たすものです。

 我が国の環境ビジネスの市場・雇用規模については、OECDの環境分類に基づき調査、推計が行われています。省エネ家電やエコファンドなど、環境保全を考えた消費者の行動が需要を誘発する環境誘発型ビジネスも加えた市場・雇用規模については、環境省の調査によれば、平成19年の市場規模は約69兆円、雇用規模は約130万人となっています。(表6-8-2)


表6-8-2 環境ビジネス(環境誘発型ビジネスを含む)の市場規模及び雇用規模の現状

 地域における企業、NPO、市民等が連携した環境に配慮したまちづくりに資する「環境コミュニティ・ビジネス」、1人1日1kgの温室効果ガス削減をモットーとして地域ぐるみで国民運動を促進する「環境負荷低減国民運動支援ビジネス」、企業がこれまで製品としていたものをサービス化して提供する「グリーン・サービサイジング」を発掘し、その展開を支援しました。


(2)エコ・アクション・ポイント

 低炭素社会形成のためには、特に近年の増加が著しい業務・家庭部門の温室効果ガス削減が必要不可欠であり、そのためには、国民一人ひとりのライフスタイル等の変革を図っていくことが必要不可欠です。

 そこで、21世紀環境立国戦略や京都議定書目標達成計画に盛り込まれた、国民一人ひとりの温暖化対策行動に経済的インセンティブを付与する取組を普及するため、平成20年度より、エコ・アクション・ポイントのモデル事業の推進を開始しました。

 エコ・アクション・ポイントとは、温室効果ガスの排出削減に資する商品・サービスの購入・利用や省エネ行動によりポイントが貯まり、そのポイントの量に応じて、商品等の経済的価値のあるものと交換できる仕組みです。

 全国型事業では、家電や鉄道等の異業種事業者の連携によりエコポイントを発行するもの3件、地域型事業では、商店街等が参加して進めるものなど9件が公募で採択され、ポイントシステムの立ち上げを支援しました。

6 社会経済の主要な分野での取組

(1)物の生産・販売・消費・廃棄

 ア 農林水産業における取組

 環境と調和のとれた農業生産活動を推進するため、農業者が環境保全に向けて最低限取り組むべき農業環境規範の普及・定着を引き続き推進しました。さらに、持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律(平成11年法律第110号)に基づき、土づくりと化学肥料・化学合成農薬の使用低減に一体的に取り組む農業者(エコファーマー)に対する金融上の支援措置や、環境と調和のとれた持続的な農業生産を推進するために必要な共同利用機械・施設、土壌・土層改良等の整備に関する支援を引き続き行いました。

 また、地域でまとまって化学肥料・化学合成農薬の使用を大幅に低減する等の先進的な営農活動への支援に取り組むとともに、有機農業の推進に関する法律(平成18年法律第112号)に基づき、有機農業の推進に関する基本的な方針を策定し、有機農業者等の支援、技術開発等を実施しました。

 畜産業において発生する家畜排せつ物からの環境負荷を低減するため、たい肥化施設等の施設整備を推進し、家畜排せつ物法に基づく適正な管理を確保するとともに、たい肥化による農業利用やエネルギー利用等の一層の推進を図りました。

 森林・林業においては、持続可能な森林経営及び地球温暖化対策の推進を図るため、造林、保育、間伐等の森林整備を推進するとともに、計画的な保安林の指定の推進及び治山事業等による機能が低下した保安林の保全対策、多様な森林づくりのための適正な維持管理、炭素の貯蔵庫となるなどの特徴を有する木材利用の推進に引き続き努めました。

 水産業においては、持続的な漁業生産等を図るため、適地での種苗放流による効率的な増殖の取組を支援するとともに、漁業管理制度の的確な運用に加え、漁業者による水産資源の自主的な管理や資源回復計画に基づく取組を支援しました。また、沿岸域の藻場干潟の造成等、生育環境の改善を実施しました。養殖業については、持続的養殖生産確保法(平成11年法律第51号)に基づく漁協等による養殖漁場の漁場改善計画の作成を推進するとともに、養殖による環境負荷低減技術の開発を進めました。

 イ 製造・流通業における取組

 製造・流通業に対しては、適切な指導を行ったほか、省資源・再資源化推進のための環境整備を行いました。また、中小企業の公害対策について、実態を把握するとともに、中小企業自身の研究開発を支援しました。

