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第2節 

2 環境報告書

 環境報告書は、企業等の事業者が、自ら行う環境保全に関する方針・目標・計画、環境マネジメントに関する状況(環境マネジメントシステム、法規制遵守、環境技術の研究開発等)、環境負荷の低減に向けた取組の状況(二酸化炭素排出量の削減、廃棄物の排出抑制等)などの環境情報を総合的に取りまとめ、一般に公表するものです。
 その意義としてまず挙げられるのは、事業者と社会をつなぐ環境コミュニケーションの重要な手段ということです。株主、金融機関、取引先、消費者などの利害関係者は、事業者が環境問題に対し、どう考えどう行動しているか、環境報告書によって知ることができます。環境報告書はまた、作成事業者が事業活動を通じてどのような環境負荷を発生させ、これをどのように低減しようとしているのか、どのように環境保全への取組を行っているのかなどについて、外部の利害関係者に対して明らかにするための有効な情報提供の手段です。さらに、環境報告書の作成・公表は、事業者自身の環境配慮に関する方針、目標、行動計画等の策定や見直しを行うためのきっかけとなります。自社の取組内容を従業員に理解させ、その環境意識を高めるためにも、環境報告書は有益な手段です。
 消費者、取引先、投資家や求職者等が、環境報告書に記載された情報を判断材料として、事業者や製品・サービスを選択するようにすれば、積極的な環境配慮の取組が社会や市場で高く評価されるようになり、これが社会全体として一層の環境配慮を促すことにつながります。

 環境報告書を作成・公表する企業数は、着実に増加しています(図1-2-2)。企業行動調査によると、21.9%の企業が環境報告書を既に公表していると回答しています。上場企業では平成14年度に34%の企業が、非上場企業では12.2%の企業が環境報告書を公表しています(図1-2-3)。





 環境報告書の普及促進のため、さまざまな取組が行われています。国では、環境報告書作成のためのガイドラインを策定し、公表しているほか、環境報告書のデータベース運営、シンポジウムの開催等を行っています。民間では、環境報告書ネットワークの活動や環境レポート大賞等の取組が行われています(表1-2-2)。



 また、国際的には、民間レベルで環境報告書の記載内容等に関するさまざまなガイドラインが発行されています。環境情報開示に関する制度化の動きもみられます。例えば、デンマークやオランダなどでは、法律等により、環境報告書の作成・公表が行われています。このほか、フランスやノルウェーなどでは、環境面の取組を財務に関する年次報告書へ記載することが制度化されています。

 規制改革推進3か年計画(再改定)(平成15年3月閣議決定)は、環境報告書や環境会計の普及促進及び信頼性確保を課題として挙げました。信頼性を確保するため、近年、第三者審査を受ける報告書が増えています。企業行動調査によると、「環境報告書を作成している。」と回答した650社のうち、第三者審査を既に受けている企業数は131社、今後受けることを検討している企業数は190社にのぼっています(図1-2-4)。また、第三者審査に関するガイドラインの作成や検討が、国内外のいくつかの機関で行われています。



 近年、企業の社会的責任に関する議論の高まりを背景として、従来の環境面に加えて、社会的な側面を加えた「持続可能性報告書」や「CSR(企業の社会的責任)報告書」等を作成する事業者が増えてきています。企業行動調査によると、環境報告書を作成・公表している事業者のうち、「持続可能性報告書を作成・公表している」又は「社会・経済的側面についても可能な範囲で記載している」と回答した事業者の割合は、4分の1を超えています(図1-2-5)。



 ここまで見てきたように、環境報告書は、利害関係者に対する有力な情報開示手段となっています。そこで、環境報告書等による環境情報の開示を進めるとともに、その情報が社会全体として積極的に活用されるよう促すため、「環境情報の提供の促進等による特定事業者等の環境に配慮した事業活動の促進に関する法律案」が閣議決定され、第159回国会に提出されました。この法律案は、国による環境配慮等の状況の公表、特定事業者による環境報告書の公表、民間の大企業による環境報告書等の自主的な公表、環境情報の利用の促進等を内容としています(図1-2-6)。


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