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第6節 

2 調査研究、監視・観測等に係る国際的な連携の確保等

 (1)戦略的な地球環境の調査研究・モニタリングの推進
地球環境保全に関する調査研究については、「平成16年度地球環境保全調査研究等総合推進計画」を踏まえ、国際的な研究計画に参加・連携しつつ、積極的に推進しました。また、「地球環境研究総合推進費」制度の一環として、海外の研究者を招へいして日本の国立試験研究機関等において共同研究を行う「国際交流研究」の枠組み等を活用し、調査研究等の充実、強化を図りました。
監視・観測については、UNEPにおける地球環境モニタリングシステム(GEMS)、世界気象機関(WMO)における全球大気監視(GAW)計画、WMO/ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)合同海洋・海上気象専門委員会(JCOMM)の活動、全球気候観測システム(GCOS)、全球海洋観測システム(GOOS)等の国際的な計画に参加、連携して実施するほか、平成15年6月のG8エビアン・サミットでの小泉総理の提唱に基づき開催された地球観測サミットの第3回会合において承認された「全球地球観測システム(GEOSS)10年実施計画」に基づき、同計画を実施するための国際的組織として設置された地球観測に関する政府間会合(GEO)において、執行委員会国を務めるとともにGEOSSの全体構成を検討する常設委員会である構造・データに関する委員会を共同議長として率いるなど、GEOの活動に積極的に参加しています。また、世界気象機関(WMO)の全球大気監視計画の一環として、温室効果ガス、CFC等オゾン層破壊物質、オゾン層、有害紫外線等の定常観測、エーロゾルライダーを用いたエーロゾルの高度分布の測定を引き続き実施しました。また、世界気象機関温室効果ガス世界資料センターとして全世界の温室効果ガスのデータ収集・管理・提供業務を、WMO品質保証科学センターとしてマレーシアにおける二酸化炭素観測に関する技術支援をはじめとする観測データの品質向上に関する業務を、WMO全球大気監視較正センターとしてアジア地区でのメタン標準ガスボンベの巡回比較業務を実施しました。
また、衛星観測機関と地上観測機関の協力により全地球規模での観測を実現するため、平成10年に関係国際機関による統合地球観測戦略(IGOS)パートナーシップが発足しており、文部科学省及び宇宙航空研究開発機構が地球観測衛星委員会(CEOS)を通じこれに参加しています。
世界の地上気候データのリアルタイム収集やその品質などを監視するGSN監視センター(GSNMC)の業務を平成11年からドイツ気象局と共同で実施しています。
アジア太平洋気候センターにおいて、アジア太平洋地域各国気象機関に対し基盤的な気候情報を引き続き提供するとともに、新たに、向こう3か月間の気温と降水量の階級ごとの出現確率を予測した資料や地球温暖化予測情報第6巻の提供を開始するなど、気候情報提供の改善と拡充を図りました。また、アジア太平洋地域を対象に気候情報の社会経済分野への応用に関する現地調査を行い、域内各国の気候情報の高度化に向けた取組と人材育成に協力しました。
また、VLBI(超長基線電波干渉法)や、GPS(汎地球測位システム)による国際共同事業に参画し、グローバルな地殻変動等の観測・解析を実施しました。また、測地基準系に基づく地球規模の海面変動の監視のための共同研究等を推進しています。
さらに、東アジア地域における残留性有機汚染物質(POPs)の汚染実態把握のための環境モニタリングが円滑に実施できるよう、東アジアPOPsモニタリングワークショップを開催しました。

(2)国際的な各主体間のネットワーキングの充実、強化
アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)の枠組みを活用し、アジア太平洋地域における特に開発途上国の地球変動研究の推進を積極的に支援しました。APNでは、神戸市内に開設したAPNセンターを中核として、気候変動や生物多様性に関する国際共同研究などに対し支援を行い、地域内諸国の研究者及び政策決定者の能力向上に大きく貢献しました。また、開発途上国の地球温暖化に関する科学的能力の強化を図るために、ヨハネスブルグ・サミットにおけるパートナーシップ・イニシアティブのひとつとして提唱した「持続可能な開発のための科学的能力向上プログラム(CAPaBLE)」として、地球温暖化の影響及び緩和策に関する先導的研究や、温室効果ガスの測定手法等について開発途上国の研究者の能力向上等を推進しました。APNにおけるこれまでの活動の評価報告書を踏まえた第2次戦略計画を策定し、一層充実させるための方向性を示しました。さらに、平成17年11月と18年3月には、全球地球観測システム(GEOSS)10年実施計画を具体化するため、能力開発に係るアジア地域での初めての取組として、「アジア太平洋地域における地球観測及び能力開発ニーズに関するスコーピングワークショップ:気候に焦点をあてて」を、東京とバンコクで開催しました。ワークショップでは、能力開発及び地球温暖化/気候変動の専門家が一堂に会し、地球観測分野の能力開発に関わるAPNの役割について議論を行いました。ワークショップの結果、アジア太平洋地域は気候変動に対して脆弱性が高く、気候変動とその影響に係る観測ニーズが一層高まっているが、観測の実施、既存データへのアクセス、データの分析・利用技術、データを利用したシミュレーション技術など多くの分野で能力開発が必要であることが共有され、今後、APNがこうした分野でのネットワーク形成・能力開発に重点を置くことが求められました。
また、地球環境の現状と変動の把握のための「地球地図構想」を提唱し、国際標準化機構等との連携を図りつつ、地球地図データ整備を実施しています。地球地図構想の一層の推進を図るため平成17年4月にはカイロで第12回地球地図国際運営委員会会合を開催しました。
さらに、アジア太平洋地域の持続可能な開発のための政策決定を支援するため、「アジア太平洋環境イノベーション戦略プロジェクト(APEIS)」を推進しました。本プロジェクトでは、第1フェーズ(平成14年度〜16年度)において、アジア太平洋地域の研究機関と共同で、衛星データを活用した統合的環境モニタリング、環境・経済統合モデルによる分析・評価、革新的な戦略オプションの開発を推進しました。また、平成16年のエコアジアにおいてその成果を政策決定者に発信し、17年度からAPFED-II(アジア太平洋環境開発フォーラム第2ステージ)の下で第2フェーズを開始することが合意され、引き続き研究活動を行いました。

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