 食品産業に対しては、環境情報の提供を行うとともに、自主行動計画の策定を推進しました。また、容器包装リサイクル法の着実な施行を進めるとともに、改正食品リサイクル法制度の普及啓発、食品廃棄物を含むバイオマス利活用推進を図ろうとする地域に対する食品リサイクルシステムの構築及び食品リサイクル施設の導入を図りました。

 また、建築物の居住性(室内環境)の向上と省エネルギー対策を始めとする環境負荷の低減等を、総合的な環境性能として一体的に評価を行い、結果を分かりやすい指標として提示する建築物総合環境性能評価システム(CASBEE)について、建築物のライフサイクルに対応した評価ツールや戸建住宅の環境性能評価システム等の開発・普及を推進しました。


(2)エネルギーの供給と消費

 環境への負荷の少ないエネルギー供給構造を形成するため、発電部門、都市ガス製造部門等のエネルギー転換事業部門におけるエネルギー効率の向上や、環境への負荷の少ない新エネルギーの導入拡大を積極的に進め、次のような取組を実施しました。

 また、グリーン電力証書などの民間の自主的取組を進めるために、ガイドラインを策定するなどしました。

 産業用ボイラー等の燃料を石油・石炭等から環境負荷の少ない天然ガスへ転換する事業者への支援策を講じました。太陽光や風力、バイオマス等の新エネルギーの低コスト化・高効率化のための技術開発・実証試験や、民間事業者や地方公共団体等が新エネルギー設備を設置する際の補助を通じて導入促進等の支援措置を講じました。また、将来の水素社会の実現に向けて、革新的なエネルギー高度利用技術である燃料電池や水素エネルギー利用技術関連の研究開発と併せて、規制の見直しの検討や基準・標準の設備に向けた研究を行いました。さらに、電気事業者に新エネルギー等から発電される電気を一定量以上利用することを義務付けるRPS法の着実な運用等を通じて電力分野における新エネルギー導入の拡大に努めました。

 原子力については、供給安定性に優れ、エネルギーセキュリティーの確立に資するほか、発電過程で二酸化炭素を排出することがなく、地球温暖化対策の面でも優れた特性を有することから、「エネルギー基本計画」等において、安全の確保を大前提に、国民の理解の下、原子力を基幹電源として位置付け、核燃料サイクルを含め着実に推進することとしています。また、世界的にも原子力の有用性が再認識されつつあり、逆風が吹く厳しい時代も着実に原子力を推進し続けてきた我が国に対して、世界的な原子力平和利用拡大への貢献が求められています。

 平成17年に我が国の原子力政策の基本方針として尊重する旨が閣議決定された「原子力政策大綱」では、原子力発電について、2030年以降も総発電電力量の30~40%程度以上を担うことを目指すこと等が示されています。その実現に向けた政策枠組みと具体的なアクションとして策定された、「原子力立国計画」は、19年3月に改訂された「エネルギー基本計画」の一部として位置付けられ、閣議決定されました。また、20年7月に閣議決定された「低炭素社会づくり行動計画」においても、原子力を低炭素エネルギーの中核として、2020年をめどに発電電力量に占める「ゼロエミッション電源」の割合を50%以上とする中で、原子力発電の比率も相当程度増加させることを目指すとされています。

 具体的には、19年4月に30年振りに原子力発電所建設再開の方針に転じたアメリカとの間で、「日米原子力エネルギー共同行動計画」を締結しました。また、「国際原子力エネルギー・パートナーシップ(GNEP)」の閣僚級会合が19年5月及び9月に開催され、高速炉や中小型炉、サイクル技術を含む技術協力等について議論しました。更に、20年10月に開催した閣僚級会合では、日本からの提案によって、地球温暖化対策として原子力エネルギー平和利用の拡大が効果的な手段であるとの認識を国際社会で共有するため、GNEP参加国が協力して活動することが重要であること等を述べた共同声明を発出しました。また、原子力の安全で平和的な利用拡大を目的に、原子力導入予定国(ベトナム、インドネシア、カザフスタン)に対し、原子炉導入基盤整備支援を行いました。4月末には、甘利経済産業大臣を始めとした総勢約150名の官民使節団でカザフスタンを訪問し、日本のウラン需要の3~4割の権益を獲得するなど、日本型の資源外交を実施しました。さらに、次世代軽水炉開発のフィージビリティ・スタディ、高速増殖炉サイクル技術等の核燃料サイクル技術の着実な進展、長期的視点から核融合に関する研究開発、原子力人材の育成、放射性廃棄物対策の強化、原子力損害発生時の被害者救済などを図る原子力損害賠償制度の充実等を実施しました。

