第7節 自然とのふれあいの推進

1 自然解説活動及び健全なふれあい利用の推進

 「みどりの月間」(4月15日~5月14日)、「自然に親しむ運動」(7月21日~8月20日)、「全国・自然歩道を歩こう月間」(10月)等を通じて、自然観察会等自然とふれあうための各種活動を実施しました。また、平成19年が自然公園法制定50周年であることを機に、昭和34年から開催してきた「自然公園大会」を、エコツーリズムをはじめ、自然とのふれあいにより重点を置いた「自然公園ふれあい全国大会」と改称し、同年11月に瀬戸内海国立公園六甲地域(兵庫県神戸市ほか)において開催しました。

 国立・国定公園の利用の適正化のため、自然公園指導員の研修を実施し、利用者指導の充実を図りました。また、地方環境事務所等において約1,800名のパークボランティアを養成し、その活動に対する支援を全国24国立公園等40地区で実施しました。さらに、自然解説活動における指導者育成のため、ビジターセンター等の職員の研修を実施しました。

 また、国立公園等において、自然保護官等の指導・協力の下、2,191名の小中学生に「子どもパークレンジャー」として、各種環境保全活動等を体験してもらい、自然環境の大切さなどを学ぶ機会を提供しました。

 国有林野においては、森林教室、体験セミナー等を通じて、森林とのふれあいを楽しみながら理解を深める森林ふれあい推進事業等を実施しました。また、学校等による体験学習の場として利用できる「遊々の森」や国民が中心となった森林整備等の活動の場として「ふれあいの森」の設定を推進しました。

 また、教育関係機関と連携して森林体験活動を促進する「森の子くらぶ活動推進プロジェクト」を実施しました。

 河川など水辺における子どもたちの自然体験活動を推進するため、「子どもの水辺」再発見プロジェクトにより活動を支援するとともに、指導者の育成支援や情報発信を行いました。また、安全に水辺を利用してもらうため、「急な増水による水難事故防止アクションプラン」を策定しました。

 国営公園においては、ボランティア等による自然ガイドツアー等の開催、プロジェクト・ワイルド等を活用した指導者の育成等、多様な環境教育プログラムを提供しました。

2 利用のための施設の整備

 国立・国定公園等の保護と適切な利用を図るため、木材等の自然素材を活用し、周辺の自然環境の保全や、バリアフリー化にも配慮した施設の整備を推進しました。


(1)国立公園の整備

 国立公園の保護及び利用上重要な公園事業は国の直轄事業として実施することとしており、全国29の国立公園において、国立公園の主要な入口における情報提供施設、山岳地域の適正な利用を推進するための登山道、利用拠点における良好な景観形成、その他利用の基幹となる施設の整備を進めました。


(2)国定公園等の整備

 39都道府県において策定されている自然環境整備計画に位置付けられた国定公園の整備、国指定鳥獣保護区における自然再生事業及び長距離自然歩道の整備について、自然環境整備交付金を交付しました。


(3)長距離自然歩道の整備

 自然公園や文化財を有機的に結ぶ長距離自然歩道について、引き続き、北海道、東北、首都圏、東海、近畿、中部北陸、中国、四国、九州の各長距離自然歩道を四季を通じて安全で快適に利用できるよう配慮しつつ整備を進めました。長距離自然歩道の計画総延長は約26,000kmに及んでおり、平成18年には、5,956万人が長距離自然歩道を利用しました。


(4)森林の多様な利用の推進

 保健保安林等を対象として防災機能、環境保全機能等の高度発揮を図る共生保安林整備事業を実施するとともに、国民が自然に親しめる森林環境の整備を行う森林空間総合整備事業等に対し助成しました。

 また、森林環境教育、林業体験学習の場となる森林・施設の整備、学校林の整備・活用を行うモデル学校林の設定等を推進しました。

 さらに、森林総合利用施設等において、年齢や障害の有無にかかわらず多様な利用方法の選択肢を提供するユニバーサルデザイン手法の普及を図りました。

 国有林野については、自然休養林等のレクリエーションの森において、民間活力をいかしつつ利用者のニーズに対応した森林及び施設の整備等を行うとともに、利用者にレクリエーションの森の整備等への協力を求める「森林環境整備事業」を推進しました。また、スポーツ施設、保健休養施設等の総合的な整備により、人と森とのふれあいの場を創造し、合わせて地域の振興等に資するヒューマン・グリーン・プランを推進するとともに、家族等が気楽に自然とふれあえる場を提供する「森林ふれあい基地づくり整備モデル事業」を推進しました。


