第3節 大都市圏等への負荷の集積による問題への対策


1 固定発生源対策

大気汚染防止法では窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、ばいじん等のばい煙を発生する施設について排出規制等を行っています。平成17年度末現在におけるばい煙発生施設の総数は約219,000施設で、種類別にみると、ボイラーが約142,000施設(65%)と最も多く、次いでディーゼル機関が約33,000施設(15%)です(図2-3-1)。ばい煙発生施設に対し、17年度には、改善命令が1件行われました。

図2-3-1種類別のばい煙発生施設数


2 移動発生源対策


(1)自動車排出ガス対策
ア 自動車単体対策と燃料対策
自動車の排出ガス及び燃料については、大気汚染防止法に基づき逐次規制を強化してきています(図2-3-2、図2-3-3、図2-3-4)。

図2-3-2ガソリン・LPG乗用車規制強化の推移


図2-3-3ディーゼル重量車(車両総重量2.5t超)規制強化の推移


図2-3-4軽油中の硫黄分規制強化の推移

中央環境審議会では、「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について」が継続的に審議が行われており第五次答申を受け、排出ガス試験モードの変更について、また第七次答申を受け、燃料の低硫黄化について、平成18年11月に告示しました(表2-3-1)。

表2-3-1中央環境審議会での審議状況

これまで未規制であった公道を走行しない特殊自動車に対する排出ガス規制を行う特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律(平成17年法律第51号。以下「オフロード法」という。)に基づき、平成18年10月に使用規制を開始しました。

イ 大都市地域における自動車排出ガス対策
自動車交通量が多く交通渋滞が著しい大都市地域を中心とした、厳しい大気汚染状況に対応するため、関係機関が連携して総合的な取組を行っています。なかでも自動車NOx・PM法(図2-3-5)により関係8都府県が平成15年度に策定した「総量削減計画」に基づき、自動車からのNOx及びPMの排出量の削減に向けた施策を計画的に進めています。また、14年10月から開始された、同法による車種規制の円滑な施行を図るため、排出基準不適合車を廃車して排出基準適合車を取得する際の自動車取得税の軽減措置を引き続き講じるとともに、担保要件の緩和を含む政府系金融機関による低利融資等の普及支援策を講じています。また、中央環境審議会において、今後の自動車排出ガス総合対策のあり方について審議が行われ、19年2月に、「今後の自動車排出ガス総合対策のあり方について(意見具申)」が取りまとめられました。

図2-3-5自動車NOx・PM法の概念


(2)低公害車の普及促進
平成13年に策定された「低公害車開発普及アクションプラン」に基づき、実用段階にある低公害車の普及を目指すこととしています。18年9月末現在、全国の低公害車(軽自動車等を除く。)の普及台数は約1,326万台、燃料電池自動車の普及台数は51台です。
低公害車の普及を促す施策として、自動車税のグリーン化、低公害車の取得に関する自動車取得税の軽減措置等の税制上の特例措置を講じました。また、地方公共団体や民間事業者等による低公害車導入に対し、各種補助を行いました。
また、低公害車普及のためのインフラ整備については、国による設置費用の一部補助と燃料等供給設備に係る固定資産税等の軽減措置を実施しており、平成17年度末までに355か所の燃料等供給施設(エコ・ステーション)が設置されています。

(3)交通流対策
ア 交通流の分散・円滑化施策
バイパス、環状道路を始めとする道路網の体系的整備、交差点及び踏切道の改良を推進しました。ETCの普及を促進するとともに、道路交通情報通信システム(VICS)の情報提供エリアのさらなる拡大及び道路交通情報提供の内容・精度の改善・充実に努めたほか、信号機の高度化、公共車両優先システム(PTPS)の整備、総合的な駐車対策等により、環境改善を図りました。環境ロードプライシング施策を試行し、住宅地域の沿道環境の改善を図りました。

イ 交通量の抑制・低減施策
都市における公共交通機関の整備やサービス・利便性の向上、公共交通機関の利用促進を図りました。また、交通需要マネジメント施策の推進を図り、地域における自動車交通の調整、交通サービスの改善等を行う実証実験に対して、事業費の一部を補助しました。

(4)微小粒子状物質に関する検討
近年、浮遊粒子状物質(SPM)の中でも微小粒子状物質(PM2.5)と健康影響との関連が懸念されつつあることから、PM2.5の測定法について調査・検討を実施しました。さらに、PM2.5の健康影響の評価を進めるため、当該物質についての疫学調査、実測調査、動物実験等を実施しました。また、ディーゼル排気粒子(DEP)については実測調査を実施しました。さらに、粒径がおおむね50nm以下の極微小粒子(環境ナノ粒子)についても、生体影響が懸念されていることから、動物実験等の調査を実施しました。

(5)船舶・航空機・建設機械の排出ガス対策
海洋汚染等防止法に基づき、船舶からのNOx、SOx等大気汚染物質の排出抑制に向けた取組を着実に進めました。また、革新的な環境負荷低減技術の開発と国際海事機関(IMO)における船舶からの排出ガスに関する規制の見直しへの対応についての検討を併せて行う総合的対策を実施しました。
航空機からの排出ガスについては、国際民間航空機関(ICAO)の排出基準を踏まえ、航空法(昭和27年法律第231号)により、炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物等について規制されています。
建設機械のうち公道を走行しない特殊自動車については、オフロード法に基づき平成18年10月より使用規制を開始するとともに、「建設業に係る特定特殊自動車排出ガスの排出の抑制を図るための指針」を策定しました((1)参照)。一方、オフロード法の対象外機種(発動発電機や小型の建設機械等)についても、オフロード法と同等の排出ガス基準値に基づく「排出ガス対策型建設機械の普及促進に関する規程」等を策定し、排出ガス対策型建設機械の使用を推進しました。また、これら建設機械の取得時の融資制度を措置しました。


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