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第2節 

2 内分泌かく乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)問題について

 内分泌系に影響を及ぼすことにより生体に障害や有害な影響をおこす外因性の化学物質は、内分泌かく乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)と呼ばれています。
 内分泌かく乱化学物質問題については、その有害性など未解明な点が多く、関係府省が連携して、汚染実態の把握、試験方法の開発及び健康影響などに関する科学的知見を集積するための調査研究を、国際的に協調して実施しています。
 環境省は、平成10年5月に内分泌かく乱化学物質問題への対応方針として、「環境ホルモン戦略計画SPEED'98」を取りまとめ、本方針に基づき、一般環境中(大気、水質、底質、土壌、水生生物)での検出状況及び野生生物における蓄積状況等を全国的な規模で調査するなどの取組を実施しています。
 環境リスク評価に係る具体的な取組として、優先的に取り組む物質を選定し、順次調査を実施しています。平成12年度は12物質、13年度は8物質、14年度は8物質、15年度はさらに8物質を選定し、哺乳類、魚類を使った動物実験による有害性評価を進めています。
 これまでに、19物質について哺乳類(げっ歯類)を用いた人健康影響に関する有害性評価結果及び魚類を用いた生態系影響に関する有害性評価結果を取りまとめました。この中でノニルフェノール及び4-オクチルフェノールについては魚類に対して内分泌かく乱作用を有することが強く推察されました。また、平成13年には、国立環境研究所に環境ホルモン総合研究棟が設置され、同施設を拠点とした質の高い調査研究が進められています。さらに、平成15年10月には、SPEED'98の平成16年度中の改定に向けた作業に着手しました。また、OECDを中心として先進各国が協力・分担して取り組んでいるスクリーニング試験法等の開発に参加しています。さらに、日英国際共同研究、日韓国際共同研究を行っているほか、平成10年から毎年開催している「内分泌かく乱化学物質問題に関する国際シンポジウム」を、平成15年は仙台市で開催しました。
 厚生労働省では、人に対する健康影響を調査するため平成8年度から文献調査を実施するなど必要な情報の収集に努め、10年11月、「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会」の中間報告書を取りまとめました。また、13年12月には、新たに得られた知見、今後実施されるべき調査研究及び行動計画を含む中間報告書追補を取りまとめました。現在引き続き、研究や必要な調査を推進し、科学的な知見の収集に努めています。
 経済産業省では、国際的な動向に留意しながら、厚生労働省と共同で内分泌かく乱作用に関するリスク評価スキームの確立を目指し、スクリーニング試験法の開発等を推進しています。また、内分泌かく乱作用によってもたらされる有害影響(毒性)に対しては、適切なリスク評価に基づいた効果的な対応が必要であることから、化学物質審議会内分泌かく乱作用検討小委員会を中心に、さまざまな科学的情報を収集しています。SPEED'98の調査対象となった物質のうち、日本での生産・使用実態がないとされた物質群、農薬取締法に基づき登録されている農薬やダイオキシン等の各種対策が進められている物質群を除き、平成14年度4月に有害性評価書を作成・公表した15物質のうち7物質について追加試験をして実施された二世代繁殖毒性試験の結果を15年7月に公表しました。また、得られた有害性評価結果を踏まえ、三つの物質群について化学物質リスク評価管理研究会を独立行政法人製品評価技術基盤機構に設置してリスク評価情報の取りまとめを進めており、15年9月より逐次公表しています。
 国土交通省では、環境省と連携し平成10年度から水環境中の内分泌かく乱化学物質の存在状況を把握するため、全国109の一級河川を対象に、水質及び底質の調査を実施するとともに、主要な下水道における流入・放流水の水質調査を実施しています。また、代表河川における挙動や流入実態の調査、河川浄化施設等の除去効果把握調査等を実施し、今後の河川における内分泌かく乱化学物質の管理のあり方について検討を行いました。 
 国際的な検討の成果としては、平成15年3月、OECDの内分泌かく乱化学物質の試験及び評価に関するタスクフォース会合の非動物試験検証管理グループの第1回会合が開催され、日本及びアメリカがリード国となって動物を用いずに内分泌かく乱化学物質の試験と評価を行う手法開発のための取組が進められることとなりました。

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