 省エネルギー対策については、重点的な取組として、以下のような施策を講じました。

 石油ショック以降、エネルギー消費増加の著しい業務・家庭部門の省エネルギー対策を強化するため、総合資源エネルギー調査会において、今後の省エネルギー対策の方向性について取りまとめを行い、また、平成18年4月に施行されたエネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和54年法律第49号)の一部改正法の着実な運用等を通じてエネルギー管理の徹底を図りました。さらに、産業部門において特に高い省エネルギー効果が期待され、費用対効果が高い省エネルギー設備に対する支援を行うとともに、民生部門については、高効率給湯器等優れた省エネルギー設備機器の導入等への支援を行いました。さらに、自動車や家電等のトップランナー基準の対象機器の拡大・基準の見直し、家電の省エネルギー性能を表す表示制度の普及を行いました。また、家庭部門の省エネルギー推進を促すため経済産業省と環境省の協力の下、家電メーカー、小売事業者及び消費者団体など関係者が連携しながら省エネ家電普及促進フォーラムを設立し、省エネルギー家電の普及を促進するなど、省エネルギーへの取組を国民運動として展開しました。さらに、2030年に向けた「省エネルギー技術戦略2008」の策定等を実施しました。

 さらに、エネルギー等の特別会計のグリーン化を促進し、新エネルギー対策、省エネルギー対策、京都メカニズムの活用等の取組を推進しました。


(3)運輸・交通

 運輸・交通分野における環境保全対策については、自動車1台ごとの排出ガス規制の強化を着実に実施しました。自動車NOx・PM法に基づく自動車使用の合理化等の指導を実施しました。また、排出ガス低減性能の高い自動車の普及及び自動車NOx・PM法の対策地域内における同法に基づく排出基準に適合した自動車の使用を促進するため、排出基準に適合している全国のトラック・バス等に対し「自動車NOx・PM法適合車ステッカー」を交付しました。12月を「大気汚染防止推進月間」として、広く国民を対象に、公共交通機関の利用促進を訴える等、大気汚染防止のための普及・啓発活動を実施しました。

 ア 低公害車の開発等

 次世代低公害車の技術開発としては、ディーゼルエンジンの高い熱効率を維持したまま排出ガスの低減を図ることを目的とした予混合圧縮燃焼エンジン技術、革新的後処理システム技術の開発を進めるとともに、低公害性の抜本的な改良を目指すジメチルエーテル自動車、非接触給電ハイブリッド自動車等の開発を進め、実証走行試験等を実施しました。また、燃料電池自動車について、世界に先駆けた早期実用化を図るため、燃料供給から自動車走行まで一貫した大規模な公道走行実証実験を実施し、航続距離延長に資する高圧水素ステーションの検討を行いました。さらに、自動車税のグリーン化や低公害車に対する自動車取得税の軽減措置等の税制上の特例措置を講じ、低公害車の更なる普及促進を図りました。

 エコドライブについては、地球温暖化防止国民運動「チーム・マイナス6%」の6つのアクションや交通の方法に関する教則に盛り込まれており、その普及啓発を図りました。

 イ 交通管理

 新交通管理システムUTMS)の一環として、交通管制システムの高度化等により、交差点における発進・停止回数を減少させるとともに、光ビーコン等を通じて交通渋滞、旅行時間等の交通情報を迅速かつ的確に提供しました。交通公害低減システムEPMS)を神奈川県、静岡県、兵庫県において運用しました。さらに、3メディア対応型道路交通情報通信システムVICS)車載機の導入・普及等を積極的に推進しました。