(5)独立行政法人国立青少年教育振興機構

 (独)国立青少年教育振興機構の施設整備及び立地条件や各施設の特色をいかした自然体験活動等の事業の充実を図りました。


(6)海岸等のふれあい施設の整備

 生物の生息・繁殖場所となる砂浜、干潟などの保全や創出を行う「エコ・コースト事業」を22か所で実施しました。


(7)河川等のふれあい施設の整備

 河川の高水敷やダム周辺等を公園、緑地、運動場等に利用するための整備を「水系環境整備事業」等により行いました。水辺プラザや水辺の楽校等の整備により、水辺での活動を促進し、親水レクリエーションの促進を図りました。

3 エコツーリズムの推進

 エコツーリズムの一層の普及・定着を図るため、これまでの事業に新たな施策を加えた[1]普及啓発事業、[2]ノウハウの確立、[3]人材育成、[4]地域の取組支援等を総合的に実施しました。

 [1]では、JATA世界旅行博2007でのフォーラム開催や、外国人受け入れ体制整備の一環としてエコツアー等の情報を提供する「エコツアー総覧」の英語版製作、第3回エコツーリズム大賞(大賞1団体、優秀賞3団体、特別賞6団体)の環境大臣表彰を、[2]では、エコツーリズム事業者等を対象とした全国セミナーやモデル事業(平成16~18年度)の成果と課題を反映させた推進マニュアルの改訂を、[3]では、自然学校のインストラクターやエコツアーガイドの育成を、[4]では、世界自然遺産地域や国立公園等でのエコツーリズムの推進や仕組みづくりを実施し、エコツーリズムの考え方に基づいた自然や歴史・文化資源の保全と活用の全国的な普及・定着に向けた展開を図りました。

 さらに、エコツーリズム推進法(平成19年6月27日法律第105号)に定める政府の基本方針の検討会を開催し、基本方針策定に向けた作業を進めました。

4 都市と農山漁村の交流

 都市住民の農山漁村情報に接する機会の拡大、地域資源を活用した交流拠点の整備等を総合的に推進し、グリーン・ツーリズムの普及を進め、農山漁村地域の豊かな自然とのふれあい等を通じて自然環境に対する理解の増進を図りました。

 山村においては、都市と山村が連携して取り組む交流活動等を含めた山村の活性化を支援する事業を実施しました。

 漁港、漁村においては、親水機能を有する護岸やキャンプ場等の整備を行う「漁港交流広場整備事業」を全国10地区で、植栽や親水施設等の整備を行う「漁港環境整備事業」を全国38地区で実施しました。また、漁業関係者と遊漁船業者等との協議会、海洋利用に関するルール・マナーの啓発、遊漁船業、ダイビング案内、釣り場等の管理運営等を行い、良好な自然環境の保全を図りながら、都市住民との交流を促進しました。

5 温泉の保護及び安全・適正利用

(1)温泉の保護及び安全・適正利用

 温泉法(昭和23年法律第125号)に基づく平成18年度の許可件数は、温泉掘削534件、増掘37件、動力装置427件、浴用又は飲用3,683件であった。

 国民の温泉に対する関心とニーズが増加・多様化する中、温泉利用事業者に対し温泉成分の定期的な分析と分析結果の掲示の義務付けなどを内容とする温泉法の一部を改正する法律が平成19年4月に成立・公布(平成19年法律第31号)、10月20日に施行されました。

 また、平成19年6月に東京都渋谷区において発生した温泉汲み上げ施設での爆発事故の教訓を踏まえ、温泉の採取等に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害を防止するため、温泉の採取に係る許可制度の創設などを内容とする温泉法の一部を改正する法律が同年11月に成立・公布(平成19年法律第121号)されました。


(2)国民保養温泉地

 国民保養温泉地は、温泉の公共的利用増進のため、温泉法に基づき指定された地域であり、平成20年3月末現在、91か所が指定されています。



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