8 自然とのふれあいの推進
(1)自然とのふれあいの確保
ア 必要な施設の計画的な整備
(ア)国立・国定公園等の整備
a 環境共生推進特別整備事業(共生プラン21)
二酸化炭素吸収源ともなる植生の復元、歩くことを中心とする地球にやさしいライフスタイルの推進のための施設、地球温暖化防止に資する自然エネルギーを活用した施設など、地球環境にやさしい施設を引き続き整備します。
b 自然学習環境整備事業
国立・国定公園の主要な利用拠点において、自然を活かした学習やゆとりのある滞在生活を通じ、誰もが親しみやすい形で自然に学ぶことができる質の高い場や機会を提供するための施設を引き続き整備します。
c 自然公園総合整備事業
国立・国定公園の核心となる特にすぐれた自然景観を有する広範な地域において、自然の保全や復元のための整備を一層強化するとともに、高度な自然学習や自然探勝のフィールドの面的な整備を行う自然公園核心地域総合整備事業(緑のダイヤモンド計画)を引き続き推進します。
また、核心地域に準ずる利用拠点について、これからの時代にあった自然滞在型、個人行動型、高齢者・障害者対応型の公園利用への転換を行う自然公園利用拠点新活性化事業を実施します。
d 基幹的施設の整備
自然環境の保全に配慮しつつ、自然とのふれあいを求める国民のニーズにこたえ、安全で快適な利用を推進するため、歩道、野営場、園地等利用の基幹となる施設の整備を引き続き推進します。
(イ)身近な自然地域の整備
身近な自然を活用し、生き物とふれあい、自然の中で憩い、国民が自然との共生を実感できる拠点(1)ふるさといきものふれあいの里、2)ふるさと自然のみち、3)ふるさと自然塾、4)ふれあい・やすらぎ温泉地)の整備を「ふるさと自然ネットワーク」として推進します。
また、都道府県立自然公園の主要な利用拠点について、都市住民が自然とふれあう場を提供するため、ふるさと自然公園国民休養地の整備を推進します。
(ウ)自然歩道ネットワークの整備
a 長距離自然歩道
北海道自然歩道及び近畿自然歩道の整備を図るとともに、老朽化した東北、首都圏、東海、中部北陸、中国、四国、九州の各自然歩道の施設について再整備を行います。
b 利用集中特定山岳地域登山歩道整備事業(日本百名山歩道)
中高年等の登山ブームを背景に、登山者が集中して植生の荒廃や侵食を招いている特定山岳地域の登山歩道について、山岳地の景観と環境を守るとともに、山岳の雰囲気を壊さず山岳利用が行えるよう登山道及びその周辺の侵食防止工・植生回復工、安全確保等に不可欠な標識等の情報提供施設、駐車場等の整備を推進します。
(エ)保健保安林、レクリエーションの森
都市近郊等における生活環境保全機能及び保健休養機能の高いすぐれた森林である保健保安林等の指定を推進し、安全快適な利用の促進を図るための施設整備につき助成する等のほか、共生保安林整備事業を推進します。また、国民が自然に親しみ得る森林環境の整備を行う森林空間総合整備事業等につき助成します。
国有林野については、自然休養林等のレクリエーションの森において、森林及び施設の整備等を行うとともに、利用者にレクリエーションの森の整備等への協力を求める「森林環境整備推進協力金」制度を推進します。
また、スポーツ施設、保健休養施設等の総合的な整備により、人と森林とのふれあいの場を創造し、あわせて地域の振興等に資するヒューマン・グリーン・プラン及び家族等が気軽に自然とふれあえる場を提供する「森林ふれあい基地づくり整備モデル事業」を推進します。
また、国民が中心となった森林の整備等の活動の場として「ふれあいの森」の設定を推進するとともに、貴重な環境指標であり、次世代に残すべき遺産として選定した国有林野内の代表的な巨樹・巨木100本(「森の巨人たち百選」)の保護を図るための地域の取組に対する支援を行います。
(オ)森林の多様な利用の推進
森林に対する国民の要請が多様化する中で、森林の持つ多面的な機能を発揮させるための施策の一環として、森林環境教育の推進、身近な森林における多様な活動の展開、森林づくりへの国民の直接参加、森林を活用したすべての世代の健康づくり等、森林の多様な利用とこれに対応した森林の整備を推進します。
