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第2節 

4 環境保護で築く信頼感

 事業者は、環境保全のための新たな技術の開発や、環境に配慮した製品の開発など、環境負荷の低減にも寄与することができる立場にあります。グローバル化によって事業者の活動領域が広がる中、事業活動が環境に与える影響も、地球規模で拡大しています。
 また、国民の環境保全意識も高まっており、企業に求める役割も変化しています。内閣府の「国民生活モニター調査」(平成13年9月)によると、企業の社会的役割として、回答者の66%が「環境保護」を挙げており、また、今後企業が社会的信用を得るために力を入れるべきものとして、回答者の71%が「環境保護」を挙げています。
 加えて、近年「企業の社会的責任(CSR)」という考え方も注目されるようになっています。「企業の社会的責任」とは、企業が利潤を上げ経済的な責任を果たすだけではなく、法令の遵守、環境保護、人権擁護、消費者保護などの社会的側面にも責任を有するという考え方です。積極的に社会的責任を果たすことが消費者や投資家の信頼を集めることとなり、業績の向上や株価の上昇による資金調達の容易化をもたらすことができるという考え方も、広がりつつあります。
 企業が社会から期待される役割がこのように変化している中で、環境保全に関してより積極的な対応をしていると社会から評価されることが、事業者にとって重要となってきます。このような評価を確立するため、各事業者は、第1節で紹介した「環境のわざ」が盛り込まれた製品やサービスを市場に提供することに加え、環境報告書など事業者が持つコミュニケーションのツールを活用してきました。最近は、いわゆる「業界トップ」や「地域の顔」といった企業のみならず、今後市場拡大を目指す事業者や地場産品・農産物の高付加価値化を狙う地域にも、このような動きが拡大しています。

コラム 企業の社会的責任(CSR)をめぐるさまざまな動き
 CSRについて、EU理事会は、平成14年7月、「企業の社会的責任:持続的な発展への企業貢献」という報告を出しました。この報告では、EUがあらゆる側面でCSRに取り組んでいくことを表明し、企業のCSRに関わる情報公開や監査等についての具体的指針を示しました。
 ISOは、平成14年に、消費者政策委員会でCSRの国際規格化について検討し、第1世代のマネジメントを「品質」(ISO9000)、第2世代のマネジメントを「環境」(ISO14001)、第3世代のマネジメントを「企業の社会的責任」と位置づけました。消費者政策委員会の勧告に基づき、技術管理評議会の下の高等諮問委員会でCSRが議論され、平成16年4月に報告書の最終案が技術管理評議会に報告されました。
 国内でも、CSRに関してさまざまな議論が行われています。(社)日本経済団体連合会では、CSRの推進には積極的に取り組むものの、CSRは民間の自主的取組で進めるべきとして、CSRの規格化や法制化に反対する一方、「企業行動憲章」等をCSRの観点から見直し、CSR指針として世界に発信していくこととしています。
 平成16年1月、環境省は、環境報告書ネットワーク、日本経済新聞社、(財)地球・人間環境フォーラムとの共催で、「CSRと信頼性確保」をテーマとするシンポジウムを開催し、環境報告書や持続可能性報告書、CSRの考え方について議論を深めました。経済産業省では、平成14年に「CSR標準委員会」を設け、国際的な動向を調べるとともに、国際標準化のあり方について議論しています。

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