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第2節 

3 金融での環境配慮

(1)金融機関の環境への関心
 近年、金融機関の環境への関心が高まっています。平成15年10月、東京で国連環境計画・金融イニシアティブの会議が開かれました。今回の会議は、30以上の国の約100の金融機関から約500名が参加して開催されました。そしてその議論の集大成として、1)環境に配慮した投融資対象の選定、2)環境に資する金融商品の開発、3)最適な環境ガバナンス体制整備、4)ステークホルダーとの対話を内容とする、環境に配慮した金融機関の今後の活動のあり方を示した「持続可能な社会の実現に向けての東京原則」が発表されました。
金融機関の環境への関心には、以下のような背景があります。
1)環境問題は、金融機関の経営そのものに影響を及ぼす可能性があります。例えば融資対象企業が土壌汚染・地下水汚染の判明を契機としてその対策に予想外の支出を強いられたり、土地取引に伴う損害賠償の支払い義務が生じることにより資金繰りに窮し、返済が滞るリスク(信用リスク)があります。これに関連して、担保設定した土地が汚染されていたために期待した水準の回収が困難となる等、担保リスクの問題もあります。
2)金融機関にとって、環境問題への対応が新たな事業機会になることがあります。これは、リスク管理を中心として活動してきた伝統的な金融事業とは異なる、新たな動きです。
3)金融機関は紙の使用や電力等のエネルギーの使用により環境に対して負荷を与えており、他の事業と同様ISO14001の取得が増えてきています(「銀行・信託業」及び「保険業」で50件(平成16年1月現在。(財)日本規格協会(環境管理規格審議委員会事務局)調べ))。

(2)金融関係の環境の取組
 金融機関は、事業者への資金の再配分を通じて間接的に環境に大きな影響を及ぼしており、環境問題に対する関心が事業経営に織り込まれるよう融資対象企業等に働きかけることができます。金融機関のこのような機能について、いくつかの取組が行われてきました。
 例えば、バーゼル銀行監督委員会の「自己資本に関する新しいバーゼル合意」の市中協議案には、環境リスク管理体制の整備の必要性が挙げられています。
 国内では、平成8年11月に(社)日本損害保険業協会が「損害保険業界の環境保全に関する行動計画」を策定したほか、全国銀行協会が、平成13年9月、地球温暖化対策や循環型社会の構築などに向けて、(社)日本経済団体連合会の環境自主行動計画に参加し、環境問題に関する以下のような行動計画を決定しました。
 1) 省資源・省エネルギー対策の推進による資源の効率的利用
 2) リサイクルを推進することによる循環型社会構築への取組
 3) 環境面に着目した金融商品の開発・提供等、お客様の環境意識の高まりに対応した業務展開

(3)投融資・保険の新しい動き 
 欧米においては、投資対象企業の社会、環境、倫理的側面に配慮した「社会的責任投資(SRI:Socially Responsible Investment)」が増加してきています。これは、投資対象企業の短期的な財務パフォーマンスだけではなく、社会、環境、倫理的側面からの価値判断も加えて意思決定を行う投資行動です。その例として、エコファンドと総称される環境経営度の高い企業を投資対象とする投資信託があります。
 また、日本政策投資銀行は、平成16年度から「環境配慮型経営促進事業」という新しい融資制度を開始することとしています。この制度は、対象企業の環境リスクや持続可能性への取組を評価した環境格付けを行って、環境に配慮した経営を行う企業を選定し、融資に適用される金利を変えるなど、企業の環境への取組を融資の判断基準等に加えるものです。
 さらに、土壌汚染によるリスク管理をサポートするためのリスク評価がビジネスとなってきています。土壌汚染に係る対策費用等の負担に対するリスクについては、それらをカバーする保険の開発などが行われています。
 その他、例えば低公害車の購入について、銀行の中には低金利の融資を行っているところがあります。保険会社の中には、保険料率を割り引く「エコカー割引」を行っているところもあります。

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