前のページ 次のページ

第1節 

2 家庭の変化と環境

 (1)世帯構成の変化
少子高齢化が一層進展する中、単独世帯や夫婦のみの世帯数が増加し世帯の少人数化が進むことにより、世帯数は、総人口が減少に転じた後もしばらくの間増加すると予測されています(図1-1-3)。



ア 家庭のエネルギー消費量
世帯においては、風呂、湯沸器などの給湯設備や冷蔵庫、洗濯機、テレビなどの電気製品を共同で使用することが多いため、家庭におけるエネルギー消費量を見ると、世帯を構成する人数が少ないほど1人当たりのエネルギー消費量は増加すると報告されています(図1-1-4)。



図1-1-3の世帯人数別の世帯数の推計値を基に、図1-1-4の世帯人数別のエネルギー消費量の実績値を使用し、その他の条件は変わらないと仮定して、将来のわが国の家庭におけるエネルギー消費量を試算すると、2010年(平成22年)までは、人口の減少による効果を世帯の少人数化による効果が上回ってエネルギーの消費量は増加を続け、2000年(平成12年)に対して4.0%増となります(図1-1-5)。



また、光熱・水道費について、比較のしやすい単身世帯について見ると、年齢が高くなるにしたがって高くなっています(図1-1-6)。これは、高齢化による体温調節機能の低下から、暖房機器等を多用する傾向があること、定年退職等に伴って在宅時間が長くなり、家電製品等の使用時間が増加することなどが関係しているものと推測されます。高齢者の健康管理のためには、冷暖房に頼らざるを得ない面がありますので、今後、高齢化が進むことによっても家庭のエネルギー消費量は増加する可能性があります。



イ 家庭ごみの排出量
世帯から排出される家庭ごみの量を見ると、世帯の構成人数が少なくなるほど1人当たりの家庭ごみの排出量は増加する傾向があります(図1-1-7)。家庭ごみにも、エネルギーの消費と同様、新聞・折込広告のように、世帯人数に影響を受けず、世帯として消費されるものが多いためと考えられます。今後、世帯の少人数化が進展することにより、1人当たりで見た家庭ごみ排出量も、エネルギー消費量と同様に増加することが懸念されます。



コラム 食品ごみの量は料理を作る人の心がけ次第
食材の購入、調理など家庭での食事の主体となる食事管理者の年齢と、家庭で消費される食料(調理済み総菜や弁当類など家庭で調理しないものは含まない)の1人1日当たりの食品ロス(可食部分のうち食べ残されたり廃棄されたもの)との関係を見ると、食品ロス量は、食事管理者の年齢が高くなるほど増加する傾向があり、食品ロス率(可食部分に対する食品ロス量の割合)は、29歳以下及び50歳以上で高くなっています。(図1-1-8)。



食品ロスとは、具体的には以下のものをいいます。
1)食べ残し(食事において、料理・食品として調理されたもののうち、食べ残されて廃棄されたもの)
2)直接廃棄(賞味期限切れ等で、食事において料理・食品として調理されずに廃棄されたもの)
3)過剰除去(可食部分にもかかわらず、調理の過程で骨や皮などの不可食部分に付随して除去され廃棄されたもの。大根の皮の厚むきなど。なお、当然に廃棄される野菜類、果実類の皮や魚の骨など、食品の不可食部分は含まない)
食べ残しについては、食事管理者の年齢や使用する食品の量にかかわらず、どの年齢層でも大きな変化はないことが分かります。
直接廃棄は、29歳以下の若い年齢層については、計画的な食品の購入、消費に不慣れであること、50歳以上については、子どもの自立等による家族の人数の減少に順応できない食品の購入行動等により、増加していると思われます。
過剰除去については、49歳までの年齢層に比べ50歳以上では、約2倍の排出量となっています。これは、50歳以上になると、家庭で食事をとる回数が多くなることにより、使用する食品の量が2割から3割多いことに加え、調理の過程で可食部分を不可食部分とともに切り取って捨ててしまう割合が多い食材(野菜類、果実類、魚介類など)を多く使用していることが原因と思われます。
一般に、現在の高齢者は若者に比べ「もったいない」という意識が強く、ものを大切にするといわれていますが、食品を多量に購入し賞味期限切れ等で多く廃棄していることから、必ずしもそうではないということが分かります。
飽食の時代に生まれ育った世代が、将来高齢者となったときに食品の購入や消費についてどのような行動をとるのか、環境負荷の点からも注目に値するところです。




(2)生活スタイルの変化
私たちの生活は、勤務時間帯が夜間や早朝に広がっていることなどを背景に、24時間中いつでも誰かが必ず活動する、いわゆる「生活の24時間化」が進んでいるといわれています(図1-1-9)。



ア 自動販売機
24時間いつでも商品を購入できる自動販売機は、平成16年12月末時点で5,548,100台となっており、今や自動販売機1台当たりの人口は23人と、世界一の自動販売機普及国となっています(図1-1-10)。



この結果、自動販売機工業会によると、自動販売機による平成16年の年間総消費電力量は約52億kWh、二酸化炭素排出量は約211万トン(二酸化炭素換算)となっており、国内総排出量の0.17%を占めるに至っています。
イ コンビニエンスストア
24時間営業の代名詞ともいえるコンビニエンスストアは、今や国民生活の一部となっており、近年、店舗数、床面積ともに大幅に拡大しています(図1-1-11)。



コンビニエンスストアの売場面積当たりのエネルギー消費原単位は、夜間営業を行う際の照明等の影響で、小売業平均と比べて約3倍になっています(図1-1-12)。



この結果、コンビニエンスストア全体の二酸化炭素排出量は増加の一途をたどり、2003年(平成15年)時点で254.9万トン(二酸化炭素換算)であり、国内の二酸化炭素総排出量の0.20%を占めています。また、1990年(82.3万トン)に比べ、310%の増加となっており、企業・公共部門の15年度の二酸化炭素排出量が対90年比6.9%増であることに比べれば、著しく増加しているといえます。
深夜営業の動きは、規制緩和の影響等により食品スーパーなど他の形態でも広がりを見せています。今後、世帯の少人数化や高齢化の進展に加え、24時間化の生活スタイルが浸透することにより、このような深夜営業の形態はさらに拡大していく可能性があります。

(3)これからの家庭生活のあり方
今後、人口は減少していきますが、世帯構成や生活スタイルの変化などによって、環境への負荷は増大する可能性があることを見てきました。わが国の二酸化炭素排出量のうち、家庭からのものが徐々に割合を大きくしてきています。二酸化炭素排出量の削減に向けての取組は待ったなしの状況です。
私たちは引き続き日常生活から発生する環境負荷を低減するよう努力していかなければなりません。例えば、温室効果ガスの削減を目指した国民的プロジェクト「チームマイナス6%」で提案されている「冷房は28℃、暖房時の室温は20℃にしよう」「過剰包装を断ろう」「コンセントからこまめに抜こう」や「家族同じ部屋で団らんして「コマメ」に節約しよう」など家庭でのこまめな取組、3Rの推進に向けた「計画的な食品の購入」による食品ごみの削減や「もったいないふろしき」「もったいないバック」の活用による容器包装の削減など、日常生活におけるちょっとした心遣いが大切です。今後は、そうした日常生活における環境配慮行動を根付かせていくための工夫ある取組が必要となります。

前のページ 次のページ