具体的には、平成14年度に完全学校週5日制等が導入された中で、森林環境教育、林業体験学習の場となる森林・施設の整備、フィールド及び指導者の募集・登録と関連情報の一体的提供、企画・運営者の育成や学校林の整備・活用、都市部の子どもたちを対象にした山村地域滞在型の森林・林業体験交流活動等を推進するとともに、子どもたちの入門的な森林体験活動を促進する「森の子くらぶ活動推進プロジェクト」を実施します。
さらに、森林の有する保健休養機能に対する国民のニーズが高まっていることから、森林総合利用施設等において、年齢や障害の有無にかかわらず多様な利用方法の選択肢を提供するユニバーサルデザイン手法の導入を図るとともに、新たに里山林等を活用した健康づくりのための協力体制の整備や利用活動に対する支援を行う「健康と癒しの森」づくり等を推進します。
(カ)独立行政法人国立少年自然の家
引き続き独立行政法人国立少年自然の家の施設整備及び事業の充実を図ります。
(キ)白砂青松の創出、エコ・コースト事業、海と陸の緑のネットワーク事業
自然豊かな海岸づくりを推進するため、海岸事業と治山事業を一体的に行い、海と緑の豊かな海岸環境を確保する白砂青松の創出を実施し、また、自然と共生し、生物の豊かな生息環境を保全・創出するために生物の生息・繁殖場所となる砂浜、干潟等の保全や創出を行うエコ・コースト事業及び他の自然環境保全に係る事業との連携を図り陸域から海岸域までのビオトープを形成するための海と陸の緑のネットワーク事業を実施します。
また、国民の祝日である「海の日」を祝賀して、海浜清掃活動等を行っているさまざまな組織の支援を通じた海と渚の環境美化活動を全国民的な運動に一層広げていくため、総合的な美化計画の策定や指導員の養成等を中心とする海と渚の清掃活動推進事業等を実施します。
(ク)水辺環境の再生・創造
地域住民が身近に水に接する場である水辺地においては、排水規制、浄化施設の整備等従来からの水質保全施策に加え、住民が水辺環境に関心をもち、生活の中で水と人との関係を考えていくことができる基盤づくりや、自発的に環境保全に参加できる環境づくりの施策を展開します。特に、住民に身近な水路、水辺の環境を整備する「水辺空間再生施設整備等事業費補助」や生活排水による汚濁が著しい地域の水路に浄化施設を整備する「生活排水汚濁水路浄化事業費補助」により、積極的に水辺環境の整備を推進していきます。
また、地下水かん養施設等の水循環再生施設を整備する「水循環再生施設整備事業費補助」により、地下における健全な水循環の回復を図ります。
イ 自然解説活動等の展開
人々の自然への理解を深め、自然に対する愛情とモラルを育成するため、ビジターセンター等において、自然観察会等自然とふれあうための各種の活動を実施します。
各種の自然とふれあうための施設や自然観察路を活用し、4月29日の「自然とふれあうみどりの日の集い」、7月21日から8月20日の「自然に親しむ運動」、10月の「全国・自然歩道を歩こう月間」等を通じて、自然とのふれあいを積極的に推進します。
なお、「自然に親しむ運動」の中心行事として水郷筑波国定公園(茨城県)において、第45回自然公園大会を開催します。
また、全国の国立公園等において、自然保護官等の指導・協力の下、小中学生を「子どもパークレンジャー」として任命し、国立公園等のパトロールやマナーの普及、自然環境の維持・復元活動等に参加してもらうプログラムを実施することにより、自然とのふれあいを推進し、環境の大切さ及び社会への貢献の心を学ぶ機会を提供します。
国有林野では、森林教室、体験セミナー等を通じて、森林とのふれあいを楽しみながら理解を深める森林倶楽部(森林ふれあい推進事業)等を実施します。
川は人々の交流の場でもあり、体験を通じた学びの場でもあります。近年、川を舞台としたさまざまな自然体験活動が活発に行われるようになってきており、子どもたちが親しめる水辺として川を活用するプロジェクトや情報発信を行います。
国営公園においては、自然ガイドツアーや、環境・自然をテーマとした体験活動型のイベントを開催するなど、気軽に自然とふれあう機会を提供します。
ウ 環境保全型自然体験活動(エコツーリズム)の推進
国立公園等における環境保全型自然体験活動を推進するため、「離島」、「山岳」、「河川・湿原」等のモデル地域において、地域固有の自然資源等の調査や運営体制づくりの検討等を実施します。
(2)健全なふれあい利用の推進
