3 日本でも起こり得る深刻な影響
日本では20世紀中に平均気温は約1℃上昇しました(図1-2-3)。また、近年、一部の高山植物の生息域の減少、昆虫や動物の生息域の変化、桜の開花日やカエデの紅葉日の変化など、生態系の分布に変化が現れており、豪雨の発生頻度の増加なども観測されています。このような気象や生態系の変化の原因の一つとして地球温暖化が指摘されています。しかし、今のところ、これまで起きている具体的な事象と、人の活動が原因で起こる気候変動との因果関係についての科学的根拠は十分に確立されておらず、今後のさらなる研究の進展が期待されます。
このように、科学的な不確実性は残っているものの、将来、日本においても、こうした気候の変化やその影響が、より深刻になるという研究も発表されており、私たちは予防原則に基づき、気候変動問題への対策を世界規模で推し進めていかなければなりません。
コラム 日本では何が起こるのか
わが国では、ソメイヨシノの平成元年〜12年の平均開花日が平年より3.2日早まり、イロハカエデの紅葉日が過去50年間で約2週間遅くなるなどの生態系の変化が報告されています。
今後地球温暖化が日本に与える影響について、気象庁気象研究所などは、二酸化炭素の大気中濃度が、毎年、前年比1%ずつ増加するなどと仮定した温室効果ガス排出シナリオを用いて予測を行いました。その結果、日本付近での100年間の年平均地上気温の上昇や、海面水位の上昇は、世界の平均よりもやや大きくなると予測されています。そして、こうした気候の変動は、生態系、農業、社会基盤、人の健康などに多大な影響を与えることが予想され、私たちの生活形態が一変する可能性が指摘されています。
地球温暖化が日本の気候に与える影響について、東京大学、国立環境研究所、海洋研究開発機構の研究グループが、地球シミュレータによる予測計算を行っています。それによると、今後、日本の猛暑、豪雨の頻度が一層増加することが予測され、100年後には6〜8月の日平均気温が環境重視で国際化が進むシナリオ(2100年の二酸化炭素濃度が550ppm)でも3.0℃、経済重視で国際化が進むシナリオ(2100年の二酸化炭素濃度が720ppm)では4.2℃上昇し、これに伴い、真夏日は50〜70日増加し、降水量も17〜19%増加すると予測されています。