2 今後、何が起こるのか
IPCCでは、将来起こり得る地球温暖化の可能性を示すために、温室効果ガス排出シナリオを作成し、将来の温室効果ガス排出量の変化と、それに伴う気温上昇など一連の予測を行っています。さらに、そのシナリオに応じて、どの程度気温が上昇し、どの程度リスクが増加するのかを5つの指標を用いて示しています(図1-2-2)。
IPCC第3次評価報告書では、地球温暖化の影響による気温の上昇が少ない段階では、一部の地域や分野に好影響をもたらす可能性があるものの、気温の上昇とともにリスクが増加することが示されました。また、影響が現れる程度は世界で一様でなく、国や地域によって異なること、影響に対する備えの程度によって、人や生態系への被害の程度が異なることなども示されました(表1-2-2)。
さらに、平成17年2月に英国で開催された「温室効果ガス安定化に関する国際会議」では、IPCC第3次評価報告書以降の新しい知見が発表され、多くの場合、地球温暖化の影響は以前考えられていたよりも深刻であることが示唆されました。
コラム 「デイ・アフター・トゥモロー」は本当に来るのか
平成16年に公開された映画「デイ・アフター・トゥモロー」では、長期的な地球温暖化の進行によって海洋大循環が停止し、その結果、北半球で急激に気温が低下してパニックが発生することが描かれています。
この映画はフィクションであり、科学的に起こり得ない現象も含まれています。しかし、IPCC第3次評価報告書によると、地球温暖化の影響として、海洋の循環が弱まると予測されています。このほか、地球温暖化の進行に伴って、海洋や陸域で吸収されるCO2が減少することが予測されており、このため大気中のCO2濃度がさらに増加すると考えられています。また、グリーンランドで気温が3度以上高い状態が数千年続くと、グリーンランドの氷床は完全に溶け、海面水位が7m上昇するという大規模な特異現象も予測されています。