自然公園における動植物の保護や美化思想の普及等の適正化のため、自然公園指導員を委嘱するとともに研修を実施し、利用者指導の充実を図ります。また、自然保護事務所においてパークボランティアの養成及びその活動に対する支援を行います。さらに、自然解説活動における指導者育成のためビジターセンター等の職員の研修を実施します。また、藤里森林センターにおいては、森林・林業や自然環境の保全に関する普及啓発活動推進のため、林内展示施設等を整備します。
(3)都市と農山漁村の交流
健康、ゆとり、やすらぎ、自然など都市住民の農業・農村への多様なニーズが高まっていますが、都市に向けた情報発信の不足や農山漁村での地域内連携、提供メニューの不備等に起因して、グリーン・ツーリズム等の実際の交流活動に十分結びついていない状況にあります。
このため、都市住民の多様なニーズに十分対応できるよう、都市部における潜在需要の掘り起こしと農山漁村における受入体制づくりを一体的・戦略的に進めていく観点から、1)共生・対流に向けた国民運動の一環として、都市住民の潜在的需要を踏まえたグリーン・ツーリズムの新たなスタイルを提案・普及、2)都市部での農山漁村情報提供の充実強化及び都市側と受入れ側とのマッチングの推進、3)グリーン・ツーリズムビジネスの起業家、体験指導員等の人材の育成・確保、4)多様な関係者が参画した地域ぐるみの受入れシステムや地域資源を活用した都市住民に魅力ある交流空間の整備の4つの戦略を通じて、都市住民のニーズに応じたグリーン・ツーリズム等を推進します。
また、子どもたちの都市農村交流機会の増大を図るため、農村部における都市部からの小中学生の受入れ体制を整備し、修学旅行や夏休み、週末等を利用した農業・農村体験活動を促進します。
さらに、構造改革特別区域法(平成14年法律第189号)により、NPO、民間企業等による市民農園の開設を可能とする特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律(特定農地貸付法 平成元年法律第58号)等への特例措置を講じたところであり、こうした制度の活用により、都市と農村の交流を促進するとともに、多様な形態での「農」へのかかわりを求める都市住民のニーズへの対応を図ります。
山村においては、都市部の子どもたちを対象とした山村地域滞在型の森林・林業体験交流活動を実施するとともに、都市が山村で行う「ふるさと共生の森」の設定等森林と人との共生林の整備に向けた条件整備や里山林等を活用した健康づくりを行う「健康と癒しの森」づくりを推進します。
また、漁村においては、漁業体験活動を中心とした都市と漁村との交流推進等地域の活性化を図るための具体的な取組を支援する「漁村コミュニティ支援事業」を実施します。
また、豊かな自然と景観に恵まれた漁港、漁村においては、都市住民等へ海と自然とのふれあいを提供するため、親水機能を有する護岸やキャンプ場等の整備を行う漁港交流広場整備事業や漁港における景観の保持や美化を図るため、植栽や親水施設等の整備を行う漁港環境整備事業を推進します。さらに、漁港内において漁船とプレジャーボート等とのトラブルを防止し、漁業生産活動の円滑化を図り、都市と漁村との交流促進を促す海洋性レクリエーション空間の創出に資するフィッシャリーナの整備を漁港利用調整事業及び漁港漁村活性化対策事業等により推進します。これらに加え、漁業と調和した健全な海洋性レクリエーションの発展を図るため、漁業関係者と遊漁船業者等との協議会の設置を促進するとともに海洋利用に関するルール・マナーの啓発を行います。また、地域の活性化を図るため沿岸域を熟知している漁業者自らが主体となって遊漁船業、ダイビング案内、釣り場等の管理運営等を行うことにより、良好な自然環境の保全を図りながら都市住民との交流を促進します。
さらに、緑の募金及び緑と水の森林基金の助成による森林整備等に関する事業を推進します。
(4)温泉の保護と利用
温泉の適正な利用を図るため温泉源の保護と温泉の適正かつ効率的な利用の増進を図るための指導を行います。
また、温泉の公共的利用増進のため、保健、休養等に適した温泉地を国民保養温泉地に指定します。さらに、この中から「ふれあい・やすらぎ温泉地」の選定を行い、自然ふれあい・温泉センターや歩道等各種利用施設の整備を推進します。