 また、都市部を中心に各種交通規制を効果的に実施することにより、その環境の改善に努めました。具体的には、大型車を道路の中央寄りに走行させるための通行区分の指定を行うとともに、大量公共輸送機関の利用を促進し、自動車交通総量を抑制するため、バス優先・専用通行帯の指定、公共車両優先システムPTPS)の整備等を推進しました。都市における円滑な交通流を阻害している違法駐車を防止し、排除するため、駐車規制の見直し、違法駐車の取締りの強化、違法駐車抑止システム、駐車誘導システム等の運用、等のハード・ソフト一体となった駐車対策を推進しました。

 ウ グリーン物流の実現

 運輸部門における温室効果ガス排出量は減少傾向にありますが、我が国全体として京都議定書削減約束達成のための取組を進める必要があり、京都議定書の第一約束期間が始まった今、引き続き、運輸部門においても温室効果ガス排出量削減に向けた取組を推進する必要があります。効率的で環境にやさしい物流(グリーン物流)の実現を目指すためには、物流に関わるさまざまな関係者が連携して地球環境問題に適切に対応することが重要です。そのため、「グリーン物流パートナーシップ会議」を活用し、事業者の連携・協働による取組に対して補助金交付等の支援を行うとともに、特に優れた取組の事業者に経済産業大臣表彰、国土交通大臣表彰等を行いました。

 また、物流の総合的、効率的な実施に対する支援法である流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(平成17年法律第85号)に基づき、施行から21年3月末までに120件の総合効率化計画を認定しました。

 さらに、トラック単体の低燃費化や輸送効率の向上、トラックの自営転換を含めたトラック輸送の効率化を進めるとともに、鉄道や海運のモーダルシフトを推進すべく、鉄道は、平成19年度より北九州・福岡間の輸送力増強事業を実施しており、加えて「エコレールマーク」(21年2月末現在、認定商品32件(37品目)、認定企業50件を認定)や「エコシップマーク」(20年12月現在、荷主12者、物流事業者13者を認定)の普及に取り組んでいます。また、国際海上コンテナターミナル等の整備により、国際貨物の陸上輸送距離削減を図っています。

 エ 公共交通機関利用の促進

 自家用自動車に比べ環境負荷の少ないバス・鉄道などの公共交通機関利用への転換を促進するため、バスを中心としたまちづくりを行うオムニバスタウンの整備推進、バス・鉄道共通ICカードの普及促進、バスロケーションシステムの普及促進、ノンステップバスの導入促進等、バスの利用促進策を講じました。また、軌道改良・曲線改良等の幹線鉄道の高速化等を行う一方、都市鉄道新線の整備、複々線化等の輸送力増強による混雑緩和や、速達性の向上を図りました。さらに、貨物線の旅客線化、駅施設や線路施設の改良など既存ストックを有効活用するとともに、乗継円滑化等に対する支援措置を講じることや駅のバリアフリー化を推進することにより利用者利便の向上策を講じました。

 また、「公共交通利用推進等マネジメント協議会」を通じて、エコ通勤を推進する事務所の公募を行うなど、需要サイドの取組の促進による、マイカーから公共交通等への利用転換の促進を図りました。

 オ ESTの普及展開

 公共交通機関の利用を促進し、自家用自動車に過度に依存しないなど、環境的に持続可能な交通(EST)の実現を目指す先導的な地域の取組に対して集中的に支援策を講じる「ESTモデル事業」を16地域で実施するとともに、平成20年度からは、より積極的にESTの普及推進に取組むEST普及推進地域に選定された3地域への支援を実施しました。その成果を踏まえ、今後の普及展開の在り方についての検討を進めました。


(4)情報通信の活用

 平成22年までにテレワーカーを就業者人口の2割とする政府目標の実現に向け、テレワーク人口倍増アクションプランに基づく施策を政府一体となって推進しており、テレワークの普及促進のための実証実験やテレワーク環境整備税制、セミナー等の普及啓発等を実施し、アクションプランの着実・迅速な実施に取り組みました。

 また、情報通信技術(ICT)が地球温暖化にもたらす影響を明確にするとともに、地球温暖化問題の解決に資するICT政策について検討する「地球温暖化問題への対応に向けたICT政策に関する研究会」を開催し、平成20年4月に報告書を取りまとめ公表しました。

 加えて、国連の専門機関である国際電気通信連合電気通信標準化部門(ITU-T)の「ICTと気候変動に関するフォーカスグループ」のICTと気候変動に関する検討に主体的に関わり、3月の最終会合(広島市)における報告書の取りまとめに貢献しました。



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